<全国高等学校サッカー選手権大会 埼玉県予選会決勝トーナメント準決勝>昌平 vs 正智深谷

全国まであと2つ。13日(日)に選手権埼玉予選の準決勝がNack5スタジアム大宮で行われ、昨年の覇者・正智深谷高校と2年ぶりの選手権出場を狙う昌平高校が対戦した。

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今年に入り両校は3度激突。新人大会準決勝では2-0で昌平が、関東大会決勝は2-1で正智深谷が、直近の対決となった7月のリーグ戦では7-1で昌平が勝利していた。ともに手の内を知り尽くす相手通し。正智深谷は中盤をフラットにした4-4-2、昌平は4-2-3-1と、いつも通りの形でこの一戦に臨んだ。

試合は序盤から昌平がボールを持つ展開に。針谷岳晃、新垣理生の両ボランチも含めた後方でボールを回しながらも、本間椋のタイミングの良い抜け出しからチャンスを狙っていく。前半6分には針谷のロングフィードに本間が抜け出して粘ると、最後は左サイドでフリーになっていた松本泰志がシュート。ボールはディフェンスの足にあたりクロスバーに弾かれたが、昌平がまず攻撃の形を作る。

一方、正智深谷はラインを高く保ちつつ、コンパクトな守備ブロックを形成。「昌平は3人(本間、松本、針谷)が本当にうまいので、みんなで共通意識を持って守備に入った。ボールが入ったところにはサイドバックやセンターバック、ボランチやミッドフィルダーの選手がしっかりサンドして取れた」と小山開喜主将。中盤からプレッシャーをかけてボールを奪うと、前線の玉城裕大や新井晴樹、左サイドの今岡マックスのスピードを生かした攻撃からシンプルに前をついていく。

昌平は多くの時間でボールを持ちながらも、正智深谷・小島時和監督が要注意選手としてあげていた本間、佐藤大誠といった前の選手がスペースを消され、なかなか効果的な縦パスを引き出せず。前半終盤には連続してセットプレーのチャンスを迎えるが、正智深谷の集中したディフェンスに跳ね返され0-0で試合を折り返す。

後半も序盤からペースを握ったのは昌平。6分、針谷が自ら得たフリーキックからゴール左隅を狙うも、これを正智深谷GK戸田海斗が横っ飛びでキャッチ。さらに9分には中盤で山下勇希がカットすると、ドリブルで前線に持ち込んでいく。山下は絶妙なタイミングでフリーになっていた本間に横パス。キーパーと1対1の決定機、本間は迷わず狙っていったが、またしてもGK戸田が立ちふさがる。

ここで正智深谷・小島監督が動く。後半12分、この日攻守に走った今井に代えて、「ためが作れるし、突破もできる。リズムを変えることができる選手」と評する田島帆貴を投入。すると準々決勝・大宮南高校戦でも途中出場からアシストを決めたこのスーパーサブが、ファーストタッチでいきなり大仕事をやってのける。

後半13分、正智深谷は左サイドやや遠いところでフリーキックを獲得する。キッカーは玉城。「ちょうど(玉城と)目があった気がした」という田島はキックと同時にゴール前に走り込む。

「結構キーパーも出ているな」と冷静に判断した背番号12はディフェンダーを背負いながらもバックヘッド。「基本はヘディングとかそういうタイプじゃない。バックヘッドは本当に初めて入れたぐらい」(田島)。監督はおろか、本人自身も驚きを隠せないゴールで、ついに正智深谷が先制に成功する。

「本当にみんなで守備を頑張って失点しなかったから、ああいうフリーキックで一本取れた。思ったよりも(昌平の)攻撃は怖くなかったので、1点入って勝ちを確信した」というのは主将の小山。加えて田島が入ったことにより前線でボールが収まるようになり、細かいパス回しなど攻撃のリズムも良くなっていく。

なんとか同点としたい昌平は後半20分過ぎから主将の新垣、佐藤といった選手を連続して入れ替え、星野蒼馬、佐相壱明といったフレッシュな選手を投入。さらにフォーメーションを2トップに変更し、得点を狙いにいく姿勢を見せる。対する正智深谷は玉城に代え、今大会1得点の西澤悠人をピッチに送り込む。

昌平は後半25分、左サイドからの攻撃のこぼれ球を星野がダイレクトでシュート。しかしボールはクロスバーを大きく越えてしまう。その後も針谷を起点に正智深谷ゴールに迫るものの、GK戸田を中心に根岸航大、田村恭志、金子悠野、中村友空からなるディフェンスラインが集中した守備で跳ね返し続ける。

最後まで攻め続けた昌平だったが、この固い守備を崩すことができず。セットプレーの1点を守りきった正智深谷が昨年に引き続き、決勝に駒を進めた。

「しっかり耐えておけば、一つチャンスがくるんじゃないかと思っていた。とりあえず勝つとしたらこんな感じだろうと思っていたがうまくいった。ここにきてチームとしても向上しているのが見えている。もうここから先はあいつらがどこまで登るか信じて頑張ってもらうだけ」と正智深谷・小島監督。

今年は怪我人が多く、1年を通してベストメンバーで戦うことができなかったが、ここにきて新井、田島、玉城といった前線の主力が帰ってきた。「この大会は最後ということもあって、みんなでサッカーできているので本当に楽しい。楽しめてサッカーをやれるのが一番ベスト」と主将の小山は嬉しそうに話す。

チームはここまで無失点を継続中。この日も攻守を連発し「0」に貢献したGK戸田は「関東予選の時も無失点優勝を目指していたが、(2-1で勝ったものの)決勝で昌平にPKから取られてしまったので、次こそは無失点優勝したい」と意気込みを語った。連覇をかけた決勝で正智深谷は浦和南高校と対戦する。

一方、昌平・藤島崇之監督は「全国大会に行って、改めてどこまで行けるかというチャレンジを選手たちにさせてあげたかったが、悔しい結果に終わってしまった。対策をされても何ができるかということが、チーム力として発揮されなければいけなかった。もっとやらなければいけないというメッセージだと受け止めたいと思う。

一年間を通して我々がやってきたサッカーは、ボールを動かす動かし方、配球の仕方という部分があって、それが対策されてしまうと封じられてしまうことがあるので、個のパフォーマンスを上げていかないといけないし、その力が局面打開につながっていかないといけないと思う」と、この一戦を振り返った。

2年ぶりの選手権出場は叶わなかったが、初の高校総体で4強、そして2人のJリーガー誕生と、今年の埼玉高校サッカーシーンにおいて彼らは間違いなく主役だった。Jリーグ入りを決めた針谷、松本の成功を願うとともに、山下や関根浩平、緑川光希ら1、2年生たちが今後どのように成長していくのか、期待して見守りたい。

石黒登(取材・文)
椛沢佑一(写真)

試合結果

昌平 0-1 正智深谷

0(前半)0
1(後半)1