堅守速攻からポゼッションへ、新たなステージに進む南稜女子が初の選手権制覇に挑む!

昨年の総体で初の県大会Vを果たした南稜が、新たなスタイルをひっさげて選手権制覇に臨む。

南稜は今年度から10年以上にわたりチームを率いた桑山秀家先生に代わり小椋大監督体制に。浦和南高で主将を務め、社会人でも東京ユナイテッドで当時プレーイングマネージャーだった岩政大樹氏(鹿島アントラーズ監督)の指導も受けた指揮官のもと、新たなスタートを切った。

今年は昨年の優勝に刺激を受け、クラブチームなどから有望な1年生たちも多く進学。黎明期から長年、南稜女子を見守ってきた桑山先生も「これだけ経験者が揃うのは初めて」と話す。そしてこのタイミングでチームは大きな転換点を迎える。それがポゼッションスタイルへの転向だ。

これまでは経験者が少ない中で勝負にこだわり、あえてボールを握らないサッカーをしてきた。実際に今年3月に行われためぬまカップでは4位と躍進しているが、守備を重視したサッカーを展開。大阪桐蔭や福井工大といった強豪相手にも失点せず、大会を通して無失点で終えた。

しかし、より上の景色を目指すために攻撃的なスタイルへの変更を決断。当然、これまでと180度違うサッカーに、始めは選手たちからも戸惑いの声もあったという。連覇を狙った学校総体は準々決勝で浦和西に20本以上のシュートを浴びせながらカウンター2発に沈んだ(1-2●)。

それでも怪我で離脱していたMF小澤楓咲(2年)が復帰したあたりからチームは好転する。県リーグでは浦和西に5-0とリベンジするなど開幕から無失点の6連勝を記録し、関東リーグ昇格へ向けて首位を快走中だ。小椋監督も「やっと僕のやりたいボールを動かして支配するというサッカーが浸透してきて、県内ではどことやってもボールを持てるようになってきた」と語る。

選手たちも手応えを感じており、部長のFW岡山菜月(3年)は「(学総後は)攻撃の最後の部分に関して重点を置いてやってきた。これまで桑山先生のもとでやってきた走りのベースに、逆にいままでとはちょっと違う感じで戦術的なサッカーを知って、より楽しくなった」と話す。

加えて、ポゼッションサッカーに移行したことで、副産物も。サイドハーフの大場永遠(3年)は昨年までのサッカーではなかなかボールが入らず、あまり目立つ存在ではなかったというが、ボールを持つようになり、ドリブルの自由を与えると「もう本当にお化けレベル」(監督)というスピードの才が開花。大学関係者からも高評価を受けるなど、個の能力も生きるようになった。

また、この夏は3年間で初めて合宿を実施。中核を担う小澤は「走りきって球際を行くのが南稜の代名詞。合宿ではアップダウンの多いところで走り込みを行って、そのうえでいかにサッカーをうまく出来るか、試合終盤になってもパスミスをしない、正確性を積み上げてきた」と明かす。

チームの伝統である強烈な一体感や球際、走りのベースに、ポゼッションという新たな要素を加えて次のステージへ。選手権では学総準優勝の花咲徳栄や3位の昌平などと同じ右側の山に入ったが、岡山は「難しい部分はあると思うんですけど、逆に楽しむというのを大事にして、チャレンジャー精神で絶対に県大会優勝して、関東も勝って、全国に行きたい」と意気込みを語った。