1回戦負けバネに「浦東らしさ」を追求。力強さつけた浦和東が関東覇者・西武台を撃破!

あの敗戦がチームを戦う集団に変えた。令和3年度全国高校総体(インターハイ)県予選は19日に準々決勝が行われ、浦和東が関東覇者・西武台を2-1の逆転で下して準決勝に進出した。

関東大会を制し、今予選も優勝候補の一角と見られた西武台を破ってのベスト4。浦和東・平尾信之監督は「相当厳しいゲームになることは予想していた中でやっぱり関東予選に負けて、そこから自分たちを見直して、浦和東らしく、心も身体もきっちり鍛えて強くなろうということで1ヶ月取り組んできて、関東の時とは別チームのような頑張りや粘り強さというのがやっと出てきた。選手は本当に逞しく、一丸となってやってくれた」と力強く成長した選手たちを称えた。

序盤から押し込んだのは西武台だったが、浦和東は4-4-2でしっかりとブロックを作り対応。西武台の強力サイドについては「うちのサイドバックも去年からのレギュラーなのでそこはもう1対1で絶対に負けない、自信を持ってやれと言い聞かせていた」と監督も信頼する左の林田明日翔、右の福村海凪の両SBがキーとなるサイドの1対1の攻防で自由にはさせなかった。

一方、攻め込みながらもなかなか点数に繋げることができなかった西武台だが、前半終了前の38分にセットプレーからスコアを動かす。MF岡田瑞生の左コーナーキックがファーサイドに抜けたところを10番FW市川遥人がしっかりとゴールに運んでネットを揺らし、前半を終えた。

ビハインドを背負った浦和東だが、「もちろんあそこで失点しないのがベストでしたけど、この子たちなら2点までは取れるかなと思っていたので2失点までだったら同点にできるぞという声かけはずっとしていた」(平尾監督)。例年守備から組織していく浦和東だが、今年の代は前のタレントも多く、攻撃から構築していった代。前半中盤以降はショートカウンターからゴール前まで行く場面も作っており、主将のMF紀武留も「攻撃では取り返せると思っていた」という。

後半、浦和東はシステムを4-2-3-1に変更。前半2トップで相手の2CBに当てていたFW豊田春斗、FW前原健人を縦関係にし、トップ下の気味に入った前原を1枚余らせる状況を創出。そうすると徐々にセカンドボールを奪えるようになり、攻撃もスムーズに進むようになった。

すると後半11分に同点ゴールが生まれる。エリア左でボールを持った豊田が中央に横パスを入れると前原が相手DFと入れ替わり、GKとの1対1を落ち着いて右足で流し込んだ。これで勢いに乗ると引水開けの23分、「相手のDFは前にすごく強い。ひとりが絶対エリア内に走ってギャップを作れと言っていた」(監督)。左利きのドリブラー、MF三浦祥が対角に侵入してギャップを作りだし、マイナスのクロスからこぼれ球を前原が再び決めてついに逆転に成功する。

終盤は西武台が猛攻を仕掛けたが、浦和東は渡邊礼有、増井康介のCBコンビを中心に粘り強く身体を張ってゴールを死守。そのまま逃げ切った浦和東が関東覇者を下し、4強入りを決めた。

チームが変わる契機になったのは関東予選1回戦・三郷北戦の敗戦だ。浦和東は前半終了前に前原のゴールで先制したが、終盤に2点を奪われて敗れた。「チームのためにひとりひとりが声を出したり、走ったり、ベンチの人はサポートしたりだとかというところは、まだまだその辺は関東の時は希薄だったというか、この子たちは能力はあったんですけど、まだチームになりきれていなかった。よく“浦東らしく”と言うんですけど、浦和東らしくなかった」と平尾監督はいう。

チームは直後にミーティングを行った中で翌日からは練習を再開。「日頃の練習からいろいろな浦東で言われるベース、走ることとか、ヘディングとか、そういうところをもっと引き締めてやってきた」と紀。いままで以上にチーム、そして各々に対する基準を厳しくしつつ、気持ちが落ちそうな時には「三郷北戦の敗戦を忘れたのか」と鼓舞しながらトレーニングを行ってきた。そういった中でこの試合では多くの時間で相手に押し込まれながらもそれぞれがチームのために走り、声をかけ、球際でファイトする伝統の「浦和東らしさ」が復活。「やっぱり関東のあの敗戦を受けてそういうのが備わってきて、やっと見ている人が浦和東の試合を見て、いいなと思ってもらえるようなチームになってきたんじゃないかなと思います」と指揮官も手応えを語る。

準決勝からはスタジアムとなり全部員の観戦が可能に。「1、2年生が公式戦を見て育つというのも大事な要素。いま部員が223人いるんですけど、それが全員スタジアムに行けるというのが一番大きい」と平尾監督。紀主将は「自分たちが1年生の時に先輩たちが関東大会に出て、やっぱりスタジアムで見て、勇気づけられたので絶対にスタジアムまで行って1、2年生にその姿を見せてあげたいなと思った」と明かし、「次もしっかりベースから入って、みんなで声をかけて、ベンチ外のみんなも含めて全員で勝ちたいと思います」と“浦和東らしさ”で決勝進出を狙う。

石黒登(取材・文)

試合結果

浦和東 2-1 西武台
0(前半)1
2(後半)0