関東高校サッカー大会埼玉県予選 準決勝 西武台 vs 浦和東

関東高校サッカー大会埼玉県予選。もうひとつの準決勝は昨年大会ベスト4の浦和東高校が新人戦に続き4強に進んだ西武台高校に延長戦の末に2ー1で勝利し、関東大会出場を決めた。

序盤から攻め込んだのは大方の予想通り西武台。前半20分にはエリア内で倒されてPKを獲得したが、FW谷直哉のシュートは今大会1回戦の花咲徳栄高校戦、準決勝の正智深谷高校戦とPKを止めてきたGK川村龍世がしっかりとコースを読みきってセーブし、ゴールは許さない。

その後も西武台が繋ぎながら押し込んだが、浦和東は中盤4枚とディフェンス4枚で自陣のスペースを埋めて自由に攻撃させず。ハイボールにはヘディングに強い安食龍成と、186cmの長身を誇る松本ケンチザンガのCBコンビが身体を張ってはじき返して前半をスコアレスで終える。

西武台は迎えた後半3分に再びPKのチャンスを得たが、またしても立ちはだかったのは川村。右のコースに蹴られたボールを今度は左手ワンハンドで弾き出し、チームの危機を救った。

耐える展開が続いた浦和東だったが後半26分、迎えたワンチャンスを確実に沈めた。MF伊藤大賀のフリーキックをニアでFW吉澤将吾がすらすとボールはファーサイドの松本の足元へ。長身CBは一度切り返してディフェンスを外し、最後は右足で沈めて長かった均衡を破る。

1点を追う立場となった西武台は後半28分に三度PKを迎えたが、谷のシュートはクロスバーを直撃。それでも今大会6得点を決めてきたエースは36分、途中出場のMF関口凱心の右からのクロスを得意のヘディングで流し込んですぐさま同点とする。終盤は一気に勝ち越しを狙う西武台が攻勢を仕掛けたが、浦和東はここを耐え抜いて勝負の行方は延長戦にもつれ込んだ。

PK戦も視野に入ってくる中で、次の1点をもぎ取ったのは浦和東だった。延長前半5分、DF本間大翔のロングスローを延長戦から5バックのストッパーに入った187cmのビッグマン、DF池田晴紀がニアで合わせるとボールは放物線を描きながら逆サイドネットに吸い込まれた。

終盤も西武台の猛攻にあったが、この1点差を粘り強く守りきった浦和東が2014年の神奈川大会(その時はBブロックで優勝)以来、5年ぶり5度目となる関東本戦行きの切符を掴んだ。

どんな場面でも「浦和東らしく」 原点回帰した浦和東が5年ぶりの関東切符獲得!

キーワードは「浦和東らしく」。原点回帰した浦和東が5年ぶりの関東大会行きを決めた。

「関東大会が始まる前にもう1回浦和東らしく、球際の部分や走り負けないところ、ゴール前で絶対にケツを向けずに身体の正面でブロックするところだったり、今大会はもうそこしかやっていない。カッコ悪くても浦和東らしく結果にこだわってやろうとやってきました」と平尾信之監督。新人戦敗退後は原点を見直し、「らしさ」の追求を行ってきた。

迎えた今大会、浦和東は昨年大会Vの成徳深谷、新人戦準優勝の正智深谷といった強豪私学に対し、苦しい戦いを強いられながらも伝統の粘り強さを発揮して準決勝進出。西武台戦も押し込まれる展開の中で同点弾を喫したが、最後までファイトし続けて延長戦の決勝弾に繋げた。

後半26分に先制ゴール、また守備でも最後の部分で相手の攻撃を跳ね返し続けた松本は「 “浦東魂”というのがあるんですけど、技術で崩されても最後ゴール前で守る気持ちとか、そういう浦和東らしさというのをみんな試合中、常に発信することができている」と力強く語った。

チームの危機を救った川村の2本のPKストップ 大会通算7本を阻止したPK職人

1回戦から準決勝の4試合で止めたペナルティーキックは実に「7」。PK職人と呼ばれるキーパーは数いれど、ここまでのストップ率を誇るというのはプロを含めてもそうはいないだろう。

大会直前までサブだった川村だが、1回戦の当日に大抜擢。初戦の花咲徳栄戦からPK戦にもつれ込む展開となった中で2年生GKはいきなり3本をセーブしてチームの勝利に貢献。3回戦の正智深谷戦もPK戦となったが、ここでも2本をストップして4強進出に大きく貢献した。

準決勝の西武台戦では流れの中で3本のPKを迎えたが(うち1本はクロスバー)、1本目は一度左に飛ぶふりをして誘い出すなど相手との駆け引きを制して止めると、2本目は真骨頂の観察眼を生かして相手を観察して左手ワンハンドでセーブし、チームの最大の危機を救った。

「PKは相手の目線、動作の角度とかいろいろ見て、相手が踏み込む瞬間にこっちかなと蹴る方向がわかって飛んでいます」という理論派。ストップのコツを聞くと「相手をしっかりと見て、駆け引きに負けない強い気持ち、あとは楽しむことが大事だと思います」と教えてくれた。

ジュニア年代はフィールドプレーヤーだった中で、中学年代で所属した岩槻FC時代にPKを猛練習。観察眼を磨き、いまではキッカー有利と言われるPKで「ほとんど取れるんじゃないかと思っています」と自信を見せる。彼の活躍なくして5年ぶりの関東大会はなかったはずだ。

石黒登(取材・文)

試合結果

西武台 1(延長)2 浦和東

0(前半)0
1(後半)1
0(延長前半)1
0(延長後半)0