川口市立の「攻撃のスイッチ」FW飴谷万葉、7年ぶり関東出場を決めたチームの心臓
「間違いないですね。あそこのところに収まるとうちはスイッチが入る、あそこに収まったらみんな上がれというサインなので、そこが大きい」と金沢学監督も絶大な信頼を置く。7大会ぶりのベスト4入りを果たした川口市立。そのチームで中核を担うのがFW飴谷万葉(3年)だ。
本人は「自分は視野が狭い。周りのみんながカバーしてくれて本当に助かっています」と話すが、指揮官も「あの子の足元に入った瞬間に周りが安心して上がれる」という文字通りチームの中心。身体は小さいが、手を使ってうまくボールを囲みこみながら味方の上がりを引き出せる。加えて「自分的には股を抜いて中に入っていくのが好き」と話すように個でも打開できる選手だ。
そんな飴谷だが、競技レベルでのサッカーは高校から。中学時代はソフトボール部だった。「もともと小学校の時からサッカー自体は好きで昼休みに男子に交じってやったりしていたんです。でも自分は少年団とかに入っていなかったですし、中学校に上がる時にサッカー部に入りたいけどなと思ったんですけど、なんかやっぱりびびって入れなくて」。それでも「高校はやりたいなと思って、中学の時から決めていました」。高校は女子サッカー部のある川口市立を選択した。
中学校時代もフットサルはやっていたが、「最初は広いし、ボールも違うし戸惑いました。最近になってやっと収めるとかは身についてきたかなとは思うんですけど、最初始めた時とかはもうサッカーボールを収めるのが難しすぎて、めちゃめちゃ困っていましたね」と明かす。それでも自分の選んだサッカーで成長。成長は自信に、自信は態度にも繋がり、「最高学年になってからは結構指示とかコミュニケーションを仲間ととって、サッカーができるようになったことは成長したんじゃないかなと思います」とメンタル面でチームを牽引できるようになったという。
飴谷の師匠的な存在が大宮アルディージャアカデミーでプレーした松浦圭汰さん。現在は飴谷が通うフットサル場で働いているという松浦さんは一番身近で参考にしているプレーヤーで「小さい頃から面倒を見てもらっていて感謝しています」と話す。今大会前には裏へ抜け出すプレーの練習を手伝ってもらったといい、3回戦の正智深谷戦では同様の形からゴールも記録した。
「出ているメンバー、出ていないメンバー関係なく、全員で関東に行けたらいいなと思います」と話していた準々決勝では総体予選4強の浦和西を下し、7大会ぶりの関東大会切符を掴んだ。川口女子、川口総合時代も含め、勝てば初の2位以内が決まる準決勝の相手は総体予選優勝の本庄第一だが、前線でボールをキープし、味方を鼓舞しながら、勝負を決めるゴールを目指す。
石黒登(取材・文)