令和元年度 高校サッカー新人大会1回戦 昌平 vs 武南

埼玉県高校サッカー新人大会が8日に開幕。1回戦屈指の好カードとなった昌平と武南の一戦は延長戦までもつれ込んだ中で、延長後半に勝ち越した昌平が3−2で激戦をものにした。

試合は序盤から地力で勝る昌平が支配する形に。この日キャプテンを務めたMF小川優介が中心となって武南を押し込む。今冬の選手権でブレークしたMF篠田大輝が何度もゴールに迫り、コーナーキックからは長身のDF唐木晃が打点の高いヘディングで襲いかかった。だが、前半は10本のシュートを放ちながら相手の粘り強い守備もあり、ネットを揺らすことができなかった。

一方、前半はシュート0本に終わった武南も後半に入り、右サイドから左サイドにポジションチェンジした1年生MF水野将人が積極的なドリブル突破で存在感。チームもその前向きのエネルギーに呼応するかのように、中盤や球際勝負でボールを回収し、攻撃に出る場面も増えた。

そういった中で先にゲームを動かしたのは昌平だった。後半24分、コーナーキックからゴール前で敵味方入り乱れた混戦となったところを交代出場のMF佐藤優哉が決めて均衡を破った。

しかし武南もすぐさま取り返す。後半30分、水野の仕掛けからのスルーパスにMF青木駿祐が裏に抜け出してグラウンダーのクロス。これをFW吉澤和がシュートに行かずに冷静に流すと、走り込んだMF小日向篤がキーパーとの1対1を沈めて同点に。勢いに乗る武南は迎えた延長前半6分、DF中村優斗のアーリークロスがキーパーの後逸を誘いついに試合をひっくり返す。

それでも昌平は最後に王者の意地。延長後半3分にDF田島魁人のクロスから延長前半にピッチに送り出されたFW廣瀬陸がヘディングで決めて再び同点とすると、終盤の7分に小川が身体を揺さぶりながら相手ディフェンスを剥がしてエリア内に侵入する。この仕掛けが相手のファールを誘いPKとなると、唐木が冷静にキーパーの逆をついて決めてこれが決勝点となった。

「うまくいかない時もある中で、実際それをどうやってコントロールしていくかが大切。去年出ていた3人はやっぱりそういう力は持っている状況はあると思いますけど、まだまだそこが足りないというのは正直ある」と藤島崇之監督。この日は日本高校選抜でFW小見洋太、MF須藤直輝、MF柴圭汰と主力3枚を欠く中で、全体を通じてのゲームのコントロールが課題に。それでも「勝ったからこそ次に繋げられる。もちろんそこで良い経験を積めるという状況もあるし、そういう部分ではこれをひとつの経験にしてプラスに変えていければ」とした。

優秀選手逃した悔しさも力に変えて。小川優介「自分を出していかないと意味がない」

この日は須藤や相方の柴がいない中、ゲームコントロールでどうしても小川に頼る部分が多くなる状況もあったが、抜群のキープやスルーパスで魅せると、最大の持ち味を発揮したのは延長後半のPK奪取の場面。上体を揺さぶりながら相手ディフェンスを剥がしてエリア内に侵入すると直後に倒されてPKを奪取。チーム理念である最後の部分での個を発揮して勝利に導いた。

「去年は遠慮というか、そういうのもあって、あまりできていなかったんですけど、自分が最高学年となったこの新チームでやっぱり自分を出していかないともう意味がないと思っていますし、それは練習から意識しています」と小川。そう決心したのにはもうひとつ理由がある。

小川、須藤、小見、柴。今冬の選手権では快進撃を見せた昌平の2年生カルテッドが全国でも注目を集めた。小川も「これだけ相手を見てプレーできる選手もそうはいない」と指揮官がいう相手の逆を取るドリブルやボール奪取力を発揮。初のベスト8入りを果たしたチームで大きな影響力を見せたが、須藤ら同級生たちが優秀選手に選ばれた中に小川の名前はなかった。

「テレビで優秀選手が選ばれる時に見ていて、自分の学年で出ていた4人で自分だけ選ばれなかった悔しさは本当にあった」。手応えも得ていたからこそ、その分大きな失望も味わった。

「でも自分の置かれた状況でやるしかなかったので、もうこういうところから自分を出して、言い方は悪いかもしれないですけど、本当に選んだ人を見返してやるという気持ちで今年はやりたい」と小川。普段はわりと大人しめであまり大きなことは言わないといった印象の彼から、こういった強い言葉が出てくるというのもそれだけの決意の表れということだろう。もとより個としての技術力は昨年の代でも際立っていた。今年はその能力を思う存分発揮していく。

石黒登(取材・文)

試合結果

昌平 3-2 武南

0(前半)0
1(後半)1
0(延前)1
2(延後)0

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