令和元年度 全国高校総体 埼玉県予選準々決勝 武南 vs 埼玉栄

インターハイ予選準々決勝。関東予選覇者の武南高校は埼玉栄高校との打ち合いの末に3ー2で勝利し、ベスト4に進んだ。準決勝は2大会連続の決勝をかけ、西武台高校と激突する。

関東予選8強でも相まみえた両雄。先にゲームを動かしたのは武南だった。前半9分、FW大谷涼太がエリア内に送った浮きパスに反応したMF飯塚翼が左足で飛びついてネットを揺らした。

前回は失点後崩れた埼玉栄だったが、この日はここから逆境を跳ね返す力強さを見せる。前半15分、MF小山翔のスルーパスに抜け出したMF梅津遼馬が決めてすぐさま同点に追いついた。

その後も武南が攻勢を仕掛ける中で、埼玉栄は粘り強い守備でエリア内への侵入は許さず。サイドでもしっかりと寄せて相手の武器であるクロスを封殺する。前半35分には梅津の右足のフリーキックが枠を捉えたが、ここは武南GK渡辺海斗がジャンプ一番掻き出して難を逃れた。

武南は1ー1で折り返した後半1分に飯塚がこの日2点目を決めて突き放すが、埼玉栄は8分にFW藤原統真が前線から激しく寄せてボールを奪うとそこからショートカウンター。ドリブルで抉った梅津のクロスに小山がダイレクトボレーを突き刺して再びスコアをタイに戻す。

それでも武南は後半17分に右サイドでフリーキックを獲得すると、「直接入っても、誰かが触ってもいいようなボールを意識した」というDF安野天士の左足のフリーキックがそのままネットイン。3回戦の成徳深谷高校戦でも3得点中2得点を挙げたセットプレーから勝ち越し。

終盤は試合巧者ぶりを見せた武南が3ー2で勝利し、悲願の全国へ向け準決勝に駒を進めた。

近い距離でのプレッシャーに、なかなかそこを剥がして侵入していくことができず、得意のサイドアタックも封じられたが、そういった難局でもしっかり戦い抜いての勝利。内野慎一郎監督は「内容的には散々だった」としながらも「選手たちが粘り強く戦ってくれた」と語った。

その上で「内容もやっぱりしっかりしてこないと勝ちに結び付けられない。崩しにかかっていく、これまで練習でやってきたことを来週はぶつけたい」と、武南らしいパス&ムーブで崩していくことを宣言。西武台戦に向けては「ベンチも含めてみんなで戦う」と総力戦を誓った。

安野がフリーキックから決勝点 成徳深谷戦に続きキックで魅せたゲーム主将

拮抗したゲーム展開でもセットプレーからゴールを取れるのは今年の武南の強みのひとつだ。

安野天士は2ー2で迎えた後半17分に右サイドでフリーキックを得ると、「直接入っても、誰かが触ってもいいようなボールを意識して蹴りました」とゴール前でワンバウンドするような中弾道を選択。するとボールは誰にも触れないまま、直接逆サイドネットに突き刺さった。

直前に同点ゴールを決められており、どちらに転ぶかわからなかった中で貴重な勝ち越し弾。ゴール後には手のひらを下に向けたまま上下させて「落ち着け」のジェスチャー。今季ゲームキャプテンを務める背番号2は「まだまだですけど、やっぱり自分がチームで一番声を出して、チームの引き締め役をやろうと思っているので」というようにしっかりとチームを締めた。

チームとしてインターハイ初戦となった3回戦の成徳深谷戦では、雨でグラウンドコンディションが悪い状況でフリーキックから大谷の先制弾をアシスト。2戦連続で得点に絡み、「キックも自分の特徴のひとつなので、そういうところもいろいろな人に見てもらいたいです」。

セットプレーは武器だが、そこは武南のプレーヤー。「やっぱり流れの中で崩して決めたい気持ちもあります」。目標としてきた全国まであと2つ。「気持ちだけで行ける世界じゃない。技術や決め切るところをしっかりやって、最後にやっぱりメンタル面が問われると思うので、そういうところで引き締めてやりたいと思います」。プレーで、精神面でチームを引っ張る。

石黒登(取材・文)

試合結果

武南 3-2 埼玉栄

2(前半)1
1(後半)1