全国高校サッカー選手権2回戦 神村学園 vs 昌平

全国高校サッカー選手権2回戦。1回戦で選手権初勝利を掴んだ昌平高校は2日、神村学園高校(鹿児島)と対戦した。試合は終始、昌平ペースで進むも、前半9分に喫した1点が重くのしかかって0ー1で敗戦。日本一をかけた挑戦は夏に続き、志半ばのベスト32に終わった。

チャンス数では上回りながら、一本の決定機をしっかりと決めたみせた神村学園に惜敗した。

前半9分、神村学園はクロスを競ったこぼれ玉を清水エスパルス内定のMF高橋大悟がゴール左下隅に狙いすまして決めた。名手・緑川光希もコースには飛んだが、「トラップからシュートまでが早かった。ちょっと反応が遅れた」。立ち上がりに失点し、ビハインドを背負った。

それでも中盤以降は昌平が畳み掛ける。MF原田虹輝を中心にボールを動かすと、前半17分には原田のパスからFW佐相壱明が右足に持ち替えてシュートを放つもゴール上へ。22分にはMF渋屋航平の抜け出しからMF森田翔が切り返して狙ったが、ボールは再び枠上に外れた。

さらに26分には森田、渋屋とエリア内で繋ぐと、左でフリーで受けたMF伊藤雄教が決定機を迎えるが、相手の決死のクリアでゴールを割ることはできず。前半は0ー1で折り返した。

得点が欲しい昌平は後半10分にMF山下勇希を投入。左サイドに入った山下は得意のドリブルで相手を押し込む。19分にはMF古川勇輝をピッチに送り出すと、古川を左サイド、山下をトップ下に変更。22分には古川、DF堀江貴大で左サイドを崩すと、堀江のマイナスのクロスに古川が走り込んで決定的なシュートを放ったが、ボールは相手キーパーの攻守に阻まれた。

その後も後半29分には原田の右コーナーキックにDF石井優輝がドンピシャのヘッドを合わせるもゴールならず。39分には山下がゴール前でファールを獲得すると、原田のフリーキックはわずかにポストの左側に逸れた。最後まで攻める姿勢は見せたが、神村学園の粘り強い守備に対してゴールが遠かった昌平。ロスタイムの佐相のポストプレーも実らず、0ー1で敗れた。

ホイッスルの瞬間しゃがみこんだ佐相は「この大舞台で勝たせられなくて。悔しいです」。「前半のシュートは落ち着いて打てば決められた。自分を焦せらせる弱い自分がいて、そこの自分との勝負に負けたというのが本当に悔しい」とうつむいた。

卒業後は大宮アルディージャでプロとしての第一歩を刻む。「弱い自分に打ち勝つ、強い自分になりたい」と佐相。「今のままじゃ通用しない。もっともっと練習して、成長して、佐相じゃなきゃダメだと思われるような選手になって成功したい」。この悔しい経験を糧にプロの世界での飛躍を誓った。

3年ぶりの選手権は2回戦敗退に終わった。それでも「今年のチームが今までで一番良かった」と伝えたと藤島崇之監督。MF針谷岳晃、松本泰志と2人のJ内定者を擁し、インターハイ3位に入った昨年のチームが活動を終えて新チーム最初の遠征で、「今年のチームは強くない」という指揮官の言葉からこのチームは始まった。そんな中でチームは新人戦で連覇を飾ると、関東予選Vに続いて本大会も初制覇、その後も高校総体予選、選手権予選、リーグ戦を制して前人未到の埼玉県内5冠を達成。「選手が伸びた年。良いチームだった」と振り返った。

主将としてチームを牽引してきた石井は「(チーム発足時に弱いと言われた中で)監督やコーチの力もあってこの舞台に立つまでに成長できたことは誇っていい。自分たちの取り組み方次第で変わることができるというのを後輩たちに示せたと思うので、後輩たちにはもっとうまく、強くなってほしいと思います。自分たちの記録を必ず超えて欲しい」とバトンを繋いだ。

来年はチームを牽引する立場となる2年生10番の渋屋は3年生の姿を見て「これが高校サッカーなのかというのを初めて思い知った」という。「3年生には本当に良い経験をさせてもらって感謝しかないです」と渋屋。「悔しい気持ちもあるが、この経験を無駄にせず、来年は2回戦じゃなくて本気で日本一を取れるくらい良いチームを作れたら」と気持ちを切り替えた。

夢は来年へ。それでもこれだけの経験を持って次年度に移れるチームは全国でもそう多くはないだろう。3年生たちが築いてきたベースの上に、来年度こそは悲願の日本一奪取に挑む。

石黒登(取材・文)

試合結果

神村学園(鹿児島) 1-0 昌平

1(前半)0
0(後半)0