平成30年度全国高校総体サッカー大会 埼玉県予選準決勝 昌平 vs 成徳深谷

インターハイ予選・準決勝。大会2連覇中の昌平高校と今季2冠の成徳深谷高校が激突した第1試合は、昌平が前半のうちにMF渡邉建太のゴールで先制すると、後半はMF木下海斗の2試合連続弾で加点して2ー0で勝利。3年連続3回目のインターハイ全国大会出場を決めた。

同じ相手に3度やられるわけにはいかない。新人戦、関東予選ベスト8のリベンジに燃える昌平がリーグ戦を除けば「3度目の正直」で、今季2冠の成徳深谷を討って全国切符を掴んだ。

この試合もまず仕掛けたのは成徳深谷だった。関東予選同様、立ち上がりからパワーを持って押し込むと、武器のセットプレーや波状攻撃からゴールに迫る。前半15分には右サイドのMF佐藤蒼太が中盤で出足鋭くボールをカットすると、二次攻撃からMF竹間世和のクロスにフリーのFW戸澤雄飛が首を振って合わせたが、シュートは惜しくも枠を捉えることができない。

一方、苦しい時間が続いた昌平もここを耐えると、少ないチャンスを決定機に結びつけた。先制点は前半34分。木下のパスを起点にMF原田虹輝が右サイドからアーリークロスを上げると、ニアに走り込んだFW西村悠希が相手守備を引きつけ、空いたファーサイドに入った渡邉が右足ボレーでネットを揺らした。昌平が劣勢の中で先にスコアを動かすことに成功する。

攻めながらも1点が遠い成徳深谷は後半7分、関東本大会でも活躍したFW北原港、FW間中実来を2枚替え。対する昌平も13分にFW森田翔、20分にMF須藤直輝をピッチに送り出す。

互いに攻撃的なカードを切って迎えた終盤。勝負を分ける1点を引き寄せたのは昌平だった。

後半29分、相手の一瞬の隙をついた須藤が前線でボールを奪取。準々決勝では逆転の口火を切った1年生10番はそのままドリブルで1人、2人と抜いて中央に侵入すると、須藤のラストパスに右サイドでフリーとなった木下が右足で抑えの効いたシュートを突き刺して加点した。

成徳深谷も間中の突破やDF成澤圭梧のセットプレーで最後までゴールに迫ったが、主将のDF関根浩平を中心に最後まで戦う姿勢を見せた昌平が2ー0で勝利し、決勝に駒を進めた。

今年は新人戦で延長の末に1ー2、関東大会では0ー2といずれも準々決勝で成徳深谷に敗戦。悔しい想いを味わった。「そういう意味では3回同じ相手に負けたくないという強い気持ちはもちろんあったと思う。今日のゲームは勝負に徹する状況でいきたいと思っていた」と藤島崇之監督。ショートパスだけにこだわらず、時にはロングボールを入れて効果的に攻めた。

けが人の復帰も心強い。「渋屋(航平)、木下の存在は大きかった」と藤島監督はいう。「相手の4番(成澤)の子もすごいヘディングは強かったですけど、(渋屋も)五分五分の状況でもやれていたし、彼の持っているポテンシャルの部分もある。やっぱり決め切ったというのも木下の最終的な技術の部分が出た結果だと思う」と語り、チーム内の活性化にも期待した。

木下は準々決勝の浦和東戦に続く2試連発大会3得点目。昨年よりもシュートの意識が向上したという今年は得点という結果に繋がっていることもあり本人としても好感触を覚えている。「やっぱり点に関わることが自分の仕事だと思っているので、点を取ったり、アシストしたり、そういう結果にこだわりたいです」と、決勝、そしてその先の全国に向けて意気込んだ。

公式戦初得点は全国導く先制点 抜擢に答えた渡邉「ゴールの瞬間は頭が真っ白」

「本当にいま一番良かった選手」と藤島監督。今大会初出場の2年生MFが起用に応えた。

練習での好調ぶりが評価され、5月6日のS1リーグ第3節、大宮南高校戦以来の公式戦出場を果たした渡邉。序盤は緊張からミスも見られたが、すぐに立て直すと前半34分に大仕事。原田のクロスにファーサイドに走り込むと、右足でしっかりとミートしてネットを揺らした。

「ボールが来た瞬間、頭が真っ白になって、無意識みたいになって。次にみんなが駆け寄ってきて。再開の笛がなって、やっと「あっ決めたんだ」っていう実感が湧いてきました」。ちなみに渡邉にとってこれが公式戦初弾。初ゴールはチームを全国に導く大きな一発となった。

武器はドリブル突破。中でも小学校の時から練習しているシザースは大好きなプレーで、「またぎ」は渡邉の真骨頂だ。後半はそのシザースからの相手を交わす場面もあっただけに、早々に両足を攣らせての途中交代は「ちょっと悔しいです」。それでも約1ヶ月半ぶりとなる公式戦で得点に、ドリブルにアピールして、激戦区の2列目のレギュラー争いに一石を投じた。

千葉県出身の越境組でいまも片道2時間の通学経路を通って通学している。「最初は千葉県の高校と迷ったんですけど、やっぱり全国に出たかったので昌平に決めました」。自らの一振りでその選択が正しかったことを証明した生粋のドリブラーは「優勝して第1代表でいけるように頑張りたい。決勝でもまたいでいきます」と、今年初タイトルに向けて意欲を燃やした。

石黒登(取材・文)

試合結果

昌平 2-0 成徳深谷

1(前半)0
1(後半)0