第97回全国高等学校サッカー選手権大会 埼玉県予選会決勝トーナメント ラウンド16 聖望学園 vs 浦和南
全国高校サッカー選手権大会・埼玉県予選3回戦。今年のインターハイ第2代表でこれが選手権予選初戦となった浦和南高校はMF大坂悠力のPK弾を守りきり、準々決勝進出を決めた。
序盤から大胆な攻めを見せたのは浦和南。開始直後から相手を押し込み、セットプレーなどでゴールを脅かしていく。一方の聖望学園高校もFW竹間亮太、小川大我の両ワイドが起点となって中盤以降は五分の展開に持ち込み、前半19分には小川がサイドをえぐって決定機を迎えた。
浦和南も直後に決定機。前半22分にゴール正面でフリーキックを獲得すると、MF田代幹人のシュートはディフェンスを越えたが、聖望学園GK池田力樹の好守に遭ってゴールとはならず。
それでも浦和南は前半35分、MF岡田竜哉がエリア内で粘ってPKを獲得。これを「今日は右に蹴ると決めていた」という大坂が、落ち着いてゴール右下隅に流し込んで先制に成功した。
後半も浦和南が良い立ち上がりを見せたが、徐々に聖望学園がボールを持つ時間を増やしていくと10分以降は形成が逆転。水色のユニフォームが連続して相手コートに押し込んでいく。
後半16分にはロングスローの混戦からDF齊藤聖の強烈ミドルが枠を捉えたが、浦和南GK正野友稀に弾かれてクロスバーに。25分にはDF木村優太のクロスにDF上林豪が飛び込んで、こぼれ球をFW上田輝が狙ったが、またしても浦和南の守護神が立ちふさがる。32分にはカウンターから竹間がスピードに乗って抜け出したが、5人目のディフェンダーよろしくタイミングの良い飛び出しを見せた正野がスライディングでかき出して三度決定的なシーンを防いだ。
その後も竹間の突破などから得点を狙った聖望学園だが、浦和南も最後まで集中力を保ってシャットアップ。虎の子の1点を守りきった浦和南が難しい初戦を制し、8強に駒を進めた。
神セーブを連発した正野 全国で感じた課題に取り組み、より守備範囲の広いキーパーに
後半は押し込まれる中、オフサイドになった場面を含めれば4度決定機を防いだ正野は「守備の時間が長くなるのは予想していた。焦らずに落ち着いてできたと思います」と振り返った。
ハイボールやシュートストップで好パフォーマンスを見せた中で特に目立ったのは「スペースを埋める動き」だ。後半32分にはセットプレーのカウンターからサイドを抜け出されたが、果敢に前に出てスライディングで決定機を阻止。終盤は相手がさらに攻勢を強めた中でもプレーエリア広く第5のディフェンダー、11人目のフィールドプレーヤーといった活躍を見せた。
「スペースを埋める意識っていうのは最近意識していること。ゴールを守るっていうのもそうなんですけど、スペースを自分が埋めるっていうことを意識していたので、相手のタッチが大きくなったり、自分が行ける、チャレンジできるボールに対しては冷静に行けたと思います」。
守備範囲を広げたことにはこの夏の経験が生かされている。「インターハイではボールを失った後にスピードがあって、ディフェンスだけに任せているとやられる状況とかもあった」。W杯のベルギー代表然り速攻は現代サッカーの大きな得点パターン。高校年代でもそれは同じで、能力の高い選手が集まる全国でも上位に行けば行くほど奪ってからの速攻は切れ味を増す。もう一度全国で戦うためにもプレーエリアの拡大は大きなテーマとしてやってきた部分だ。
「全国に出て、また全国レベルの相手とやりたいっていう気持ちは、全国に出ていないチームよりも絶対に強いと思う。しっかりと強い気持ちを持って、最後に優勝できるようにやっていきたいです」。最後方で堅守を支えるフィールド選手はそう言って再びの全国を見据えた。
「1試合1点は絶対。2点は決めたい」 「10番の役割」胸にエース大坂は数字にこだわる
PKは右に蹴るとあらかじめ決めていた。「自分が1年の時に選手権準々決勝で、相手は聖望でPK戦になった。自分も4番目で蹴ったんですけど、その時に左に蹴っていて。今日は多分(自分から見て)左に飛ぶなと思ったので逆の右に蹴りました」。その思惑がはまってか、見事にキーパーの逆をついたボールがネットに収まって先制点。そしてこれが決勝点になった。
この日は持ち前のテクニックで何度も相手守備を切り裂いた。「S1でも聖望とやってドリブルの感触は良かったので今日も積極的に行こうと考えていて。タッチも良かったので結構スルスルと相手も抜けた。それがシュートに繋がれば良かったんですけど、そこがまだ課題ですね」。
0得点に終わったインターハイ後、野崎正治監督からは「10番の役割をしっかり果たせ」と言われたという。10番の役割=「点を決めたり、ラストパスを出したり、得点に絡むプレー」。今大会は数字にこだわる。「1試合1点は絶対。2点は決めたいと思っています」と大坂。「選手権は第1代表しかない。決勝で埼スタに行って自分の得点で全国を決めたいですね」。得点への意識を高めたNo.10は自らのゴールで浦和南を17年ぶりの冬の頂点に導く構えだ。
石黒登(取材・文)
試合結果
聖望学園 0-1 浦和南
0(前半)1
0(後半)0