平成30年度 埼玉県高校サッカー新人大会決勝 正智深谷 vs 昌平

高校サッカー新人大会決勝戦。昌平高校と正智深谷高校。2年前と同一カードとなったファイナルは3ー0で昌平が勝利し、今季初タイトル。新人戦では2年ぶり4度目の頂点に立った。

開始早々に決定機を迎えたのは昌平だった。前半2分にゴール前でフリーキックを迎えると今大会7発のDF大竹琉生が左足で狙ったが、GK上原雄翔が横っ飛びで弾き出して難を逃れる。

立ち上がりにピンチを迎えた正智深谷だったが、中盤のセカンドボール争いを有利に進めつつ、サイドアタックからMF波多野晟愛らがリズムを作っていくと徐々に相手を押し込んでいく。26分には準決勝でも反転からのシュートを決めていたFW金田奎人が鋭く身を翻して振り抜いた左足のシュートが枠を捉えたが、ここはGK牧之瀬皓太が好反応を見せてゴールを死守した。

中盤で主導権を握ることができず苦しんだ昌平だったが、前半29分にワンチャンスを生かす。MF大和海里のスルーパスに抜け出したMF紫藤駿が2戦連続の先制弾を決めて均衡を破った。

1ー0で折り返すと後半3分に追加点。大和がドリブルで仕掛けるとシュートを打つようなモーションから針の穴を通すような絶妙なスルーパス。これに反応したFW小見洋太がファーストトラップでしっかりとボールを止めると、落ち着いて右足で流し込んでリードを広げた。

以降ペースを握った昌平は後半21分、MF鎌田大夢とのパス交換から小見の作ったゴール前のスペースに抜け出したMF須藤直輝が、ドリブルでキーパーを外して最後右足で沈めて3点目。

正智深谷は後半25分に金田がキーパーとの1対1の状況を迎えたが決めきれず。終盤のセットプレーもしっかりと跳ね返した昌平が3ー0で勝利し、今シーズン最初のトロフィを掲げた。

終わってみれば4戦を通じて25得点0失点と完璧なパフォーマンス。藤島崇之監督は守備の部分も評価した上で「やっぱり最終的に個の打開力の中で決め切る力になってくる。リズムが良い時に相手の心をさらに折れる状況というのは点しかない」とし「今年は個人でも打開できる選手がいる。トレーニングレベルを高めていけば質も確実に上がってくると思う」と語った。

昨年は成熟を迎えた「グループ」での崩しで、インターハイでは結果的にその後選手権で優勝する青森山田に唯一土をつけたが、選手権予選では浦和南に敗退し冬の全国出場とはならなかった。今後は全国3位を経験した世代に迫るところまでチームレベルを上げていけるかが鍵になるが、「個」をメインテーマに掲げた今大会の衝撃は今後の躍進を期待させるのに十分だ。

昌平の攻撃引き出す小見洋太が4戦連続のゴール 指揮官も「ツボを心得ている選手」

1トップの小見洋太は決勝戦でも勝負を決める2点目を奪うなど4戦連続のゴールをマーク。また、得点外でも味方の攻撃を引き出し、チームに欠かせないひとりとして優勝に貢献した。

以前取り上げたMF小川優介と同じFC LAVIDA出身の1年生FWは1ー0で迎えた後半3分、大和スルーパスに反応するとファーストトラップでシュートを打てる位置にコントロールし、冷静に右足で決めて相手の追い上げムードを挫く2点目を奪取。さらに33分の3点目の場面では絶妙な動き出しから相手ディフェンスを釣り出して須藤にコースを作り間接アシストした。

「自分は裏で受けて海里くんや須藤のプレーを引き出すイメージでやっている。その後ゴール前に行って最後は自分が決めるのが役割」。ドリブラーが多い今年のチームにあってタイミングの良い抜け出しで2列目以降のプレーを引き出し、一度そちらにディフェンスの目が向けば今度は自らゴールを仕留めるなど補完関係を形成。1年生ながらゴール前での豪胆さもある。

指揮官も「あいつにしかできないうまさがある。ツボを心得ている選手」とそのプレーを評価。昨年はなかなか出番はなかったが、今大会で欠かせない存在であることをアピールした。

参考にしている選手はマンチェスター・シティのアルゼンチン代表FWセルヒオ・アグエロだ。「裏への抜け出しの速さとか、あとはシュートのタイミングだとかはイメージしています」という小見は「今年は自分の中でも勝負の年になる」と、2年生となる今年に気持ちを見せた。

「もうウズウズしてました(笑)」 須藤直輝は準決勝、決勝でゴールをマーク

J選抜との対戦は叶わなかったが、須藤直輝は準決勝、決勝とゴールを決めて優勝に導いた。

先週は日本高校サッカー選抜の埼玉合宿に参加。専修大戦の4本目では持ち味を発揮してアピールした。残念ながら「NEXT GENERATION MATCH」のメンバー入りとはならなかったが、そこはサッカー小僧。「やっぱりサッカーを見ているとやりたくなってきちゃって(笑)」。

準決勝は直前の移動だったこともあり先発を外れたが、ベンチでも「もうウズウズしてました。早く出たい、早く出たいと思って。出た時にはやってやろうと思っていました」。後半途中からピッチに入ると終盤にチーム6点目をマーク。そしてこの日も後半21分に鎌田のスルーパスに抜け出して3点目を奪った。千両役者ぶりに大和も「最後持っていかれた」と笑った。

高校選抜では唯一の1年生として年代のトップを経験。「やっぱり全国の高校の中でトップレベルで、間違いない選手が多くて、意識も高いし、オフ・ザ・ピッチのところも勉強になるところが多かった。本当に自分のサッカー人生の中ですごい良い経験になったかなと思います」。

連覇を目指すデュッセルドルフ国際に出場するドイツ遠征メンバー入りもまだ可能性を残す。「行くのと行かないのでは全然違うと思う。海外のレベルも見てみたいし、肌で感じてみたいというのはあります」と須藤。この優勝を自信に変えて、4月の遠征メンバー入りを狙う。

「俺と山田の2人でチームを引っ張っていく」 波多野晟愛は関東予選に向け強い決意

前半押し込む中で先に失点すると、後半の立ち上がりに追加点を許しペースを逸した。左サイドで攻撃を牽引した波多野晟愛は「10番を任されているので自分がチームを勝たせたいというところはあったんですけど、この大会は思うように点が入らなくて悔しかった」と悔やんだ。

昨年から継続的に試合に関わっているのはDF山田裕翔と波多野の2人。だからこそ今年は自分たちが引っ張っていくという想いは強い。「自分と山田の2人は1年から選手権で浦和西に負けた景色をベンチで見ていたし、去年も昌平にやられた試合にスタメンで出ていたので、やっぱり自分たちの代では絶対に負けたくない」。今年は山田が主将、波多野が副将を務める。

「山田は後ろでチームを引っ張っているので、やっぱり俺が前でチームを助けられるようになりたい。もう俺と山田2人で勝てるようなチームにしたいです」と力強く語った波多野は「次の関東は自分がチームを勝たせられるような選手になります」と関東での雪辱を宣言した。

敗れはしたが手応えもある。「関東は絶対に負けられない。決勝で昌平と当たって倒したいですね」。守備の山田と攻撃の波多野。攻守の2本柱が軸となって、関東で必ずリベンジする。

石黒登(取材・文)

大会結果

正智深谷 0-3 昌平

0(前半)1
0(後半)2