第74回国民体育大会関東ブロック大会 埼玉県 vs 神奈川県
第74回国民体育大会関東ブロック大会・代表決定戦2回戦。神奈川県選抜と対戦した埼玉県選抜は終盤にセットプレーから追いついたがPK戦の末に敗れ、全国大会出場とはならなかった。
中央のビルドアップが特徴の相手に対し、埼玉県選抜は「僕たちは守備のクオリティーをぶつけようと思っていた。相手の強みを自分たちの強みで消していく」(田渕常夫監督)戦いを選択。開始からハイプレスを仕掛けていくと、立ち上がりはその形がピタリとはまり、10番のFW高橋悠(浦和レッズユース)が連続して決定機、その後もサイド攻撃やセットプレーで迫る。
しかし前半18分、セットプレーから3試合連続の先制点を喫すると、その後は耐える展開が続いた。後半も押し込まれる展開となる中、残り10分を超えてからはセンターバックの工藤孝太(浦和レッズユース)を前線に残しパワープレーに出るが、得点に繋げることができない。
それでも埼玉県選抜は提示されたアディショナルタイム3分を迎えた後半38分、自陣からのフリーキックにキーパーを残し全員が敵陣へ。相手ディフェンスに弾き返されながらも、粘り強く入れていくと、MF川辺球尊(大宮アルディージャU18)がエリア内に放り込んだこぼれ球をDF大塚天翔(正智深谷高)が右足で突き刺し、土壇場で同点に追いつく脅威の粘りを見せた。
PK戦は2ー4で敗れ、全国大会出場は叶わなかったが、2日前に決勝点を喫したラストプレーで奪い返し成長した姿。田渕監督は「先週の月曜日からトレーニングを始めて、たった1週間でこんなにかわるものかなと。最後はトレセンなのにひとつのチームのようになっていた」。
国体を狙った戦いはここで終わるが、彼らは今後各所属先チームで中心を担っていく選手たちであり、トレセン活動の本望としてはこの経験をいかにこれからの成長に繋げていけるかが大事になる。指揮官は「きっかけは毎日あるもので、それに出会おうとするかどうか。今回僕らは「毎日毎日の生活を変えていってほしい」「日々アップデートしていってほしい」ということを伝えたにすぎない。今後も1分1秒、日々刺激のある生活を過ごしてほしい」とした。
ラストプレーで魂の同点弾も実らず 大塚は「『絶対に』譲れない」選手権で全国目指す
「難しい試合でなんとか1点が欲しかった。それでも押され続けて最後の最後、自分のところに溢れてきて絶対に決めてやるという想いがあったので、自信を持って振り抜きました」。
後半26分にピッチに立ったDF大塚天翔は、ラストプレーとなった38分のフリーキックで、仲間たちが繰り返し中に入れてくれたボールの溢れに右足を振り抜いて魂の同点弾。「第1戦目は最後の最後に自分たちの甘さが出た。逆に今日の試合は甘さを出しちゃいけないというのはチームの中で共通理解できていたので、最後に追いつけたというのは大きいと思います」。
しかしチームはPK戦の末に敗れ全国出場とはならなかった。「3試合をやってきた中で絆も深まってきていたと思うし、本当ならここで終わるチームじゃないなと自分は思っています」。
だからこそ、この経験を次に繋げていかなければという想いも強く持っている。「トレセンリーグも残っているのでそこで全勝して、個人賞もチームがみんな取れるように、さらに成長していきたい」。また、3年ぶりの冬の王座を目指す正智深谷高でも「3年生に恩返しをするためにも、最後に埼玉県で1位を取って全国に出るのが2年生としての役目だと思う。そこは『絶対に』譲れないので、必ず全国大会に出ます」と静かに、だが意志のこもった声で誓った。
石黒登(取材・文)
試合結果
埼玉県 1(2PK4)1 神奈川県
0(前半)1
1(後半)0
2(PK)4