第60回 関東高校サッカー 昌平 vs 三浦学苑

関東高等学校サッカー大会最終日。NACK5スタジアム大宮では決勝戦が行われ、埼玉県代表の昌平高校は神奈川県代表の三浦学苑高校と対戦。スコアレスで迎えた後半にMF髙見勇太、MF原田虹輝が得点した昌平が2ー0で勝利し、関東大会初制覇を果たした。

「3連戦とハードなスケジュールの中で、結果にこだわってやってきて、しっかりと結果を出せたことは収穫。休ませながらというスタンスもあるが、今大会では少し頑張らせてある意味チャレンジさせた」と藤島崇之監督。

久しぶりのスタメン出場となった右サイドバックの塩野碧斗、準決勝で途中出場したFW飯村真大以外は前日と同じ顔ぶれがピッチに並んだ。

昌平はいつも通りディフェンスラインから丁寧にボールをつなぎながら展開。原田、古川勇輝の2年生ボランチコンビがそこに攻撃のスイッチをプラスしていく。序盤のせめぎ合いを制すと、「結構前が空いていたのでドリブルでスピードに乗っていける部分があった」と原田。前半17分には中盤でボールを奪うとドリブルからシュート。これは相手GKの好守に阻まれたが、23分には原田のボールカットから髙見のシュートがサイドネットを強襲する。

前半33分には古川、FW佐相壱明、MF渋屋航平と細かくつないで、最後は古川がシュートを狙っていくなど、昌平らしいショートパスで崩していく場面も。

石井優輝、関根浩平を中心としたディフェンス陣も前半から集中力が高く、相手にチャンスらしいチャンスを作らせない。前半は0ー0で終えたが、「良い形はできていたので、特に焦りはなかった」(石井)。

先制点は後半18分。中盤でボールを奪取すると、佐相のポストプレーから右サイドの髙見へ。「佐相が収められるというのはもう確信していた。あそこで2人引きつけられてフリーで受けられたので、自分はトラップを前に出してシュートを打つだけでした」。前半終了時に「自分のやるべきことは何かと考えた」という3年生MFがこれを右足で確実に仕留めた。

その後も攻守の切り替え早く、奪われたボールに対しても、連続してプレスをかけることで三浦学苑に攻める隙を与えなかった昌平。後半28分には追加点が生まれた。左サイドバックの堀江貴大のクロスを髙見がヘディングで折り返すと、佐相がディフェンダーを引き連れて作ったスペースに原田がフリーで走り込んでゴール左隅に突き刺した。「自分たちも中だけでは限界がある。外からも攻めようということで最近練習していた」(石井)成果が実った。

終盤にはピンチも迎えたが、守護神の緑川光希が腕を伸ばしてセーブ。このまま2ー0で試合を制した昌平高校が、初の関東制覇という最高の結果で3日間の熱戦を締めくくった。

「昨年は勝っても3位という状況でBグループの決勝を戦った。今年は勝てば1位ということでみんなもすごい気合いが入っていた。その中でしっかり勝てたというのはインハイにも良い形でつながったのかなと思います」と石井。ハードな日程の中で1回戦日本体育大学柏高校ではいきなり延長戦を戦い、体力的にも難しい部分もある中で最後まで走りきった。

2回戦以降は失点「0」。「攻撃的に見えるかもしれないが、ディフェンスも意識的にやっている」(藤島監督)。関東の強豪校に対しても、チームが念頭に置く「0ベース」を見事に完遂した。昨年からレギュラーとして戦ってきた石井、関根、そして緑川のセンターラインは熟練の域。緑川は「後ろから見ていて安心感を感じる。2人に対しての信頼はあります」とし、今大会を通じて関東、全国でも十分にやっていけるという自信を深めたという。

一方で各々がそれぞれの課題を再確認した。今大会では献身性が光った佐相は「張るだけだと大きい選手につぶされてしまう。張ると見せかけて相手の力を利用して裏に抜けたり、個でも打開してひとりでも点を取れる選手になりたいです」。無得点には終わったが、県外強豪校のレベルを肌で感じたことでエースが一皮むけるきっかけになるかもしれない。

今年の目標は県内5冠(新人戦、関東、総体、選手権、リーグ)と全国制覇。先輩たちも果たせなかった関東タイトルは獲得した。今度の目標はインターハイでの日本一だ。

石黒登(取材・文)

試合結果

昌平 2-0 三浦学苑

0(前半)0
2(後半)0

大会優秀選手

GK 緑川光希、DF 石井優輝、DF 関根浩平、MF 原田虹輝、MF 古川勇輝、MF 渋屋航平、FW 佐相壱明(昌平)

DF 孫大河、FW 梶谷政仁(正智深谷)

DF 猪俣主真、DF 山田虎ノ介、MF 加藤豪瑠、FW 松尾凌我(三浦学苑)

MF 新谷颯太(日本航空)

DF 高嶋修也(明秀学園日立)

MF 大山玲(宇都宮短期大学附属)

GK 大澤久人、DF 上原希、FW 髙橋尚紀(前橋育英)

GK 成田雄聖(実践学園)