第97回全国高等学校サッカー選手権大会 埼玉県予選会決勝トーナメント準々決勝 浦和南 vs 武南
全国高校サッカー選手権・埼玉県予選準々決勝。浦和南高校と武南高校の埼玉伝統校対決は、早々の1点を守りきった浦和南が1ー0で勝利し、2年ぶりのベスト4進出を果たした。
選手権予選では実に18年ぶりの対戦となった両校の一戦は開始早々に動いた。前半10分、DF草野皓の左足の正確なクロスからディフェンスの裏に抜け出したMF大坂悠力がドンピシャのヘディングを合わせて浦和南が先制する。大坂は初戦となった3回戦に続き2戦連続ゴール。
一方、早々に失点した武南も前半15分、DF井上竜太のアーリークロスをMF永野駿が競ると、そのこぼれ球にMF宮下瑛が左足を振り抜くも、シュートは惜しくも枠の右側に外れた。
その後も武南は1トップの小林明日斗を起点にスピードのあるサイドを使って攻撃を展開していくと終盤に決定機。前半37分、開始から高い位置を取っていた右サイドバックの平野猛からMF渡辺瑠太、小林と狭いエリアで細かく繋いで、渡辺が右足アウトで決定的なラストパス。これに永野が抜け出したが、GK正野友稀も前に出てコースを切っており、シュートは惜しくもサイドネットの外側。中盤以降は武南が主導権を握る中で浦和南の1点リードで折り返した。
1点を追う武南は後半さらにボール支配を高めながら前半同様に渡辺、宮下の両サイドの仕掛けから崩しの形を狙うが、浦和南も4バックでしっかりと守って最後の部分ではやらせず。
浦和南は逆にカウンターから後半22分、ゴールキックのセカンドを大坂がアイディア溢れる浮きパス。途中出場のMF半田太我が抜け出したが、シュートは大きくバーを越えてしまう。
攻める武南に、耐える浦和南。後半26分には宮下のコーナーキックに永野のヘディングは枠を捉えていたが、ライン上で大坂が必死のクリアを見せてゴールを死守。その2分後には平野が中に入れると小林がディフェンスに寄せられながらも胸トラップから強引に右足で狙っていくも、シュートはクロスバーの上を越えてしまう。さらに小林は33分にDF安野天士のライナー性のクロスに走り込んでダイレクトで合わせたが、このプレーもゴールを割るには至らない。
なんとか一矢報いたい武南は後半アディショナルタイムにMF塩崎正巳がエリア内に叩くと、タイミング良く裏に抜け出したMFラビーニ瑠栞が絶妙なポストプレーで落とし、小林が左足ボレーで狙ったが、シュートはディフェンスに当たってしまい最後のアタックも実らず。武南の猛攻を最後まで0で凌いだ浦和南が2戦連続の1ー0ゲームを制し、準決勝行きを決めた。
「寄せる」「止める」「抜かれない」を徹底した浦和南が武南を零封
「勝ちから逆算するとこういう戦い方しかできない」とした野崎正治監督だが、「選手たちはよくも守ってくれたと思う。0で抑えたことを褒めてやりたい」と選手の頑張りを評価した。
やはり警戒していたのは相手の連動とサイド攻撃の部分。「1タッチ、2タッチにドリブルが絡むと敵わないので一個遅れるなと。寄せる、止める、抜かれない。これを何十回もやる」。
常にボールホルダーに対してプレスをかけてステイの状況を作ると、相手の特徴あるサイドアタックには攻撃が本職のサイドバック、草野、狩集洸哉がスピードを持ってしっかりと対応。中に入れられても相馬や庄司千暁、正野が最後の一足を出して常にノンプレッシャーでシュートは打たせなかった。相馬は「しっかりとキワのイレギュラーとかをブロックで対応できた。野崎先生のプラン通りに進められたと思います」と2試合連続無失点の守備に自信を見せた。
“南の太陽”大坂が2戦連続の決勝弾!「無失点で行けば絶対に自分が取るので勝てます」
この日も試合を決めたのは南の10番だった。浦和南にとって最初の決定機となった前半10分、草野のワンタッチのクロスに相手ディフェンスの背後からするっと現れた大坂がドンピシャのヘディングシュート。ポジショニング勝ちといったゴールでチームに先制点をもたらす。
さらに後半は守備でも魅せた。セットプレーから相手の決定機をライン上で魂のディフェンス。「攻撃の選手も自分たちのゴールに戻ったら守備の選手だと言われている。絶対に南高のゴールを守るという気持ちで魂を込めてプレーしました」。押し込まれていた時間だけに試合の趨勢を決めるビッグプレー。まさに南の男のDNAを感じさせる守備で今度は危機を救った。
「監督は日替わりでヒーローが生まれてもいいと言っているんですけど、自分は10番っていうのもあるし、みんなも信じてくれている。次も無失点でいけば自分が絶対に点を取るので勝てます」。伝統の10を背負い、“南の太陽”はヒーローとなり続けてチームを再びの全国に導く。
石黒登(取材・文)
試合結果
浦和南 1-0 武南
1(前半)0
0(後半)0