第50回関東中学校サッカー大会決勝 南浦和 vs 原山

第50回関東中学校サッカー大会・決勝は9日、AGFフィールド(東京都調布市)で行われ、さいたま市立原山中学校が4ー0でさいたま市立南浦和中学校を下し、関東初制覇を果たした。

原山中と南浦和中。市大会、県大会、今季埼玉の覇権を争った両雄が関東の頂点で激突した。

立ち上がりは南浦和が勢いを持って攻め込む中、原山はFW平石陸人の切れ味鋭い突破からのトライはキーパーに防がれるも、それによって得たコーナーキックから前半10分、ゴール前で混戦となったところをMF田邉海斗が詰めて先制。さらに21分にはクロスから形を作ると、相手ディフェンスのクリアの溢れをMF岩波凌平が左足ダイレクトでコースに突き刺し加点した。

2点を追う南浦和は後半からFW高橋伸太朗、MF鳥羽瀬琉貴を入れてボールを繋ぐ形にスイッチ。トップの若松優大、吉野龍那とともに前線が流動的に動きながらチャンスをうかがう。

しかし原山は後半11分、岩波の右クロスから平石がヘディングを点で合わせて3点目とすると、24分に平石のカットインからスルーパスに途中出場のMF渡邊陸が走り込んでダメを押した。

原山・山﨑匠監督は「暁星を乗り越えてここで負けちゃ意味がないんだという話が本人たちにもあったし、僕もしたので、そういうところで気持ちが出た試合だったかなと思います」。準決勝では関東の雄・暁星国際中学校(千葉第1代表)を相手に県ではあまり経験のない常に先手を取られる展開もPK戦の末に勝ちきって勢いに乗り、初の関東大会チャンピオンになった。

全国大会でも期待が集まるが、「いろいろな重圧はあると思うが、関東の戦いを見ていく中で、着実にこの子たちは良い経験をさせてもらって強くなっている。1回戦、2回戦と言わず、ベスト8、4、しっかりと上位を狙って戦えるように準備して頑張りたいと思います」。エースの平石も「どこが来ようと関東一のプライドを持って食らいついていく」と躍進を誓った。

岩波がバースデー弾含む1ゴール1アシスト 攻撃性生かす「バイプレーヤー」が関東制覇の一因に

強烈な個が並ぶ原山ではやや地味に映るかもしれない。それでも「彼がいるから平石、松本が生きる」と指揮官はいう。初の関東制覇を引き寄せたのはそんな「縁の下の力持ち」だった。

右サイドMFの岩波凌平は前半21分、クロスのこぼれ球に「相手キーパーの脇が弱かったので、脇を狙ったら入るかなと思いきって打った。いままで点を決められていなくて、その分、シュートに気持ちが乗ったのかなと思います」。抑えの効いた左足ダイレクトシュートをゴール隅に突き刺すと、さらに後半にはクロスで平石のヘディングゴールをお膳立て。市、県大会ではなかなか得点に絡めなかった中で、関東決勝の大舞台で1ゴール、1アシストと躍動した。

ちなみに決勝の行われた9日は岩波の誕生日。「良い誕生日にしようとベンチで話していたみたいですけど、それを実現して、持っている男だなと思いましたね」と指揮官も目を細めた。

また真骨頂の守備でも準決勝の暁星国際戦では相手の有力サイドバックに粘り強く対応しチームの勝利に貢献、決勝でも攻撃力のある南浦和を相手に走って攻撃を遅らせるなど奮闘した。

「(松本)力哉と陸人がうちのストロングポイントなので、そこを活かすためにも自分が攻守で頑張らなくちゃいけないと思っています」と岩波。前述のように決して目立つプレーヤーではないかもしれない。だが、チームのストロングである攻撃を生かしているのはそういった選手の献身があってこそ。全国の舞台でもそんな「バイプレーヤー」の影の活躍に期待したい。

タイトルには一歩届かずも堂々の関東準優勝 成長させてくれた恩師とともに初の全国へ

敗れはしたが、堂々関東大会準優勝。南浦和・神立朋次監督は「本当に快挙」と振り返った。

かつて尾間木を強豪校に育てた名伯楽は南浦和に赴任して4年目。今年の3年生は神立監督を頼って入学した代だが、そのほとんどは小学校年代で県大会すら踏んだことのない選手たちであり、3年前の時点で南浦和がここまでたどり着くと考えていた人は皆無に近かったはずだ。

若松優大もそのひとり。「自分も小学校の時は県大会のレベルすら知らなかった。中学に入って、なんの行き方もわからないけど、先生が教えてくれて、先生に教えてもらったことをやっていったら全国大会に繋がった。本当に神立先生はすごい先生だなと思います」。キャプテンの鈴木流輝も「目標にはしていたけど、まさか僕たちも本当になるとは思っていなかった。こんなに成長できたのは先生のおかげ」と、3年間で大きく成長させてくれた恩師に感謝した。

石黒登(取材・文)

試合結果

さいたま南浦和 0-4 さいたま原山

全国中学校大会に挑む原山中と南浦和中 組み合わせが発表される