全国高等学校総合体育大会 埼玉県予選準決勝 浦和西 vs 西武台

全国高校総体・埼玉県予選準決勝。もうひとつのカードは浦和西高校と西武台高校が対戦した。試合は西武台が優勢に進める中で、浦和西が後半4分に獲得したPKによる1点を守りきり1ー0で勝利。1987年の北海道大会以来、30年ぶりの全国高校総体出場を決めた。

終盤にはDF野口智弘がプレー続行不可に。GK斉藤大伽も両足をつりながらプレーするなど満身創痍の状態だったが、最後まで戦う気持ちを貫き通した浦和西が全国の扉をこじ開けた。

前半から圧倒的に攻めたのは西武台。MF三田光希を起点に正智深谷高校との準々決勝でも鋭いドリブルを見せていたMF板橋涼太などが次々に攻撃を仕掛けていく。浦和西は防戦一方の展開となったが、GK斉藤のビッグセーブや野口、福世航大を中心とする4枚のディフェンス陣が身体を張ってブロック。また相手のミスにも助けられ、0ー0で試合を折り返す。

すると後半早々の決定機を得点につなげた。4分、右サイドからボールを受けたFW高橋岬生はターンから「自分の持ち味」だと話すキックフェイントでかわすと、これにたまらず相手が足を出してPKを獲得。ゆったりと助走を取ると「あえて左を見てキーパーに(左を)狙うと思わせて逆に蹴りました」。キーパーとの駆け引きを制してゴール右下隅に流し込んだ。

ゴール後はピッチ脇の応援団に駆け寄って祝福を受けた背番号18。新人戦では10番を背負いチームのベスト8に貢献したエースだが、3月の最初に左右の太ももに痛みを感じ、ついに耐えかねなくなった4月のはじめに病院でMRIを撮った結果、両足の疲労骨折が発覚した。当然同月の関東大会予選には出場できず。昌平高校との準決勝も応援団席から見守った。

「応援団側で見ているのがすごい悔しくて、絶対にここで全国にいこうと思っていました」。復帰したのは総体予選の1週間前。まだ完治はしていないが、自ら出場をアピールし「彼もこの大会にかける想いはすごい」と市原雄心監督の心を動かして今回のメンバー入り。その期待に見事応え「使ってくれた監督に感謝したいです」と高橋。また同時に「怪我の期間中ずっと両親が僕の面倒というか、怪我のことを気にしてくれていた。心配をかけてきたのでここで結果を出せて良かったです」と、大きなサポートをくれたという両親への感謝も忘れなかった。

鍵と話していた開始10分で先制した浦和西。だがその後は同点弾を狙う西武台の猛攻を受ける。後半18分にはDF清野昴大の右クロスに板橋がヘッド。右ポストに直撃したボールはハンドの判定となったが、このプレーでGK斉藤が両足をつらせてしまう。それでも前半から数々のピンチをしのいできた浦和西の守護神は30分に途中出場のMF宇津木陸が飛び込んできたプレーも身体を張ってセーブ。その2分後には山口の決定機を右足1本で止めてみせる。

またディフェンス陣も両サイドから攻め立ててくる西武台に対し堅守を維持。「前半から走らされていたので厳しかったんですけど、最後の最後で身体を張って1点もやらせないぞという気持ちでディフェンスしました」と福世。

最終盤にはセンターバックの1角、野口が足をつらせて続行不可能になるなど、体力はすでに限界を超えていたが、「絶対に全国にいくという気持ちが俺らにはあった。仲間を信じて、自分を信じて粘り強くやりました」(DF佐藤功大)という浦和西が合計12本のシュートを浴びながら0点に抑えて本大会への切符をつかんだ。

昭和62年以来30年ぶりの全国の舞台へ。「10年以内に絶対に全国に出ようと。最初にそういう話をしたのを思い出しました」という市原監督が母校に赴任したのはちょうど10年前のこと。「外から見ていて『何やってんだ西高!』というのはあって、自分に話が来た時はなんとか変えてやろうという気持ちはすごくあったので。これで古豪復活の狼煙をあげることができたのかなと。終了の笛がなった瞬間にそんなことを思いましたね」と感慨深げだった。

石黒登(取材・文)

試合結果

浦和西 1-0 西武台

0(前半)0
1(後半)0