第99回 全国高校サッカー選手権大会埼玉県大会 準々決勝 細田学園 vs 西武台

選手権埼玉2次予選準々決勝。西武台はPK戦で細田学園を下し、昨年に続き4強を決めた。

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序盤は一進一退の中で細田学園はショートパスを繋ぎながらこの日もFW齋藤真を起点に攻撃を展開。ボールを動かしピッチ幅を使いながらDF三井涼雲の好クロスからチャンスを作る。

それでも徐々にペースを握ったのは西武台だ。引水後から5-4-1に変更。まずは守備の安定を図ると前半32分にはDF栗田海飛のフリーキックから波状攻撃。MF新井歩積、またクロスからMF村田智哉がヘディングで狙っていくが、ここは細田学園GK見目晴彦が立ち塞がった。

後半も西武台が優勢にゲームを展開。新井の仕掛けやFW岡崎大志郎がポイントとなってリズムを作る。後半27分、32分にはサイドからの形から村田が連続してゴールに迫る積極性を見せたが、村田はこの2度のプレーで連続して足を攣らせてしまい無念の交代となってしまった。

0-0で迎えた延長戦も流れは西武台。延長前半5分にはクロスからFW大畑航也が決定機を迎えるが、またしてもGK見目がファインセーブ。延長後半4分にはDF武笠隼季のクロスがそのままゴールへと向かったが、再び細田の守護神が下がりながら掻き出しゴールは許さず。7分にはロングスローのこぼれを主将のDF大川和貴が狙ったが、枠を捉えることができなかった。

勝負の行方は100分を終えてついにPK戦に突入。そのPK戦でもなかなか決着がつかず10本目までもつれ込んだ中で後攻・細田学園のシュートを西武台GK伊佐山縁心が止めて勝負あり。昨年準Vのリベンジを狙う西武台が難しい戦いをものにし、まずは準決勝にコマを進めた。

勝利はしたものの、守屋保監督「守備の面で良い奪い方ができずに、自分たちの良さがでなかった」と守備を課題に挙げた。この日は両チームともに3バックで臨んだ中で対3バックシステムへの経験値不足を露呈。最終局面の守備では決定機は与えなかったものの、「その前で奪った瞬間にある程度の速さとワイドさで勝負したい」という狙っていた攻撃は出せず。また奪いどころを限定できなかったところもあり、無駄な走りも増えてしまったという。次の相手である武蔵越生も3バックを繰るチーム。この日の課題をしっかりと克服し、準決勝の戦いに臨む。

「あれは無理っすわ(笑)」クリス再現ならずも守護神・伊佐山縁心が4強に導くPKストップ

駒場でのPK戦。勝利を決め抱きつく仲間たち。既視感を覚えたのは昨年の総体予選準決勝。西武台は武南とのPK戦をGK高橋クリスの3連続ストップという大活躍により制していた。

大会はインターハイと選手権で違えど、本人にもその意識はあったようだ。「やっぱり意識しちゃうので(笑)。負けたくないなっていう気持ちもありましたし、みんなもクリスを超えられるよみたいに言ってくれたんですけど、やっぱりあれはちょっと無理っすわ(笑)」。

駒場での3連続ストップの再現とはならなかったが、それでもやはり大事な試合でチームを勝利に導いたという1点に関しては前者同様大きな仕事を果たしたことに変わりはない。

緊張のかかるPKではあったが、「自分が止めてヒーローになる」という心境だったという。PK戦は5人目を終えても決着がつかずサドンデスへ。「試合と一緒で先に我慢できなかった方が負けるなと思っていた。そこのところは1回も切らさずに集中できた」と伊佐山。

すると迎えた後攻の10本目。極限まで集中力を高めると、相手の動きを最後まで見切ってから右に飛んでシュートストップし大きく咆哮。これを決められていれば次は11人目で自分がキッカーだったが、それも意識の外に消えてしまうほどゾーンに入り込んでいた。

「長引きすぎて勝ったかわかっていなくて。だけどみんなが走ってきているのを見て「あっ、勝ったんだな」って実感しました」。文字通りヒーローとなり仲間たちからの祝福を浴びた。

ここから先は強豪が待ち受けるベスト4。「やっぱり上に上がっていけば上がっていくほど敵のシュートも増える。そこのところで失点少なくいきたい」と伊佐山は気を引き締める。

昨年は決勝で昌平に0-4と敗れ「いろいろな人にいろいろと言われたり、叩かれたりもした。相当悔しかったので結構練習しました」。この1年は「弱点をなくす」べく、トレーニングに励んだ。そのうちのひとつがハイボールへの対応。「去年まではそんなに得意じゃなかったんですけど、いまは結構勝てているので、そこも自信を持ってやれている」と伊佐山はいう。弱点を克服し、昨年よりさらにレベルアップした守護神は選手権決勝でのリベンジを狙っている。

細田学園のエース齋藤真は悔しさにじませながらも笑顔で次のステージへ

細田学園FW齋藤真は「ただ悔しい。みんな頑張ってくれていたので、あとは自分が決めるというところだった。みんなには感謝しかないです」と悔しさとともに仲間たちへの感謝を語った。

この日も細田のエースストライカーはチームを勝たせるために前線で身体を張ったプレーを披露。なかなかシュートまで持っていける場面は少なかったが、そういった中でも守備に、攻撃の起点に、チームを力強く牽引したが、チーム初のベスト4進出にはあと一歩届かなかった。

今大会は5ゴールと活躍。「今日点を決めて、チームを勝たせていればもっと注目されていたんですけど、やっぱりそういうところでもう一歩足りない自分の悪さというか、もう一歩なんですけど、そのもう一歩がやっぱり詰め切れないという、自分の弱さがありますね」。

それでもいまの齋藤を「弱い」というものはいないだろう。「逃げ癖があった」と一度はその「弱さ」からサッカーを辞めたが、この夏に復帰を決めてからは常にチームの先頭に立って仲間たちを引っ張り、今大会では攻守で大車輪の活躍。後輩たちにもその背中は見せられたはずだ。

競技レベルでのサッカーはこれが最後。「満足感といったら変ですけど、いまは脱力感がすごい。目標の全国には行けなかったんですけど、とにかく今日の試合は頑張ったなと思います。チームのみんなに感謝したいです」と、齋藤はやりきったからこその笑顔を見せた。今後は「人を助ける仕事がしたい」と消防士を志しているということだが、次のステージでの活躍を期待したい。

石黒登(取材・文)

試合結果

細田学園 0(7PK8)0 西武台
0(前半)0
0(後半)0
0(延前)0
0(延後)0
7(PK)8