選手権敗退で「どん底」味わうも、「後輩たちのために」で再びひとつに 正智深谷が自慢の守備で昌平Ⅱを零封し10年ぶりの県リーグ制覇!

3日、高円宮杯U-18サッカーリーグ2023埼玉1部リーグ(S1リーグ)は最終節(第18節)を行い、首位・正智深谷と勝ち点3差で追う2位の昌平Ⅱが激突。試合はスコアレスの引き分けに終わり、勝ち点を「39」と伸ばした正智深谷が10年ぶりとなる県リーグ制覇を果たした。

「選手権で悔しい想いをして、なかなか気持ちの切り替えもできない中でチームのみんなが鼓舞してくれて、最後のS1こそは優勝して、後輩たちのためにプリンスに上げて終わろうっていう話をしていたので、優勝できて良かったです。ホッとしています」(正智深谷・望月奎杜主将)

正智深谷は県準々決勝で延長戦の末に聖望学園に敗退。懸けていた分、失望は計り知れないものだったが、そこを乗り越えて迎えたリーグ戦で堅守を軸に安定した戦いを見せて優勝を飾った。

対した昌平Ⅱは、優勝するには中断明けの残り3節での全勝と大量点が求められた中で武南に4-1、武蔵越生に5-0と力を見せつけて連勝。首位・正智深谷との最終決戦を前に勝ち点差「3」、一時は「9」あった得失点差も「1」と勝てば連覇を決められる状況でこの日を迎えた。

昌平ⅡはMF本田健晋(2年)、MF田中洸成(3年)のダブルボランチを中心にビルドアップしながら、CB坂和飛空(3年)のフィードからFW平叶大(3年)が抜け出しや起点となる動き。前半の途中で右サイドに移ったU-17日本代表のMF山口豪太(1年)がカットインからフィニッシュを狙い、33分、35分には連続して10番MF工藤聖太郎(3年)が決定機を迎えた。

それに対し正智深谷は「引き分け狙いで行くと勝てない。きっちり普段通り、良い守備から良い攻撃をやっていこうと」(小島時和監督)。守備に回る時間は多かったものの、相手のロングフィードに対しCB飯嶌拓(3年)がヘディングで弾き返し、侵入してくる相手にはしっかりと挟み込んで守備。そして最後の場面では予測能力の高いCB平塚大吾(3年)や右SB金田惇世(3年)が必ずカバーに入って身体を張ってブロック。守護神の望月奎斗(3年)の安定感も光った。

前半をスコアレスで終え、指揮官は「思いのほかチャンスも作れていたし、良いリズムではいっていた。相手の方がだんだん嫌だなというふうな感じはあったと思う。グループで崩されているわけでもなかったので、個々をしっかりと対応していけば可能性があるなと」感じていたという。

圧を強めた後半は公式戦初先発のFW佐合海哉(3年)が前線からのチェイスやポストプレーで相手を押し返すようなシーンも。閉塞感を打ち破りたい昌平は、県予選決勝から自信を持ったプレーを継続するMF三浦悠代(2年)や前節2ゴールのFW齋藤結斗(1年)を投入する。

それでも正智深谷は終盤、4バックから5バックに変更するなど、最後まで集中を切らさずきっちりとシャットアウト。2013年以来となる県リーグ制覇を引き寄せた。今季の失点数はわずかに「9」。後期は6勝3分と負けなしで、失点は浦和学院戦で喫した1点のみと堅守が光った。

今季は「とにかく選手権とリーグ戦だけは取るぞと。この2つは絶対だ」(監督)と後半の2大タイトルにフォーカスし、そのために準備をしてきた。それだけに一番重きを置いていた選手権での失望は大きく、3日のオフを終えてもショックで学校に来られないメンバーもいたという。

副将の平塚も「最初は実感がなくて。時間が経ってくるうちに「負けたんだな」と思ってどん底に入った」という。それでも「時間が解決してくれた」。ひとりひとりがその暗闇の中でもがき苦しみながらももう一度前を向くことを決意。そして最後は「もう後輩たちのためにプリンスに上げたいと思うヤツだけ残れみたいな話をして、みんなの矢印が揃ったかなと思います」と話す。

もちろんこれはまだ第一段階。望月は「自分たちの山は強い高校だったり、ジェフさんも強いと思うので、それは良い経験になると思うんですけど、良い経験ができましたじゃ終われない。後輩たちのためにもプリンスにあげたい」、平塚は「まだリーグ優勝しただけ。参入戦までで成長できる部分が絶対にあると思うのでそこはしっかりと詰めていきたい」と意気込みを語った。

石黒登(取材・文)

試合結果

昌平Ⅱ 0-0 正智深谷
0(前半)0
0(後半)0