ユース、トップ、世代別代表…、大宮U18DF市原吏音はタフな1年を乗り越えて大きく成長。将来的なA代表入りを見据えて「いつまでも上を見て努力していきたい」

「(終了の笛を聞いた瞬間)良かったなと、ホッとしたという気持ちがあった。9年間アカデミーでやってきて、その集大成が今日で、悔いなく終われたかなと思います」。大宮アルディージャU18の頼れる主将、DF市原吏音(3年)はアカデミーでのラストゲームをそう振り返った。

最終節を9位で迎えた大宮U18は、引き分け以上で地力でのプレミアリーグ残留を決められる状況。ホームNACK5スタジアム大宮で行われた昌平高戦には実に2,300人の観客が集まった。

「埼玉県で一番強い高校とNACK5でできるっていう、その最高のシチュエーションだったので、自分的には本当に気持ちが入っていましたし、なんとしても後輩にプレミアでやってほしい気持ちがあったので、プレミアに残留させるっていうのが自分の最後の仕事かなと思っていた」

「相手も対策をしてきて、自分の方よりも逆サイドからっていうのは多分あったと思う」。試合を通じて昌平が右サイドのアタックを多用してきたこともありボールに触る機会はそれほど多くはなかったが、その中でもマッチアップした際には武器とする対人の部分や1対1で抜かせずさすがのパフォーマンス。また、状況を打開する精度の高いキックで攻撃の起点にもなった。

一方で「後半はやっぱり足が止まって、相手に押し込まれた時にいかに自分がボールを持った時に局面を変えられるとか、そういうのは意識していたんですけど、後半はなかなか決定づけるパスとかも出せなかった」と反省。「そういうところはやっぱり前半同様に、後半もずっと90分間、高いインテンシティでやれるようにしていかなきゃなと思っています」とした。

今季はユース、U-18、19の日本代表での活動に加え、7月12日に行われた天皇杯3回戦・セレッソ大阪戦でトップデビューを果たすと、その後のリーグ戦は全試合にスタメンでフル出場するなど獅子奮迅のシーズン。本人も「忙しかったです」と言って苦笑いを浮かべるが、同時に「なかなか普通の高校生じゃ経験できないような経験をさせていただいて本当に幸せだった」。そのなかでも「何よりも大きな怪我をしなかったのが自分的には一番の成長できた要因」と話す。

「間違いなくユースでやるよりもJ2で出ていた方がいろいろな経験はできますし、相手のレベルも高くて、プレースピードも速くて、言ったら全部自分の経験とか成長に繋がる場面だった。その中でも降格がかかっている、そういうプレッシャーの中で試合をやらなければいけない、あのプレッシャーの中でプレーするっていうのは自分的にはいままでにない経験だった。そういう極限の状態でも自分のプレーを出さなきゃいけないっていういのはこの先の自分にも必要だと思う」。また、ユースではなかなか体験できない大観衆の前でのプレーも大きな経験となった。

夏以降はトップで活動する中でともに戦ってきたユースに対する想いもあった。奇しくもユースも残留を争う状況。「自分的には両方出られると最高だったんですけど…」というのが本音だ。

そういった中でトップでのシーズンを終えたプレミアEAST第21節の前橋育英高戦からユースに復帰。「練習でもっと強度の高い中でやったり、パススピードとか、そういうのはユースに入ったからユースに合わせるんじゃなくて、やっぱりトップの基準を自分的には求めてやっていこうと思っていたので、そういうところはこの1週間みんなに求めてやっていました」。トップでの経験を還元するのと同時に「チームを勝たせること」を意識し出場した前橋育英戦、昌平戦とチームの連勝に貢献。後輩たちにプレミアの舞台を残し、ユースでの最後のゲームを終えた。

「高1の頃から高校生のうちにプロデビューしたいとは言っていたんですけど、ポジションも後ろで、なかなかトップにも絡めなかった。このままユースかなと思っていた矢先に天皇杯に出られて、そこからJリーグにも出られて、自分的にはこれ以上ない3年間だったと思います」

ジュニアからジュニアユース、ユースと9年間を過ごしたアカデミーを飛び立ち、これからはプロの世界へ。「まずはやっぱり日本代表になりたい」と言うように将来的なA代表入りが目標だ。

「すぐにはなれないと思うので、少しずつ段階を経て、試合に出られない期間、時期とかも絶対にあると思いますし、怪我して苦しむ時期もこの先絶対にあると思うんですけど、そこでいかに折れないか、素直にサッカーを楽しんで、向上心を持ってやれるかが、やっぱりプロになる上では大事だと思うので、いつまでも上を見て、日本代表になるまで努力していきたいと思います」

ユースに年代別代表、そしてトップ、タフな1年を経て大きく成長した才能は、これからも努力をし続けて、太陽に向かって咲くひまわりのように上を見据えながら目標に向かって成長する。

石黒登(取材・文)