令和元年度学校総合体育大会中学校サッカーの部決勝 さいたま原山 vs さいたま南浦和

令和元年度学校総合体育大会中学校サッカーの部決勝が7月29日に行われ、新人戦覇者・原山中学校が2ー0で南浦和中学校を下し、10年ぶり3度目の優勝、そして埼玉二冠を達成した。

ともに狙いは「後半勝負」。前半は原山が攻め込みながらも、南浦和がゴール前で粘りを見せて終盤に反撃を繰り出すなど0ー0で終了した中、試合が動いたのは後半立ち上がりだった。

原山は後半3分、前半なかなか自由にボールを持たせてもらえなかったFW平石陸人が中盤で前を向いて受けると、重戦車のようなドリブルを開始。ディフェンスに当たって溢れたボールにFW松本力哉が左足を思い切り振り抜く。シュートは一度キーパーに弾かれたが、リフレクションを「常にこぼれ球を狙っている」という“走れるトップ下”市川絋希が詰めて先制した。

さらに原山は後半13分、股抜きでひとり交わした左サイドの松本がファーサイドの平石を狙ったクロスがそのままゴールインし2ー0。その後も空中戦に強い田邉海斗、松戸海生のダブルボランチを中心に相手のロングボールをはじき返し、中盤をコンパクトに保ちながら最後まで優勢にゲームを進めて、市決勝に続き、3度目の対戦となったライバルとの一戦を制した。

一方、南浦和は後半、エースFW若松優大らを投入、3枚替えして勝負に出たが、中盤の主導権争いで後手に回り、若松も最後までゲームに入ることができずにシュート0本に終わった。

新人戦後はマークを受ける中でそれを掻い潜ってのタイトル。今大会に向けては各々が課題意識を持って練習に臨み、チームとして一段も二段もスケールアップした。守備面も取り組んできた部分でDF郭潤昌は「無失点を目標に掲げていたので残念な部分もあった」と蕨第一戦の1失点を悔やんだが、相方の米田新二郎とともに決勝は攻撃力のある南浦和を零封してみせた。

また原山にはどうしても勝ちたい理由が。「前任の北野(邦旭)先生のためにという気持ちが本当に子供たちは強かったし、私も2年間お世話になって恩返ししたい気持ちがあった。最後のミーティングの時も「北野先生を関東、全国に連れて行くんだ!」という話をずっとしていたので」と、チームのモチベーションを明かしてくれたのは今年から指揮を取る山﨑匠監督。

昨年まで7年間にわたり原山を指揮し、このチームの基盤を作った北野前監督はこの日は応援席の一番前に立ち、最後まで声の限りチームを鼓舞。そんな指揮官の前で王者のプレッシャーを跳ね返したイレブンたちは力強く勝ちきって「埼玉二冠」という形で成長した姿を示した。

埼玉の絶対王者として臨む関東大会。平石は「関東、全国というのを目標に3年間やってきた。自分たちと戦って敗れていったチームの分まで関東では暴れたい」と、意気込みを語った。

「市の男」を返上! 松本が準決勝の2ゴールに続き、決勝でも1ゴール含む全2ゴールに関わる活躍

もはや「市の男」という称号は似合わないだろう。準決勝の2ゴールに続き、FW松本力哉が決勝の大舞台でも1ゴールを含む、この日の全2得点に関わる活躍でチームを優勝に導いた。

後半3分、平石の仕掛けからエリア左の角度のないところから左足を一閃。こぼれ球を詰めた市川の先制ゴールをアシストすると、さらに13分には股抜きでひとりを交わし逆サイドネットに綺麗なアーチをかけた。試合後「あれはクロスなんです(苦笑)」と明かしたが、どちらも準備を重ねてきた左足からの形。「練習してきた成果が出たなと。実って嬉しかったです」。

新人戦さいたま市予選では5戦10発と大爆発した松本だが、県大会では2発に止まった。「「市の男」なんてみんなに言われていて。それは自分でも自覚しているところだったので」。チームとしては優勝という大きな結果を手にしたが、個人としては大舞台での課題が残った。

そんな想いも抱えていた中で迎えた今大会。初戦の2回戦・所沢栁瀬戦でハットトリック、3回戦の越谷千間台戦で1ゴールと好発進を切ると、なかなか結果を残すことができなかったトーナメントの上のヤマ(準決勝・新座第二)で勝負を決める2ゴール。決勝でも1ゴールを奪い、5戦7発と完全に大舞台での弱さを払拭した。「県大会で活躍できなかった分、今大会で活躍してやるっていう強い気持ちが誰よりもあったのかなと思います」と松本。チームではやはりエースの平石に注目が集まるが、今大会は“平石だけじゃない!”というのを見せつけた。

「ここでまた「県の男」で終わらないように、関東や全国大会でも活躍できるように、ここから頑張りたいと思います」。上位大会でも活躍し「関東の男」、そして「全国の男」になる。

空中戦で強さを発揮 田邉、松戸のWボランチが中盤の主導権争いで流れ呼び込む

また、この決勝戦でひとつポイントとなったのが田邉海斗、松戸海生のダブルボランチだ。

南浦和は後半エースFWを投入し勝負をかけてきた中で、ともにヘディングを得意とするボランチコンビはロングボールをことごとく跳ね返してチームに勢い。「やっぱり海斗と松戸でしっかりボールを取ってくれる。その2人を信頼できるからちょっと前目にポジションを取ったりできる」(市川)。後ろが必ず返してくれるという信頼は中盤のコンパクトな陣形を生み、後半は前線の平石が孤立せず、前を向いてプレーする回数を増やしたことが勝利に繋がった。

昨冬までグランデFCでプレーしていた松戸は、道祖土小時代から仲が良い田邉の誘いもあり、今年2月に原山に加入。中盤のラストピースを加え、山﨑監督は「ヘディングだったり、ディフェンスの部分で非常にクオリティーが上がった。レベルが2つほど上がったと思います」。今大会はフィジカルを生かして相手のロングボールを弾きまくる田邉に、競り合いながらの精度の高いヘディングと裏に蹴るロングボールを得意とする松戸のコンビで中盤に城壁を築いた。

石黒登(取材・文)

試合結果

さいたま原山 2-0 さいたま南浦和

0(前半)0
2(後半)0

優勝:さいたま市立原山中学校

準優勝:さいたま市立南浦和中学校