平成30年度全国高校総体 サッカーの部 準々決勝 昌平 vs 大津

平成30年度全国高校総体 サッカーの部 準々決勝。大津高校(熊本)と対戦した埼玉第1代表の昌平高校はMF原田虹輝の2ゴールで2ー1で勝利し、針谷岳晃や松本泰志を擁した2年前に続く4強進出を果たした。昌平は初の決勝をかけ次戦、桐光学園高校(神奈川)と激突する。

前半昌平は高い位置でプレスをかけながら、やはりこの日も原田を起点に攻撃を展開していく。4分には原田のフリーキックからMF渋屋航平が頭で折り返して、今大会初スタメンとなったMF古川勇輝が決定機。シュートは枠上に外れたが、まずは昌平がチャンスを迎える。

中盤以降は一進一退の攻防となった。昌平は前半25分にFW西村悠希が抜け出すもシュートは打てず。アディショナルタイムには今度こそ古川のシュートが枠を捉えたが、ここは相手キーパーの好守に阻まれた。前半は中盤で保持しながらも、U-18日本代表DF吉村仁志らが構える強固な最終ラインに対し、なかなか決定打を打つには至らず。スコアレスのまま折り返した。

迎えた後半は序盤から大津が猛攻を仕掛ける。2分には吉村とともにU-18代表でも主軸を担うMF水野雄太に右足で危険なボレーを放たれると、その後も連続してチャンスを作られる中で昌平は関根浩平、阿部天翔のセンターバックコンビや相手のキーマン・水野とマッチアップした右サイドバックの吉田航らが、すんでのところで身体を張ってゴールを守る展開が続く。

クーリングブレーク明けの後半21分には右クロスを完璧に合わせられたが、直前にも決定機を防いでいたGK牧之瀬皓太が至近距離からのシュートをファインセーブ、ゴールは許さない。

すると後ろの頑張りに前が応える。試合が動いたのは後半23分。自陣でボールを受けた原田がドリブルを開始すると、スピードに乗りながら相手をするするとかわして一気にゴール前へ。この積極性がエリア内でハンドを誘ってPKを獲得し、原田が自ら決めて昌平が先制した。

しかしリードは長くは続かず。後半30分、今度は逆にPKを取られると、これを沈められ1ー1に。その後試合は給水を挟んで35分を経過。残り時間もわずかとなり、このままPK突入かと誰もがそう思ったであろうアディショナルタイムに、もうひとつのドラマが待っていた。

主役となったのは原田だ。後半37分、相手ゴール前でクリアボールをカットすると様々な選択肢がある中で森田とのワンツーを選択。森田から綺麗なリターンが入ると、飛び出してくるキーパーに対し左足で冷静にチップキックを決めてこれが決勝点となった。2ー1で勝利した昌平がプロ選手2人を輩出した2年前の先輩たちが記録したインハイ4強についに肩を並べた。

現メンバーで唯一ベスト4を経験している関根は「一昨年は圧倒された部分もあったけど、そこで自分も全国のトップレベルを体感できた」振り返り、「ベスト4は厳しい戦いになる。連戦でやってきた中で疲労もあるが、メンバー全員で戦っていきたい」と力強くコメント。U-16日本代表のエースで大会屈指のストライカー・西川潤を擁する桐光学園との対戦を前に、同じく2年生の牧之瀬は「準決勝ではしっかりと0で抑えて勝ちきりたい」と失点0を誓った。

やはり最後はこの男! 原田の2ゴールで昌平が2年ぶりの4強進出

やはり最後はこの男。県大会でも得点を量産した原田が2得点でチームを全国4強に導いた。

「今日は原田でいくぞ!」。きっかけとなったのは後半クーリングブレーク時に藤島崇之監督からかけられた言葉。攻撃の全権を任されると、再開直後から自身の真骨頂を発揮する。

1点目は再開からわずか3分後。自陣深くからドリブルを開始するとスピードに乗りながら一気に相手ゴールエリアへ。最後は味方へのパスを狙ったというが、この原田の積極性が相手のハンドを誘ってPKを獲得すると、これを自らしっかりと決めてチームに先制点をもたらす。

その後同点とされたが、後半アディショナルタイムに大仕事。ゴールエリア前で相手のクリアミスをカットすると「押し込んだ状態でいろんな選択肢があった」と一瞬の逡巡を挟んで森田とのワンツーを選択。「森田とのワンツーは結構練習でもある。一番パスも合う」と息もぴったりな相棒からリターンに走り込み、最後は飛び出したキーパーの上を抜いて勝負を決めた。

ボランチということを忘れさせるダイナミックなドリブルと得点能力。埼玉県大会では新たに挑戦した左サイドハーフのポジションで通算8得点とゴールゲッターとしての資質が一気に開花し、得点王にも輝いた。ボランチにポジションを戻した現在もその得点感覚は継続中だ。

原田が思いきって前に出られるのはコンビを組む丸山聖陽の存在も大きい。「もう丸山が全部競ってくれる。「任せろ!」と言って、いつもいてくれるので助かります」と感謝しきり。

もちろん今大会に自身の将来も見据える。「進路にも関係するので、このままの調子を保ちたいですし、それでチームを勝たせられるのが一番だと思うのでもっと頑張りたいです」。針谷、松本世代も果たせなかった決勝進出となればプロも放っておけない存在となるはずだ。

石黒登(取材・文)

試合結果

昌平2-1大津

0(前半)0
2(後半)1