恐れずに繋いで夏の覇者・正智深谷を撃破!“0対100”の声を覆し、越谷西が2度目の8強入り
選手権埼玉県大会3回戦。越谷西はインハイ覇者の正智深谷を逆転で下しベスト8進出を決めた。
越谷西の8強進出は今回で2回目となる。前回は2012年で、その年の夏のインターハイ全国大会で準優勝を果たした武南を下して決めた。そして今回の相手も今年度のインターハイに出場した正智深谷。運命といっては大げさかもしれないが、そういうベースはあったのかもしれない。
試合前には「インターハイに出ているチームとやるのは同じシチュエーション。ここで一個歴史を作ろうよと話をした」と廣瀬一成監督。そして選手も「世間では0対100で正智が行くだろうとなっていたところで、俺たちも絶対に負けないぞと」(熊澤青波主将)と強い気持ちで臨んだ。
しかし、早々にスコアを動かしたのは正智深谷だった。前半開始わずか40秒、MF大野涼真(3年)が敵陣右サイドで奪ってクロスを送ると、ボールを受けたMF平田脩真(3年)は打ち切ることが出来なかったが、ルーズボールを10番MF増子康介(3年)が押し込んで先制した。
越谷西は痛い失点。さらにこのプレーでGK生明憲悟(3年)が手を負傷し、交代を余儀なくされる。考えうる限り最悪と言ってもいいようなスタートを切ると、その後もクロスやセットプレーなどで押し込まれたが、相手の圧に慣れ始めた前半中盤過ぎからはスタイルを発揮していく。
そこで腰を低くせず、常に「触れる距離感」で守備をすると、奪ったボールを「この子たちが持っている最大の長所」と指揮官もいうショートパスで相手のプレッシャーをいなし、MF長谷部碧(3年)、MF熊澤青波(3年)が前線へ配球。熊澤は中盤の競り合いでも強さを見せた。
ハーフタイムには「ボールを動かすところはしっかり動かせていたのでそこは自信を持とう。あとはシンプルに相手コートでサッカーをやる」というところを確認。風上に立った勝負の後半は長谷部を起点に前に出る時間を増やす。逆に正智深谷はシュート本数、決定機の数で上回りながらも勝負を決める2点目が奪えず。「風の中難しいアーリーが多くて、合わせるのが難しいので、もう少し真ん中からミドルとか、シュートを打てるような形を作れと言ったんだけど、バタついて、向こうもだんだん勢いに乗ってきて、リズムを作られてしまった」(小島時和監督)。
すると後半26分に越谷西がついに同点に追いつく。「今日は勝っても負けてもセットプレーがポイントになると思っていた」(廣瀬監督)。フリーキックから長谷部が正確なボールを入れると、FW南雲皓太(3年)が折り返し、途中出場のFW長岡優雅(3年)がヘディングで決めた。
試合はそのままアディショナルタイムへ。そしてラストワンプレーで再びドラマが待っていた。
後半43分、越谷西はコーナーキックを獲得。キッカーの長谷部は「当たればゴールみたいなイメージ」でライナー性のボールを選択するとニアで相手ディフェンスが弾いたボールがイレギュラーなバウンドをしてゴールに吸い込まれ、選手たちの歓喜とともに終了のホイッスル。“0対100”のゲームを見事覆し、越谷西がインハイ覇者を下して2度目のベスト4入りを果たした。
王者・正智深谷のプレッシャーをいなし続けたワンタッチパスはこだわりを持ってやってきたプレー。クリアしてもおかしくないような場面でもしっかりとパスを繋いで剥がし、前へ向かう姿勢を見せ続けていた。その中心にいる長谷川は「S2リーグでもしっかりとワンタッチで前線で回したりしていて、それが正智深谷相手にできたのは自信になる」と言葉に力を込めた。
最高成績と並び、さらにもうひとつ上の景色へー。
熊澤主将は「自分たちが目指してきたのはベスト8よりもっと上なので、これからが本当に戦いが始まるなと思っている。(ベスト8の歴史を)俺らが変えます! 歴史を作りたいと思います!」と意気込みを語った。
石黒登(取材・文)
試合結果
正智深谷 1-2 越谷西
1(前半)0
0(後半)2