流れを引き寄せたHTのメンタリティの変化。東野が逆転で2回戦へ! 有力FW及川朝日は「1本でもいいから前向きで持たせてくれ」に応え、決勝弾
選手権埼玉県大会1回戦。東野と本庄第一の一戦は、延長戦の末に東野が逆転勝ちを収めた。
序盤から互いにロングボールを蹴りあう展開となった中で、まず先にスコアを動かしたのは本庄第一だった。前半16分、左SBの山田啓太(3年)がゴールエリア手前から右足を振りぬくと、目の覚めるようなスーパーミドルがクロスバー下をかすめながらネットに突き刺さった。
一方、東野は「正直入りが悪くて、相手のフィジカルの強さとかに面を食らっているところがあった」(須釜洋勝監督)というようにイーブンの展開の中で決定機まで持っていくことが出来ずにいた。この日は快速FW宇山秀哉(3年)が受験で不在。夏は宇山の強烈なスピードを生かした攻撃を見せていたが、逆にそのイメージに引っ張られすぎてしまい、視野が狭まっていた。佐々木拓也(3年)主将らDF陣の奮闘により1失点で抑えたが、前半は相手のペースだった。
それでもハーフタイムがひとつの転換点となる。一番大きかったのが「メンタリティ」の変化だ。
「この子たちは中学時代試合に出ていた子はほとんどいない。そんな中でやっぱりマイナスの心というのがあるところに自信を持たせていく。出来るところをしっかりはっきりさせて言葉で伝えてあげるというのがやっぱり大切。そこがあって、ちょっとずつ解れたかなと思います」。
前半も足元で繋ぐ形が何度かあったが、その後が続かなかった。「ビビっているんだろう」という指揮官の問いに「ビビっていました」と選手たち。後半はそこを自信を持ってやっていくことを確認。もともと今年は足元で繋いでいくのが得意な選手たちが多い代。「自信」を取り戻すと、後半はボールを収めてから連続したショートパスで繋いで崩していくようなシーンが増えた。
またこの代で須釜監督が言い続けてきたのが「バランス」だ。「このキーワードがとても大事で、ディフェンスにおいても、オフェンスにおいても「バランス」と僕が声をかけるだけで、周りを見て、整えないといけないなというところを習慣化させることが出来た。後半はバランスも整って、取った瞬間に適正なポジションにいるから、つけて、打開出来るという感じはしていました」。
徐々に攻めの圧力を強めると、そこで得たセットプレーからFW及川朝日(3年)やMF紺野隼斗(3年)が決定機を連発する。すると後半8分にコーナーキックからMF花里陽紀(3年)がエリア内で倒されてPKを獲得。これを及川が冷静に流し込んで1-1の同点に追いついた。
試合はそのまま延長戦に突入。延長前半はスコアが動かなかった中で、ゲームを決めたのはやはりエースだった。延長後半3分、エリア前でボールを収めた及川はドリブルでサイドに流れながらディフェンスを外し、左足を一閃。これがゴールに突き刺さり、勝負を決める決勝点となった。
及川は組み立てにも加われ、強烈なシュートあり、FKからのゴールもある今大会の有力FW。この試合はなかなか足元で収まらず、ドリブルに関しても常に2人ないし3人と複数枚につかれるなど、やりづらそうにしていたのは否めない。それでも延長前半と後半の間には「1本でもいいから前向きで持たせてくれ」と周りに要求。そしてその1本をしっかりと決めきってみせたストライカーに指揮官も「やっぱりあいつはやってくれる男でした」と賛辞を惜しまなかった。
初の16強を狙う2回戦は浦和学院との一戦に。「しっかりバランスを整えながら自分で出来るところに自信を持ってやっていく。出来ないところはちゃんとみんなで話し合って補い合う。そこはさらけ出してやるべき。あとはサッカーを最後楽しめるか。本当に僕らは常にチャレンジャーなので」(監督)。すでにリーグ戦は2試合を残し、来季の西部支部1部昇格が決定。残すこの舞台に向け、選手たちは全力で臨む。この日の後半のように自信を持って挑み、勝利を目指す。
石黒登(取材・文)
試合結果
本庄第一 1-2 東野
1(前半)0
0(後半)1
1(延前)0
0(延後)1