病気で離脱したFWの想いも背負って臨むも…。西武台は16本のシュートを浴びせるもネットを揺らせず初戦敗退

シュート本数は相手の3倍以上の「16」。しかし、そのシュートが最後までネットを揺らすことはなかった。西武台は全国高校サッカー選手権1回戦で三重と対戦し、0-1で敗れた。

前半9分、カウンターからからクロスを頭で決められ先制を許したが、流れは悪くなかった。

しっかりとビルドアップしながら押し込み、FW松原海斗(3年)が切れ味鋭い突破でサイドを抉り、MF丸山実紀(3年)も巧みなドリブルワークでゴールエリアに侵入。29分にはDF長谷川智紀(2年)のフィードから抜け出したFW市川遥人(3年)のシュートがサイドネットを強襲した。しかし、三重の身体を張った守備を前に得点を奪うことが出来ない。

後半はさらに攻勢を強め、11分にはアーリークロスを松原がスルーし、ファーサイドのMF和田力也(2年)が1対1を迎えたが、相手GKが攻守。また「もっとサイドを取るぞ」(原田主将)とHTに話していたというチームは20分過ぎにサイドから2つの好機を迎える。

後半23分、途中出場のMF福沢安莉(3年)が収め、右SBの原田蓮斗(3年)がそれを追い越す形でスイッチ。タッチライン際まで抉ってマイナスのクロスを送ると、丸山のシュートはわずかにゴール右に。27分には再び原田のクロスから、福沢が決定的な右足のシュートを放っていったが、ここも相手ゴールキーパーのファインセーブに阻まれてしまう。

終盤もMF岡田瑞生(3年)のクロスから丸山のシュートが惜しくも左に。最後はDF安木颯汰(3年)の直接FKがわずかに落ちきらずゴール上に外れ、終了のホイッスルが鳴った。

守屋保監督は「悔しいですね」と肩を落とし、「勝たせてあげられなかったという自分の心の腹立たしさと、埼玉という県を背負った責任、そういったものもすべて考えた時にもっと出来ることが新たに見えてしまった。セカンドボールの処理の仕方、シュートの精度、それともう一つ工夫するというところの部分で足りなさを痛感した」と唇を噛んだ。

選手権を前にチームはFW細田優陽(3年)が肺気胸を患い、戦線を離脱するという不運もあった。主将の原田は「いままで助けられてきたし、俺たちもあいつとやりたかったので、1試合でも多く勝ち上がって復帰出来る可能性を広げていこうと話をしていた」と明かす。この日は細田の背番号9のユニフォームをベンチにかけ、細田の想いととともに戦った。

そういった中で「申し訳ないというのが一番大きい」と原田。「応援してくれた方だったり、家族、準備してくれたスタッフに結果でお返しをしたかったですけど、何も出来なかった。厳しさを教えられました」。今年は11年ぶりとなった選手権を含む県内3冠や関東本大会制覇、そしてプリンス関東1部昇格と歴史を作ってきたが、「今日のために3年間やってきたと言っても過言じゃないぐらいかけてきたので、もう悔しさしか出てこないです」。

選手権の夢は後輩たちへー。原田は「ベンチにいる1年生もそうだし、メンバーに入っていない1年生もそうなんですけど、ここまで来た景色は忘れてほしくない」とし、「俺たちがベースなるのかもしれないので、当たり前のように超えてほしいです」と想いを託した。

石黒登(取材・文)

試合結果

西武台 0-1 三重
0(前半)1
0(後半)0