「今年度のベストゲーム」。前回準Vの武蔵越生が市立浦和のパスワークをシャットアップ。後半はFW伊藤稜賀が1G1A

第100回大会をかけた戦いが幕を開けた。全国高校サッカー選手権埼玉県大会は9日に1回戦22試合が行われ、昨年大会準優勝の武蔵越生は2-0で市立浦和を退け、2回戦進出を決めた。

初戦からいきなりの注目カードとなった。武蔵越生は昨年、堅守速攻を武器に初の決勝進出を果たした。代が移り、多くの選手が変わったが、当時1年生守護神として注目を集めたGK関根拓郎(現2年)を中心に今年も粘り強さが光る。対する市立浦和は大野恭平監督体制3年目となりスタイルが浸透。S1リーグでは正智深谷、武南に土をつけるなど、実力を持ったチームだ。

そういった中でペースを握ったのは武蔵越生だった。「やっぱり浦和市立は楔を当てて、繋いでくるチームなので、そこの出所をまず潰してやっていければと思っていた」(西澤浩一総監督)。勤勉な守備でパスワークを封じると、ロングボールにはトップからCBにコンバートされた長身のDF波田優斗(3年)、DF須田櫂舟(2年)が抜群の強さを見せてチャンスを与えなかった。

後半はタメを作ることが出来るMF友田佑真(3年)とスピードのあるMF安西歩夢(2年)を投入し、攻撃のギアを一段階アップ。サイド攻撃やロングスローから相手を押し込んでいく。

すると後半14分、FW伊藤稜賀(3年)が右サイドを思い切って仕掛けてクロスを送り、これに安西が合わせてついに先制に成功した。さらに33分には今度は左サイドでボールを持った伊藤は切り返しから右足を一閃。低く、鋭く打ち出されたシュートがゴールネットに吸い込まれた。

1ゴール、1アシストの伊藤は現在首位を走るS2Bリーグでもゴールを積み重ねるチームの得点源。裏に抜け出すスピードとパンチ力のあるシュートを武器とする。2点目は西澤総監督、井上精二監督ともに「あそこで仕掛けるのが伊藤」と、まさに『らしさ』が出たゴールだった。

粘り強い守備で相手のパスワークを封じ、後半の勝負所では守備から攻撃の的確な切り替えで武器のサイドから取り切る。狙い通りの展開に西澤総監督も「リーグ戦とかも含めて一番良い試合だった。今日は今年度のベストゲームかなと思います」と手応え。今年からバトンを引き継いだ井上監督も「リーグ戦からやってきたプランというのは、強みを持って戦えた」とした。

一方、市立浦和はFW林隆希(2年)、MF久保建都(3年)と前半早々に複数人のけが人が出てしまったのが大きな痛手に。攻撃センスの高いMF小松悠太(3年)やMF栗田幹大(3年)主将を中心に後半の頭は押し返す場面もあったが、ゴールネットを揺らすことが出来なかった。

石黒登(取材・文)

試合結果

武蔵越生 2-0 市立浦和
0(前半)0
2(後半)0