関東高校サッカー大会埼玉県予選 準々決勝 埼玉栄 vs 武南
関東高校サッカー大会埼玉県予選準々決勝。武南高校は新人戦Vの昌平高校を破った埼玉栄高校を3ー0で下し、ベスト4入りを決めた。準決勝は新人戦4強の聖望学園高校と激突する。
開始から押し込んだのは武南だ。MF青野翔太を中心に中盤のトライアングルが適正な距離感を保ちながら連動した動きで敵陣に攻め込んでいく。スコアが動いたのは前半18分。DF安野天士の右コーナーキックをファーサイドでFW大谷涼太がヘディングで叩き込んで先制した。
さらに前半28分には中盤でボールを保持しつつ、アンカーの清水光太の展開から左サイドバックの安野のクロスに逆のサイドバックの相山祐人がヘッドで決めてリードを2点と広げた。
一方、なかなか攻め手を作れない埼玉栄は前半31分、DF中谷隼の攻め上がりからMF大倉良太郎と繋ぎ、MF鈴木湧大が思い切りよく狙っていくも、シュートは枠を捉えることができず。
後半も武南は大谷が前線での精力的な守備から決定機を迎え、ハーフタイム明けからピッチに入ったMF矢地柊斗がキレのあるサイドアタックを見せるなどゲームを支配。22分には大谷が前線で奪ったボールをMF宇田川拓真が敵を引きつけながら中央へ。ボールを受けた青野はキックフェイントから大きく切り返すと、右足で対角のネットに突き刺して試合を決定づけた。
前戦は浦和南に2ー0と勝利したものの、「自分たちが主導権を握るサッカーをどう表現していくかというところで、中盤の距離感が開いてしまい駆け引きの部分で繋がりが持てなかったり、消極的なプレーが多かった」と内野慎一郎監督。先週は1週間精神的な部分や駆け引きの表現について確認、準備を重ねてきた中で、この試合は青野、矢地、宇田川で構成する中盤の三角形が良い距離感を保ちながら、1トップの大谷とともに連動した動きで相手を圧倒した。
大山前監督が見初めた今季注目タレントが2試合連続弾! 青野「自分たちの代で強い武南を復活させたい」
伝統校・武南の7番、MF青野翔太は今季注目タレントのひとりだ。
一昨年の選手権では1年生ながら落ち着いたプレーで「あの25番は誰だ?」と話題になったMFを引き上げたのが、武南を強豪校に育て、3月でコーチングを離れた大山照人・前監督だ。
「9月頃にルーキーリーグを見に行ってこいつはいけるなと思って、明日からトップの練習に来いと。ハートが強いやつで、相手が良いチームになった時も動じないで、前にドリブルで行けるんですよ。こういう性格は大好き。なんでこんな良いのがいるのに知らんぷりしているんだとコーチたちを怒りましたよ」。当時の抜擢について昨年のインタビューで明かしていた。
2年時は本職のボランチに加えて、そのキープ力を買われてFWとしてもプレー。そして最高学年となった今年は4ー1ー4ー1のインサイドハーフの位置で攻撃のタクトを握っている。
この試合でも中盤で細かく繋ぎながら、時にハッとするようなパスを披露。中が警戒されていると見るや、スピードとテクニックを生かした突破で何度もサイドバックを置き去りにした。
後半22分には左で打つと見せかけてキックフェイントで大きく切り返すと、ニアサイドの右ではなく身体を捻りながら逆に難易度の高い左のサイドネットに突き刺して2試合連続ゴール。「ニアじゃなく、ファーに打つことでボールが見えなくてキーパーが動けない。ずっと練習していた形だったので綺麗な形で決まって良かったです」と狙い通りの形に笑みがこぼれた。
1981年度大会での日本一のほか、全国選手権で準優勝1回、4強3回の歴史を持ち、関東大会予選でも最多の16度の優勝を誇る武南だが、近年はタイトルや全国からは遠ざかってきた。
「こんなところで満足していられない。自分たちの代で強い武南を復活させたいです」と青野。御大に見初められ、1年時から白と紫の宿命を背負ってきた男が再び武南を頂点に導く。
石黒登(取材・文)
試合結果
埼玉栄 0-0 武南
0(前半)2
0(後半)1