令和2年度埼玉県高校女子サッカー選手権大会3位決定戦 山村学園 vs 浦和実業
令和2年度埼玉県高校女子サッカー選手権大会・3位決定戦。山村学園と浦和実業の一戦は互いに譲らぬままPK戦を迎えた中で山村学園が勝利し、新人大会に続く3位入りを果たした。
先制したのは浦和実業だった。前半9分、MF野田愛美がグラウンダーのクロスを送るとキーパーが処理ミス、これを見逃さなかったFW近本ひなのが身体ごと押し込んでゲームを動かす。
しかし直後に山村学園も反撃。FW岡田和奏の突破からコーナーキックを獲得すると前半11分、MF伊藤日向子のクロスにDF山口愛奈がダイレクトで決めてすぐさま同点に追いついた。
その後も両チームともにポスト直撃のシュートを放つなど好機を作った中で追加点を奪ったのは浦和実業。前半29分、中盤の競り合いでボールがこぼれると野田は迷わずに右足を振り抜く。無回転気味に蹴られたボールはキーパーの頭上を越してゴールに吸い込まれ再び勝ち越し。
一方、攻撃の機会は相手より多く作りながらも、なかなかゴールに沈めることができずにいた山村学園だったが後半9分、同点弾はまたしてもコーナーキックからだった。今度はニアを狙った伊藤のキックに合わせたのはFW渡邊美桜。2年生FWの3戦連続弾で再びタイに戻す。
終盤は山村学園が攻勢を強める中で決着はつかず勝負の行方はPK戦へ。両チームともに6人目までが成功。運命の7本目、先行の山村学園が決めた中で、後攻・浦和実業のシュートがゴール上に外れて勝負あり。山村学園が逆転で熱戦をものにし、新人戦に続く3位入賞を飾った。
後半に強い山村学園が新人戦に続く3位! 埼玉に新たな風が吹くか
「今日はちょっと内容が良くなかった。特に中盤でプレスがかからなくて、逆に支配されてしまって非常に苦しかった」と山村学園・長崎豊監督。前半はなかなか連携もうまくいかず1点ビハインドで折り返したが、それでもチーム全体として「焦りはなかった」(伊藤)という。
実は今季の山村学園は後半に強い。新人戦では今大会で優勝することになる本庄第一を1-0で、3位決定戦では入間向陽を4-1で下しているが、いずれの得点も後半に記録したもの。
迎えた選手権も3回戦から登場となった中で難敵との連戦となったが、川口市立を2-0(前半0-0、後半2-0)、浦和西を1-0(前半0-0、後半1-0)で下すなど後半に強さを発揮。準々決勝で南稜に1-3で敗れたが、後半に限って言えば1-1の引き分けだった。
そういった中で後半9分、前半にも得点を生み出していた伊藤の正確なコーナーキックから渡邊が同点弾。同25分には準決勝の南稜戦で負傷したキャプテンのDF佐藤七海を投入するなど勝負に出る。80分のうちに仕留めることは出来なかったが、PK戦の末に勝利をものにした。
これで新人戦に続く3位入賞。近年埼玉は花咲徳栄、本庄第一、南稜が上位3つを独占してきたが、新たな風となりそうな気配も漂わせる。6年ぶり2度目の関東秋季大会に向けてキャプテンの佐藤は「自分たちの代では初の関東。しっかり自分たちの実力を発揮して、チーム一丸となって頑張ります」、この日2アシストの伊藤は「関東の強いチームとやれるというのは自分たちのすごく自信にもなる。1試合1試合大事に戦っていきたい」と意気込みを語った。
女王・徳栄を下した浦和実業は3位決定戦で敗れるもチームベストの4位フィニッシュ
敗れはしたが、相手の決定機にはしっかりと身体を当ててブロック、ゴールに向かう姿勢から2得点を奪うなど、浦和実業は堂々とした戦いぶりでチーム最高の4位でフィニッシュした。
今大会では新人戦で0-6と敗れた花咲徳栄と同じベスト8で再戦。公式記録で27対0と多くのシュートを浴びた中で「自分たちの気持ちはどこにも負けないと思っている。徳栄にも絶対に負けないという気持ちで守り抜きました」とMF早川茉優主将。相手のシュートミスもあったが、身体を張った守備で無失点で切り抜けるとPK戦の末にジャイアントキリングを演じた。
今年は「ベスト8」を目標に始動した中、新人戦でチームとして2年ぶりの8強に進出。「じゃあ、次は4に行こう!」と目標を再設定し、どちらの大会でも目標を達成してみせた。
秋季大会は浦和実業として初の関東の舞台。早川は「関東自体が初なのでどんな感じなのかは自分たちもわからないんですけど、自分たちも最後の関東大会に出ることができるし、1、2年生も自分たちの代ではないけれど「先輩たちの代で関東大会に行ったんだから自分たちも行こうよ!」というモチベーションになってくれたらすごく嬉しいなと思います」と語った。
石黒登(取材・文)
試合結果
浦和実業 2(6PK7)2 山村学園
2(前半)1
0(後半)1
6(PK)7