第27回全日本高校女子サッカー選手権大会 準々決勝 花咲徳栄 vs 星槎国際湘南
第27回全日本高校女子サッカー選手権大会・準々決勝。初のメダルを狙った花咲徳栄高校は星槎国際高校湘南(関東第3代表/神奈川)を相手に1ー2で敗れ、ベスト8で大会を終えた。
前半風下を取った花咲徳栄は相手の3トップに対し、DF佐藤美莉、髙木優、石塚七海がマンツーマンで付いてアンカーの位置に大沼歩加が入る形で対応。前線ではFW加藤心和と渋谷桃果がしっかりとボールホルダーに対して寄せて、中盤でも粘り強く守って主導権は渡さない。
前半はボールを持たれながらも決定機は許さず、狙い通りの戦いを展開した花咲徳栄だったが、「マンツーマンした分、後半の最初に足が止まってしまった部分があって、そこを狙われてしまった」(大沼)。後半6分、右サイドを突破されると、ゴール前の混戦を押し込まれて失点。さらに11分には再び右からの攻撃を今度はニアで合わせられて0―2とされてしまう。
流れを変えたい花咲徳栄は直後、1回戦で途中出場からの2ゴールで逆転勝利の立役者となったFW新井優紀、MF渡邉莉沙子、MF大根田奈々を3枚同時投入。さらに後半17分にFW加瀬田彩華、23分にはFW前田悠莉と、連続して攻撃のカードを切っていく。すると26分、渡邉の左コーナーキックを遠いサイドで新井が代名詞のヘディングで叩き込んで1点差に迫った。
新井のゴールで息を吹き返したチームは終盤にかけてセットプレーなどから押し込んだが、しかしあと1点を奪うことはできず。1ー2で敗れ、3度目の選手権はベスト8で幕を閉じた。
夏は0ー6で完敗、秋は全国を決めた後の3位決定戦でぶつかったが終始押し込まれる展開で0ー1で敗れた中で、この試合は終盤に1点を返し最後の最後まで相手を追い詰めた。「いままでの2試合とは違って、そういう部分で本当にチームが成長したなと感じた。悔しいですけど、悔いはないです」と大沼。最後も誰一人泣き崩れることなく、堂々と大会を後にした。
メダルは届かずも初の8強 3年生の活躍に大沼は「キャプテンとして誇りに思う」
チームとして新たな歴史を作る選手権8強。その中で存在感を放ったのが3年生たちだ。
以前キャプテンの大沼はインターハイを終えて「3年生があまり出られていないのは悔しいところもある」と胸の内を話していたが、迎えた今大会は1回戦で新井が途中出場から2ゴールを決めて劇的逆転勝利、2回戦では川口がチームに6戦ぶりの先制点をもたらし、自らも公式戦初のフリーキック弾から3点目をゲットした。この試合も2点先行される苦しい展開の中で新井の得点で1点を返し、終盤に投入された3年生を中心に最後まで諦めない姿勢を見せた。
「出発前に3年生はあまり出られていないけど、出たら3年生の底力を見せようよと言っていて最後3年生が底力を見せてくれた。本当にキャプテンとして誇りに思いました」と大沼。
末貴光監督も「ここまでは褒めずに厳しい言葉ばかり言ってきたんですけど、ここへきて本当に3年生が一番大事なところで活躍できたというのはチームにとって大きなことだった。改めて本当に3年生に感謝したい」とチームを牽引した最上級生たちに対し感謝の言葉を贈った。
3年間の成長示す大会3ゴール ピッチ内外でチーム牽引した副将・新井
敗れはしたものの、この日も花咲徳栄の10番は2点を追う後半途中からピッチに立つと23分、コーナーキックを代名詞のヘディングで力強くゴールに叩き込んでチームを勇気付けた。
今大会は全国初弾からの3得点と活躍した新井だが、「自分は3年間を振り返っても正直試合に出ている時間はそんなに多くない。先発で出た試合なんて数えるくらいでほとんど後半からの途中出場が多かった」。自分のプレーがうまくいかず、試合中に涙を流したこともあった。
それでも今年は3学年併せて43名と大所帯となったチームで副キャプテンに指名されると「いままでみたいな自分勝手のプレーをしていたら絶対にダメ。自分のことだけじゃなくて、みんなのことを考えてやらなきゃ」と、おとなしい選手が多いという3年生の中で声を出してキャプテンの大沼とともにチームをまとめあげ、ピッチ内外で先頭に立ってチームを引っ張った。
卒業後は県内の大学でサッカーを続け、4年後のプロ入りを目指す。高校サッカーで悔しさも喜びも味わい、精神的に大きく成長した点取り屋の次なるフィールドでの活躍に期待したい。
先輩の背中から感じた「強さ」 渡邉「もっとプレーでチームを引っ張る存在に」
今大会は3試合ともに後半途中からの出場だった渡邉は、1回戦の鳴門渦潮戦で正確なクロスから決勝ゴールを演出、この日の星槎国際湘南戦でもコーナーキックから追撃弾をアシストしたが、「まだまだ自分のポジションとして、もっとゴールを脅かすプレーも必要だし、もっとチャンスを作っていかないといけない」と、点に直結するプレーが少なかったと反省した。
そんな中でポジションこそ違うが、同じく途中出場から3得点を決めた先輩の新井から学ぶことは多かったという。「自分も途中から出場して流れを掴む難しさは知っている。その中でしっかり流れを変えて、点を取れる先輩。自分もその強さを身につけられるようにしたい」。
今年は県でゴールを重ねながらも、関東、全国と上級大会になるにつれて自分の持ち味を出すことができなかった。「もっとどんな舞台や相手でも臆せずに自分のプレーができる選手になりたいですし、もっとプレーでチームを引っ張る存在になりたい」と渡邉。最上級生となる今年、ゴール前でさらに危険な香りを放つアタッカーへと成長して再びこの舞台に帰ってくる。
選手コメント
FW加瀬田彩華「来年またここに戻ってきて欲しい」
夏に怪我して復帰できるかわからなかったけど、県大会や関東大会でみんなが頑張ってくれたおかげでここまで回復してまた戦えるようになりました。1、2年生には今日のことをこれで終わらせるんじゃなくて、来年またここに戻ってきてほしいです。
FW前田悠莉
「自分の輝きを止めないように」
みんながここまで連れてきてくれたから、最後に試合に出られてすごく幸せでした。試合に出られることが当たり前じゃないってわかったから、苦しい想いやプレーする難しさも知ったけど、今日メンバー交代の時に名前を読んでもらえた時に無駄じゃなかったなと思った。今日のことは絶対に一生忘れられない。進路はサッカーを続けないと決めたけど、1、2年生に伝えたいことはもっとじっくり考えて、自分の輝きを止めないように、続けられる限りは続けた方が良いと思うし、やめて得する人なんて絶対にいないと思う。最後だからっていう気持ちでサッカーをやるんじゃなくて、自分がこの全国大会を大学に活かせるようにって思えるくらい前向きで、自分の身になるように全国大会を来年は過ごして欲しいです。
MF川口亜海
「後悔しないように1日1日の練習を大切にして欲しい」
今日の試合もシュートを打てたのにトラップミスしてチャンスを無駄にしてしまったり、トラップやシュート、キックでミスをして後悔を自分はしているので、みんなには1日1日の練習をキックやトラップ、ヘディングシュート、すべて無駄にしないように、この舞台で後悔しないように、1日1日の練習を本当に大切にして欲しい。これからも星槎は倒さなきゃいけない相手だし、日本一を取るためにも壁となってくると思う。まず関東で優勝して日本一になれるように、感謝の気持ちを忘れずに、1、2年生には頑張って欲しいと思います。
石黒登(取材・文)
試合結果
花咲徳栄 1-2 星槎国際湘南
0(前半)0
1(後半)2