平成30年度埼玉県高校女子サッカー選手権大会 決勝リーグ最終節 花咲徳栄 vs 南稜

平成30年度埼玉県高校女子サッカー選手権大会・決勝リーグ最終節。互いに2勝で迎えた花咲徳栄高校と南稜高校の一戦は、3ー0で勝利した花咲徳栄が連覇を達成するとともに2年連続の県内タイトル3冠を決めた。両校は11月10日より埼玉県で行われる関東大会に出場する。

ともに決勝リーグ2連勝。新人戦、インターハイ予選に続き、勝った方が優勝という状況で迎えた最終戦。まず積極性を示したのは南稜だ。前線から運動量高くプレスをかけてボールを奪い、早い攻撃に繋げていく。前半14分にはMF田中麻美が右サイドで奪ってのクロスにMF西田ゆうこ、佐藤捺美らが連続して詰めたが、いずれもディフェンスにブロックされてしまう。

するとここを凌いだ花咲徳栄は前半25分、MF渡邉莉沙子の右コーナーキックを「今日はコーナーキックで絶対に点を決めたいと思っていた」というDF大沼歩加が決めて先制した。逆に今大会唯一、予選リーグから無失点を継続してきた南稜は585分目にして初失点となった。

勢いに乗る花咲徳栄は前半アディショナルタイムにMF山本桃子がサイドで粘って、クロスから混戦となったところをFW加藤心和が右足で泥臭く詰めて追加点。インターハイ予選は怪我で見送った2年生FWの今大会初ゴールでリードを2点に広げて折り返すと、さらに加藤は後半8分に左サイドバックの髙木優のクロスをニアでピタリとヘッドで合わせて3ー0とした。

一方、南稜は後半19分、MF金澤実音の展開から西田が切り返してシュート、こぼれたところをMF佐藤瑠南が狙ったが得点には繋がらず。公式記録上のシュートはこの1本に終わった。

3ー0で勝利した花咲徳栄が初優勝を飾った昨年に続き、2年連続2回目の優勝を達成した。

昨年は新人戦、インターハイ予選、選手権予選と県内3冠を達成。どのチームも「打倒徳栄」を掲げて、よりマークが厳しくなる中で3つのタイトルをしっかりと保持したことは実力の証明だ。昨年の3冠メンバーでキャプテンマークを巻く大沼は「今年はチームの結成から3冠というのを掲げていた。その目標を達成できたことはチームの自信に繋がったと思います」。

準々決勝の久喜戦ではPK戦に持ち込まれるも勝ち切って勢いに乗った。決勝リーグは5ー1(浦和西)、3ー0(本庄第一)、そしてこの日の南稜戦も3ー0とさすがの力を見せた。

後半は関東大会を見据えて7枚の選手を投入。「うまくいったところもあるし、うまくいかなかったところも多かった」(末貴光監督)という中で、怪我で離脱していたFW加瀬田彩華が一瞬のスピードやチェイシングで何度か持ち味を見せたのは上位大会へ向けての好材料だ。

「十分いける可能性のある、いままでで一番力のあるチーム」と指揮官も期待を寄せる今年の世代。3年連続の選手権出場を目指し、まずは地元埼玉開催の関東大会で上位入りを狙う。

優勝決める試合で2得点 加藤「徳栄史上最強と言われるような歴史を作りたい」

「昨日の練習の時点で監督から関東の初戦のつもりでやれと言われていて、自分も出たら絶対に決めてやるという想いがあった。(今日の経験で)大きく成長できたかなと思います」と2年生FWの加藤。優勝を決める大事な試合で2ゴールを上げてチームの大会連覇に貢献した。

自身1点目は「泥臭い」真骨頂が出た。クロスの混戦に右足を目一杯伸ばして、倒れながらも押し込んだ。「自分は身体を張って残して、どんどん泥臭くプレーすることが得意だと思っているのでそこを伸ばしていきたい」と加藤。末監督も「相手も集中していたのでクリーンシュートはなかなかないと思っていた。今日は素直に褒めたいと思います」とヒロインを称えた。

今年は怪我に苦しんだ。新人戦では出場機会を掴む中で大会終了後に脛を骨折。2ヶ月の離脱を強いられると、復帰直後に再び同じ箇所を負傷して完全復帰までに4ヶ月を要した。春のインターハイ予選にはメンバー入りしながらも出場は叶わず。関東大会は応援席から見守った。

「もう自分の情けなさもあるし、自分だったらどうしていたんだろうとか、いろいろと思うことはあったんですけど、そこは切り替えて、次の大会に向けて頑張ろうと思いました」。

リハビリ期間は身体の強さに磨きをかけるべく体幹を強化。また、昨年のエースでOGの佐々木葵(東洋大学)にアドバイスを仰ぐなど、今年最後の選手権予選に向けて「自分にできること」に努めた。そして迎えた今大会では前線で身体を張り、チームの攻撃を引き出した。

今予選は主力を務めたが、フォワードのポジションには1年の頃からその背中を追ってきたという新井優紀や加瀬田、インターハイ予選でレギュラーポジションに入った前田悠莉と経験豊富な3年生たちがおり、関東大会に向けて再びポジション争いは熾烈を極めそうだ。「まず相手のチームどうこうとかではなく、自分のチームの中での争いだと思っている。そこは1日1日の練習を大事にして、スタメンで出られるように頑張っていきたいと思います」と加藤。

関東大会に向けては「まずは初戦が大事。どこが来ようと徳栄らしさで、一戦必勝で全国大会に繋げて、徳栄史上最強と言われるような歴史を作れるように頑張りたい」と意気込んだ。

決定力に泣いた南稜「チャンスひとつにつき1点取れるように」西田はレベルアップ誓う

「チャンスは何回かあったんですけど、それを決め切ることができなかった」と西田。序盤はプレスも嵌り、押し込む展開もあっただけに得点に結び付けられなかったことを悔やんだ。

強豪校との戦いではひとつのチャンスをものにするかで勝敗が分かれる。「シュート練習でも1本1本集中して、自主練でもしっかりコースを狙って練習していきたい。決定力を上げてチャンスひとつにつき1点取れるようにしていきたい」と関東大会までの決定力アップを誓う。

キャプテンのGK武田あすみは「ここでしっかり切り替えて、強い気持ちを持って埼玉県代表として、あと1ヶ月間チームとして成長して全国大会を目指して頑張っていきたい」とした。この悔しさを糧に残り1ヶ月間でレベルアップを図り、関東、全国大会での躍進を目指す。

石黒登(取材・文)

試合結果

花咲徳栄 3-0 南稜

2(前半)0
1(後半)0

大会結果

優勝 花咲徳栄(2年連続2回目)
準優勝 南稜
3位 本庄第一
4位 浦和西
5位 入間向陽
6位 山村学園
7位 久喜
8位 川口市立