平成30年度全国高校総体サッカー大会 埼玉県予選準決勝 浦和南 vs 立教新座

インターハイ予選準決勝。もうひとつの全国行きをかけた浦和南高校と立教新座高校の一戦は、前半早々にセットプレーから先制した浦和南がその後の立教新座の猛攻を最後まで凌ぎ切って1ー0で勝利。2009年大会以来9年ぶり12回目のインターハイ全国大会出場を決めた。


1点を争う形となった準決勝第2戦。少ない好機を決め切った浦和南が雨中の決戦を制した。

ゲームが動いたのは前半14分。ゴールほぼ正面の位置でフリーキックを獲得すると、「キックはチームの中で一番という自信がある」と語るMF田代幹人が右足で狙いすましたキックはキーパーの手を弾いてクロスバーの下を直撃。ライン上で弾んだボールに「信じて走り込んだ」というMF狩集洸哉が相手ディフェンスよりも、一拍速く詰めて浦和南が先制に成功した。

しかしその後は立教新座が攻め込む展開。前半18分には渡邉佑の突破からMF新谷圭太のシュートがクロスバーを直撃。26分にはDF竹内滉貴のクロスにMF小岩宥紀が足を伸ばすも惜しくも枠外に外れる。2分後には負傷から復帰したディフェンスリーダーの清水昭希がコーナーキックに頭でピタリと合わせたが、コースが甘く、これもネットを揺らすには至らない。

なんとか1点を返したい立教新座は後半から打開力のあるMF稲垣輝一を投入。左サイドに入った稲垣は迫力のある突破で攻撃を牽引する。さらに交代カードを切りながら前線のリフレッシュを図ると、25分過ぎからは長身のDF南口周矢を本職のフォワードに移し勝負に出た。

しかし今大会2失点と粘り強い守備を見せる浦和南も最終ラインを中心にこれに対抗。ハイボールにはDF相馬海音がことごとく競り勝ち、ドリブル突破の場面では中盤底に入った鹿又耕作がしっかりと身体を当てて自由にはさせない。押し込まれる中で決定機は与えなかった。

終盤のセットプレーではGK清水翼も出て得点を狙いにいった立教新座だが、最後まで赤の牙城を崩すことはできず。序盤の1点を守り抜いた浦和南が1ー0で競り勝ち、全国を決めた。

苦しみながらの9年ぶりの全国切符。試合を終えて野崎正治監督は「内容はちょっといかんですね。気持ちが引いていた」と振り返ったが、同時に「拮抗したゲームでそれを勝ちきるっていうのはやっぱり選手を褒めてあげたいですね」と、この日ばかりは選手たちを称えた。

赤き血のイレブンが9年ぶりの全国へ 野崎監督「浦和南は公立の雄じゃなきゃいけない」

「浦和南は強くなきゃいけない。公立の雄じゃなきゃいけない」。強い想いを抱いて母校・浦和南に帰ってきた野崎監督が、赴任6年目で母校を実に9年ぶりとなる全国大会に導いた。

平成元年から24年間務めた浦和東高校では5度の選手権、7度のインターハイを経験した指揮官が母校に帰還したのが2013年。1969年には史上初の高校3冠を達成している伝統校も、前年に高校総体に出場していたものの、近年は全国の舞台に立つ機会も少なくなっていた。

「母校に帰ってきてプレッシャーはありましたよね。今年で6年目になりますが、どうやって勝たせようかということばかり考えていた。厚い壁に跳ね返されてその度に試行錯誤しながらやってきた」。決勝に進出した2016年の選手権予選では正智深谷高校を相手に終了間際に同点としたものの、PK戦の末に敗戦。あと一歩のところで全国を逃し、悔しい想いを味わった。

そういった上で掴んだ9年ぶりの全国切符。試合後、応援席から「野崎正治」コールが起こると「やっぱり可愛いですね、子供たちは」「普段は行かないんだけど。ひとつの区切りがついたのでちょっと久しぶりに行かせてもらいました」。応援席に歩み寄って手を上げて応えた。

「自分の方が準備ができていた」 ワンチャンスに詰めた狩集が決勝弾

決勝弾にして先制弾は前半14分。ほぼ正面でフリーキックを獲得すると「キックがあるから試合に出ているようなもので、チームで一番という自信がある。逆にキックで結果を残せなかったら意味がないくらいの気持ちでやっている」と絶大な自信を持つ田代がボールをセット。

「壁が高かったので越えるだけじゃ入らないと思った。壁の上から巻いて落とすようなイメージで」蹴られたボールはそのままゴールインしてもおかしくない軌道を描きながらキーパーの手をかすめてクロスバーの下を叩いてライン上でバウンド。これに詰めたのが9番の狩集だ。

「自分の方が準備できていた。ボールが来てからじゃなくて、予測できていたから相手よりも一歩早く準備ができて先に触れたんだと思います」。相手ディフェンスよりも一瞬早く反応すると最後は右足で詰めて、ネットを揺らした。その後、浦和南は相手の猛攻を受けながらも、しっかりと耐えて1ー0で粘り勝ち。今大会初得点はそのまま全国を決めた一発となった。

比企郡吉見町の吉見中学校出身。「野崎先生の名前は有名で自分も知っていた。高校は公立で強くて全国を狙える場所でやりたいと思って、浦和南しかない」と入学を決断。片道2時間弱と決して近くはない中を通学しながら技術を磨き、自らのゴールで全国への道を切り開いた。

「ずっと目指してきたところ」。全国の舞台でも『カリ・ゴール』でチームを勝利に導く。

相馬が対空で抜群の存在感 ヘッドはJ2水戸DFボニフェイス直伝

時間が経つにつれてハイボールが増える中で、対空で抜群の存在感を放ったのが相馬だ。

「思い切って先に飛んで上で勝とうと考えた」という後半は空中戦でほとんど負け知らず。「一本のロングボールで来たら自分のところで跳ね返せるという自信が今日はあった。自分のタイミングで飛べば勝てると思っていた」と語ったように最後まで制空権は与えなかった。

「177cmくらい」という身長以上の存在感を可能にするのが絶妙なタイミングで飛躍するジャンプ。普段は空中にぶら下げたボールを揺らしながらタイミングよく飛ぶ練習をしているというが、今春にはとある選手と出会い、『ヘディングのコツ』を伝授してもらったそうだ。

その選手というのがJ2水戸のDFンドカ・ボニフェイス。野崎監督の浦和東時代の教え子であるJリーガーからは「相手を気にせずに自分のタイミングで飛ぶことがヘディングで勝てるコツだからと教わった。それからは練習でも常に自分で思っているよりも早いタイミングで飛ぶように意識してやっています」。この日の試合ではその技術を大いに発揮して相手を零封した。

とはいえ「自分たちが相手に決定機を与えてしまった場面もあった。まだまだ」と反省も口に。「全国では埼玉よりも確実にフォワードが競り合いに強かったり、足が速かったりする。全国までに改善して、上では絶対に負けないという気持ちでやります」と気を引き締めた。

石黒登(取材・文)

試合結果

浦和南 1-0 立教新座

1(前半)0
0(後半)0