平成30年度 関東高等学校サッカー大会 成徳深谷 vs 前橋育英

関東高校サッカー大会決勝。初出場初優勝を狙った埼玉県代表の成徳深谷高校は、群馬県代表の前橋育英高校に1ー2で敗れ準優勝に終わった。早々から押し込まれると後半15分までに2失点、25分に途中出場のFW間中実来が一矢報いたが、選手権優勝校の壁に跳ね返された。


1ー2。スコア上で見れば善戦。だが実情は完敗だった。シュート本数は前橋育英の16本に対して3本。ほとんどの時間を自陣で戦うことを余儀なくされ、為谷洋介監督は「まさかここまでクオリティに差があるとは思わなかった」と、相手との実力差があったことを認めた。

序盤から自陣に張り付けとなった。前半9分のピンチはGK神尾龍汰がセーブしたが、その10分後には縦パスから右ポスト直撃のシュートを放たれた。技術で勝る相手に対し、なかなか中盤でフィルターがかからず何本も縦パスを通される中で成徳深谷は早々にFW北原港を準備。右サイドハーフで先発した佐藤蒼太をボランチに一列下げて守備の安定を図ろうとするが、交代カードを切る直前の前半27分にやはり縦への一本のパスから豪快に決められて失点した。

これ以上の失点は防ぎたい成徳深谷はラインを下げて後ろで構えるディフェンスに変更。まずは守備を固めつつ、攻撃は先に投入した北原に加え、後半開始時にFW新井飛雅、12分にFW間中実来と打開力のあるカードを切って、カウンターから得点を狙う形にシフトチェンジする。

その後は相手のシュートミスやポストなどにも助けられ最少失点で耐えたが、後半15分に右クロスからダイレクトで中央に折り返されると、完全に振られる形となり2失点目を喫した。

ここまでシュート0本。残り25分で2点を追う苦しい展開。それでもここで間中が意地を見せる。後半18分にチーム最初のシュートを放つと、25分についにネットを揺らした。神尾の気迫のこもったセーブから一気にカウンターに繋げると「(北原)港に当てて、裏に走ったところにいい感じに来た。あとは一対一を抜いて決めるだけでした」。新人戦でも好連携を見せた2年生コンビで左サイドを崩し、最後は角度のないところから右足でサイドネットに運んだ。

ベンチもここで動く。直後の後半26分に今大会は負傷で出場のなかった183cmのDF成澤圭梧を最前線で投入してパワープレーに出る。終盤にはDF長谷玲央のロングスローからニアで成澤が競って、DF堀井皓士郎がオーバーヘッドを狙っていったがボールはゴール左に外れた。

終盤にも2度の決定機を迎えられる中で1ー2で敗戦。「本当によく失点2で抑えられたなという感じ」と為谷監督。初の関東大会決勝はスコア差以上の“大差”を感じた一戦となった。

「育英も何十回も悔しい想いをして今がある」 現実を受け止めて再びリベンジの舞台へ

「裏を取る速度や意識、前のフォワード2枚の斜めへのランニング、守備力も含めてすべてが自分たちより高かった。昨日まではいままで積み上げてきたものが県外でも通用していると思っていたんですけど決勝の相手は違った」(佐藤)。まさに完膚なきまでに打ちのめされた。

それでも今大会は初の県外公式戦ながら初日、2日目と勝って決勝に進出。最後は現段階での実力差を見せつけられたが、これも真剣勝負のファイナルを戦ったからこそ得られた経験だ。

試合後、為谷監督は「悔しい想いもしたと思うけど、前橋育英はもう何十回もそういう想いをして、いまの育英がある」「ただ悔しいというだけじゃ次に繋がらない。現実を受け止めて何ができて、何ができなかったか整理していかないといけない」と選手たちに伝えたという。

ピッチに立ち、全国トップレベルを体感した選手も事実と正対し、自分たちの課題と向き合う。堀井は「前半5分くらいで前プレをやめて、ラスト20分で戻して1点を取りにいけば失点も0で抑えられて攻撃でも点が取れた」と中で柔軟に判断し、行動すべきだったと反省。

佐藤は「自分たちのサッカーが間違っているとは思わないですけど、やっぱり全国トップクラスのチームと対戦すると自分たちはまだ未熟で大きな差があると感じた。ここから何かを大きく変えることはできないと思うので積み重ねの質を上げることが大事」と細部の積み上げが必要と強調する。間中は「ゴールは自信にはなった」としながら「止めて蹴る技術や個人の技術をもっとアップしないとダメだなと思いました」と、各々のスキルアップを課題に挙げた。

千里の道も一歩から。終了のホイッスルは次へのスタート。そしてこの経験を必ず無駄にしないために。それぞれがこの現実を受け止めて、インターハイ、選手権でリベンジする。

石黒登(取材・文)

試合結果

成徳深谷 1-2 前橋育英

0(前半)1
1(後半)1

優秀選手

GK 高橋怜士(前橋育英)
DF 府川宙史(前橋育英)
DF 吉田和暉(前橋育英)
DF 長澤壮竜(前橋育英)
MF 鏑木瑞生(前橋育英)
FW 石井陽向(前橋育英)
GK 神尾龍汰(成徳深谷)
FW 北原港(成徳深谷)
FW 間中実来(成徳深谷)
FW 戸澤雄飛(成徳深谷)
DF 中野就斗(桐生第一)
MF 楠大樹(桐生第一)
MF 田中渉(桐生第一)
FW 若月大和(桐生第一)
GK 猪田光哉(駿台学園)
MF 布瀬谷翔(駿台学園)
FW 大野竜之(駿台学園)
MF 中山陸(東海大相模)
MF 平田和也(帝京第三)
FW 山田大樹(佐野日大)
MF 榎原拓哉(東海大甲府)