第60回 関東高校サッカー 正智深谷 vs 前橋育英

関東高等学校サッカー大会最終日。NACK5スタジアム大宮では決勝戦に先駆けて3位決定戦が行われ、埼玉県代表の正智深谷高校は群馬県代表の前橋育英高校と対戦。大会3位(Bグループ1位)を狙った正智深谷だったが、PK戦の末に4ー5で力尽き、今大会は4位に終わった。

守備に関しては今大会初の0失点に抑えたものの、攻撃で迫力を見せることができなかった。

序盤から相手のロングボールに対して孫大河、中村友空のセンターバックコンビを中心とした4バックがしっかりと跳ね返していた正智深谷。後方からつないでくる攻撃にも3ラインがうまくスライドして対応するなど前橋育英に決定機を与えない。前半14分には混戦から連続攻撃を受けるもディフェンス陣とGK根岸飛向がゴールにカギをかけてシャットアップした。

しかし攻撃においては「前で収まらずになかなかシュートまではいかなかった」(小島時和監督)。スピードのあるMF西澤悠人、攻守に高い運動量を誇るMF木藤皇成を走らせながら攻めの機会を伺うが、前半はシュート「0」に抑えられ、スコアレスでハーフタイムを迎えた。

後半はこの状況を打破するべく、開始から1回戦1ゴールのFW石橋未宇を投入。9分には2回戦で俊足を生かした高速カウンターからアシストを決めたMFオナイウ情滋、13分には主将で2試合連続ゴール中のFW梶谷政仁、ボランチで精度の高いキックを持つ須々田宗太を同時にピッチに送り込むなど、先制点を奪うべく次々に攻撃のカードを切っていく。

「今日はシュートを何本も打っていこうと話していたが、育英のディフェンスに圧倒されてあまりシュートが打てていなかった」と梶谷。自らのシュート、ゴールでリズムを変えようと試みるが、「グラウンド慣れしていないのもあって、ボールが入り過ぎてしまったりした」というように、なかなかいつものようにゴール前でボールを収めることができない。

また「相手の長いボールに対し、こちらもロングボールで対抗してしまった。ショートパスの課題というのが今日も出てしまった」と小島監督。1回戦、2回戦でも直面した問題だが、それぞれ後半には修正してきた。しかしこの日は交代カードを切った後もなかなか状況は好転せず。

「なるべく低い位置で受けて、ディフェンスラインを押し上げて、もう少し前でつなげるようにしたかったが」(MF谷口瑛也)ボールはボランチを越えて展開されていった。

後半25分あたりからは疲れの影響もあり前橋育英に連続してチャンスを作られる。

35分過ぎには前がかりになったところからピンチを迎えるが、いずれも孫、DF福井康太が戻ってカバー。結局80分を越えても決着はつかずに延長戦に突入。延長前半9分にはロングスローの混戦からオナイウが、延長後半2分には梶谷がドリブルからエリア内に侵入してシュートを放っていくがゴールは生まれず。今大会初のPK戦で4ー5で破れ、正智深谷の関東は幕を閉じた。

「課題もはっきりとしたし、選手たちが一番何をしなければいけないかをわかっていると思う」(小島監督)。そのひとつにはショートパスによる崩しも含まれるだろう。正智深谷のスタイルというと「堅守速攻」があるが、「今年のチームは技術面で昨年や他の年代以上」と梶谷が語るようにスキルも高い。「もっとチームで何がやりたいのかを明確にしないと、選手同士がバラバラになったまま試合が終わってしまう。それではせっかくの技術がもったいないので、そこはメンバーで話し合っていきたい」とキーマンの1人である谷口。2試合連続の無失点でチームを後ろから支えた孫は「攻撃時のミス克服」をテーマに掲げた。

「悔しい想いをして成長する。今年のチームは“準”ばかり。またしっかり反省して、燃えてもらわないと。ここで満足されては困る」と小島監督。この悔しさを総体予選にぶつける。

石黒登(取材・文)

試合結果

正智深谷 0(4PK5)0 前橋育英

0(前半)0
0(後半)0
0(延前)0
0(延後)0
4(PK)5