平成30年度 埼玉県高校サッカー新人大会決勝 西武台 vs 聖望学園
新人大会・西部支部予選決勝。西武台高校と聖望学園高校という西部を代表する2校の一戦は西武台が3ー2で勝利し、支部制覇を飾った。両校は9日に開幕する県新人大会に出場する。
西武台は前半13分、MF今田剛の浮きパスに抜け出した右ウイングの村田康平が、キーパーが前に出ているのを見逃さずループシュートで決めて準々決勝・細田学園戦に続く先制ゴール。27分にはロングスローのこぼれを1年生FW大野田駿が強烈ミドルで叩き込んで加点する。
さらにその5分後にはMF池田上総介がセンターサークル付近でボールを受けるとドリブルを開始。そのまま2人を交わすと、右足を振り抜いてゴール右下隅に突き刺して3ー0とした。
一方、前半はボールを保持しながら有効打を打てずにいた聖望学園だが、後半しっかりと立て直すと後半開始30秒足らずでスコアを動かす。キックオフからボールを繋ぐと左サイドバックの鳥海颯の横パスから、FW塚田悠太郎が思い切り右足を振り抜いて追撃の一発を叩き込んだ。
この1点で流れを手繰り寄せると、後半は聖望学園の展開に。前線で強さと積極性を見せる塚田を中心に、途中出場のFW島村颯汰、1トップの森田悠仁が次々と決定機を迎えていく。
すると後半32分、MF石川祐希のスルーパスに抜け出した森田が、飛び出してきたキーパーに対し右足で軽く浮かせてネットに流し込み、ついに1点差と迫る。終盤まで攻める姿勢を見せた聖望学園だが、前半に負った3点は重く、ビハインドを跳ね返すまでは至らなかった。後半は守る展開を強いられながらも、前半のリードで逃げ切った西武台が3ー2で激戦を制した。
「力的には後半の展開が前半からずっと起きて、うちが引き分けに持っていきたいというようなレベルじゃないかと思う。前半は聖望もいろいろなプレッシャーのある中で自分たちを出せないで、逆にうちは昨日悪かった分、今日しっかりとやっていかなきゃいけないっていう、そのボタンのかけ違いの試合だっただけ」と守屋保監督。立ち上がりの展開が勝負をわけた。
久しぶりの支部は思うような試合ばかりではなかったが、それが「ちょうど良かったかなという感じもある」と指揮官はいう。「そんなに簡単じゃないと思えることの方が大事。逆に1ー0(ふじみ野)や2ー0(豊岡)、今日の試合の方が彼らにとって大きな経験と成長に繋がるんじゃないかなと思います」。良い意味で頭を叩かれた経験は今後に繋がっていくはずだ。
昨年は新人戦で準優勝しながらも、関東予選では市立浦和高校に1回戦で敗戦。インターハイ予選では埼玉栄高校に2回戦、選手権予選は16強で成徳深谷高校に敗れた。チームの最初のスタート地点は「全部の大会でしっかりと県ベスト8を勝ち取る」こと。9日の県大会初戦は昨年関東予選で敗れた市立浦和との対戦となったが、ここに勝って勢いに乗りたいところだ。
武器のドリブルから2戦連続の決勝点 戦国武将と同じ名前を持つエース
「やっぱり2点差はひっくり返されると思ったので、自分がもう1点いってやろうという気持ちは強かった」。西武台の10番、池田上総介が決めた3点目が勝負を決する点となった。
2ー0で迎えた前半32分、センターライン近くでボールを持つとドリブルを開始。スピードアップしながらひとり、ふたりと交わすと、ペナルティーボックス前から豪快に右足を振り抜いてゴール右下に突き刺し、準決勝のふじみ野高校戦に続いて2戦連続の決勝弾を奪ってみせた。
ゴールに象徴されるようなドリブルに加え、パスによるゲームメイクも池田の武器。「高い位置で持ったら自分で行こうっていうのはあるんですけど、低い位置だったら周りの選手を使ってパスでゲームを組み立てたりするのが自分の持ち味。ドリブルとパスは半分半分くらい。パスは繋ぐパスから、緩急をつけてのパスだったり。スルーパスはいつも狙っています」。
守屋監督も「技術的なものはある。ハードワーク的な部分や、あれだけのプレーができるのであれば関わり方をもっと増やして欲しいというところで成長してくれれば」と期待を寄せる。
3年生が主力を務めた昨年はメンバー入りならず。それでも今年西武台の10番を継承したエースは「もうやるしかないなという気持ち。今年こそ西武台で全国に行きたい」と意気込んだ。
ちなみに名前の「上総介」は戦国武将・織田信長が家督継承を機に名乗った「上総守信長」(のちに上総介信長に変更)に由来するもの。昨年は4つのコンペティションで3つのチャンピオンが生まれるなど戦国時代とも言われる埼玉高校サッカー界を制し、天下取りとなるか。
敗れるも好タレントを揃える今年の聖望学園 10番・塚田はメンタル向上で爆発の予感
敗れはしたが、今年は聖望学園が面白い存在となるかもしれない。その中心が塚田悠太郎だ。
3点を追う後半、開始早々のワンプレーで流れを変えた。ゴール前で横パスを受けると「よく練習している形。狙い通り」と右足を一閃。豪快な一発で試合の主導権を一気に引き寄せると、その後も左ウイングの位置から積極的なシュートで何本も決定機を作り、攻撃を牽引した。
3点差を跳ね返すことはできなかったが、「そのままずるずるいかないで、後半ああやって返して互角の戦いをできたのはすごく励みになる。また県大会頑張ろうという気持ちになれたのであの後半は良かったなと思います」と、西武台を追い詰めた後半の戦いに好感触を見せた。
昨年は新人戦後にまさかのCチーム行きを命じられた。「いろいろな課題を監督から課されて、それを去年1年間で克服して今年を迎えているので去年よりは自分としては成長しているかなと思います。(一番変わったのは)気持ちの部分」。もとより能力値は高い選手だったが、そこにメンタル的な部分もついてきたことで最終学年の今年は大化けの予感も漂わせる。
塚田を筆頭に他のポジションにも好タレントを揃える今年の聖望学園。「今年はすごく個が強い。あとはチームとして組織力をつけていけば絶対に県のタイトルは狙えると思う」と塚田。自信をつけていけば2016年のインターハイ以来2度目の全国大会も十分に狙えるチームだ。
石黒登(取材・文)