平成30年度全国高校総体サッカー大会 埼玉県予選決勝 昌平 vs 浦和南

インターハイ予選決勝。昌平高校と浦和南高校の一戦は、昌平が4ー2で勝利し大会3連覇を飾った。昌平はMF原田虹輝の2得点を含めて4点ともがミドルシュートからの得点。浦和南も前半終了前に1点を返すと、後半15分にMF大坂悠力のゴールで一時は追いついたが終盤に2失点を重ねて敗れた。両校は8月に三重県で行われるインターハイ全国大会に出場する。

オープンな展開となる中、積極的なシュート意識を見せた昌平が今季県内初Vを果たした。

試合は早い段階で動いた。先制したのは昌平。前半25分、直前に一列前からボランチにポジションを移していた木下海斗は「ボランチでフリーで受けられるのはわかっていた。監督からも積極的に打っていけと言われていた」。DF吉田航のマイナスのパスに左足を振り抜くと、ボールは低い弾道でゴールに突き刺さった。木下の3試合連続ゴールで昌平がゲームを動かす。

さらに昌平は前半35分、この日1トップに入った大和海里がゴール前で絶妙なヒールパス。これに後ろから走り込んだ原田がドリブルで運んで右足でゴール右下隅に決めて2ー0とした。

対する浦和南も前半終了間際に反撃。40分、左サイドハーフの草野皓のクロスにファーでMF狩集洸哉が頭で折り返すと、これに準々決勝1ゴールのFW佐藤智隆が右足でダイレクトシュートを決めて1点を返す。試合は2ー1と昌平1点リードに変わり、ハーフタイムを迎えた。

勢いに乗る浦和南は後半13分に大坂のスルーパスに草野が抜け出したプレーはオフサイドとなったが、直後の決定機をゴールに運んだ。15分、MF鹿又耕作の縦パスからMF中道麗心がワンタッチで繋ぐと、大坂がペナルティーエリア手前から左足を一閃。ボールは綺麗な放物線を描きながらゴールに吸い込まれた。No.10のビューティフルゴールでついに同点に追いつく。

だが、昌平もここで慌てず。再び前への推進力を高めていくと後半24分、DF堀江貴大のクロスのこぼれ球に真横から入った原田が右足で強烈なダイレクトシュート。中弾道で打ち出されたスピードボールはそのままサイドネットに突き刺さり、昌平が再度、浦和南を突き放す。

後半31分には新人戦、関東予選と怪我で出遅れたMF渋屋航平が今大会にかける意気込みが伝わってくるようなダイナミックな一発を叩き込んで4点目。終盤にかけても今予選はスーパーサブとしてチームを活性化させたMF須藤直輝がドリブル突破で魅せるなど、最後まで攻め手を緩めなかった昌平が4ー2で勝利して大会3連覇、そして待望の今季初タイトルを掴んだ。

決勝でも2ゴールでチームを牽引したMF原田「シュートの意識は全体的に上がっている」

今大会は通算8ゴール。決勝でもミドルシュート2発でチームを牽引した原田は「いままではこんなに点を取ったことがなくて。ちょっと実感がわかないです」と照れ臭そうに笑った。

この日の2得点もゴラッソだった。大和の落としをエリア外からキーパーのぎりぎり届かない右下隅に決めた1点目凄かったが、圧巻は同点とされた後の2点目。堀江のクロスに対しボールの溢れてくる位置を予測。ほぼ真横からアプローチしながら「自分的に得意な角度。あそこはもう絶対に打とうと思いました」と左斜め45度から右足を振り抜くと、中弾道のロケットのようなスピードボールで再びネットを揺らし、相手に傾きかけた流れを一気に手繰り寄せた。

決勝は原田以外の2点もミドルから。「シュートの意識は本当に上がっている。いままでは崩して良い状態の時に打つことが多かったんですけど、『ゴールが見えたら打つ』っていうのが全体で意識していること。ミドルの練習も多くなって、それが試合に出てきたと思います」。

そういった中で原田自身も昨年のようにゲームを作る側のプレーヤーからフィニッシュにも絡めるアタッカーに変貌を遂げつつある。最近お手本としているのはブラジル代表でFCバルセロナ所属のMFフィリペ・コウチーニョ。「シュートがうまい。参考にしたりしています」。

前年の4強として、優勝候補の一角として臨んだ昨年のインターハイでは初戦の2回戦でまさかの逆転負け。「去年はちょっと先を見過ぎた。やっぱり一戦一戦が大事なので、まずは初戦に勝って流れに乗っていきたいですね」と原田。まずは一回戦、勝って上昇気流に乗る。

「あいつがいるから積極的な仕掛けができる」監督絶賛のMF丸山が黒子の働きで貢献

危険な場所には常に背番号6の姿がある。藤島崇之監督も「あいつがいるから勝負ができるというか、積極的な仕掛けができる。あの渾身的な運動量と、プラスやっぱりボール奪取力は相当高いと思う」と賛辞を送る選手。中盤の底で欠かせない存在になっているのが丸山聖陽だ。

怪我もあり、新人戦、関東予選では出場のなかった丸山だが、今大会ではボランチのレギュラーとして活躍。吉田、原田、木下と試合や展開ごとに相方が変わる中で、「みんなのやりたいことはわかっているので問題ないです」と、どの組み合わせでも好パフォーマンスを見せた。

「試合中はあまり足が攣ったことはない。最後まで走れます」という運動量と抜群のボール奪取力が武器。この日も攻撃的な選手の揃うチームの中盤のフィルターとして相手のカウンターの第一の芽を積み、黒子の働きで昌平の攻撃を影から支えた丸山の理想像は、日本代表FW岡崎慎司の元同僚で現在はチェルシーでプレーするフランス代表MFエンゴロ・カンテだ。

「今大会はできた部分もあったんですけどやっぱりまだ課題も多い。防げた失点もあったのでそこは0にこだわってやっていきたいです」と丸山。全国に向けては「相手を見て戦い方を変えることを意識してやっている。どんな相手でも冷静に戦っていきたいです」とした。今年は副主将も務める昌平の心臓は、冷静に、クレバーに全国の舞台でも自分の仕事を全うする。

石黒登(取材・文)

試合結果

昌平 4-2 浦和南

2(前半)1
2(後半)1