川口市立が現校名で2度目の16強進出! 元Jリーガー監督が話す「気づき」の大切さ、西武台戦も「選手たちに一番感じて欲しい」
川口市立が現校名で2度目の16強。令和5年度全国高校総体・県予選2回戦が4日に行われ、川口市立と松山が対戦。延長戦に及んだ戦いを川口市立が3-1で制し、3回戦進出を決めた。
川口市立は序盤から相手コートでゲームを進め、前半32分にショートコーナーからMF大森拓真(2年)のクロスをファーサイドで1年生CBの阿部龍大がヘディングで決めて先制した。
しかし、試合を通じて相手の堅陣に苦しんだ。「相手もうちを研究してきて、後ろに人数を割いてやっていたので、なかなかうちとしては最後のところでスペースがなかった」(岩井厚裕監督)。
左サイドのMF中嶋絆(3年)や右サイドのMF原田琉唯(2年)、DF清水厳(2年)と、ワイドの攻撃力を生かしたアタックが売りだが、松山は5バック+中盤の3枚で両サイドのスペースに蓋。10番CF長谷川達哉(3年)が起点となって、相手の堅守を崩すべくジャブを打ち続けたが、ラストパスやセンタリング、シュートで精度を欠き、崩しきることができないでいた。
松山はしっかりと守りつつ、虎視眈々とカウンターの機会をうかがい、後半13分にはFW田口瑠々(3年)のクロスにFW利根田泰樹(3年)がダイビングヘッドでゴールに迫った。そして終了間際の42分、カウンターから主将のFW神戸暖(3年)が抜け出し、ゴールエリア内で倒されPKを獲得。これを自ら置くと、GKの逆をついてゴール右隅に決めて土壇場で追いついた。
それでも川口市立は延長前半4分、途中出場の3人で形を作りゴールを割った。MF三瓶直裕(2年)のクロスをFW黒渕匠吾(2年)が競ると、「自分でゴールを決めたいと思って試合に入った」というMF小俣蒼(2年)はトラップで上に浮かして相手を交わし、最後は右足で決めた。
さらに延長後半1分には、前日のFAカップ決勝で決めたマンチェスターCのMFイルカイ・ギュンドアンのゴールを見てイメージを高めていたという原田が目の覚めるような右足のキャノン砲を突き刺してダメ押し。苦しみながらも延長戦では自力の強さを見せて3-1で勝利した。
川口市立は川口総合、市立川口、県陽の3校が合併し、現校名になった初年度の2018年選手権予選以来となる16強進出。この日は最後の部分の精度で課題を残したが、結果を出したことは選手の成長する栄養となる。また、その中での「気づき」を大切にしてほしいと指揮官はいう。
「結局は自分で気づいてやらない限りうまくはいかない。自分に足りないもの、伸ばしたいもの、そういうのをどんどんやっていける選手が良い選手だと思うし、失敗したら次、失敗しないためにはと考えてプレーできる選手が良い選手だと思うので、そういう選手になってもらいたい。
人数も増えてきて競争もある。そういう中で、じゃあ自分はどういう風にしていったらいいのか。自分はよく言うんですけど、5年後、10年後、やっぱり良い選手だと言われるようにやってもらいたい。いまはダメかもしれないけど、もしかしたらまた大学とかでサッカーをやる子がいたら、そこで花開くかもしれない。だからいまが旬じゃなくても、自分はいつかできる、いつかできると思って努力して欲しいし、そういうチャンスを逃さない。誰にでもチャンスはあるんだと」
「自分もそうでしたから」
岩井監督自身も、帝京入学当初は「まったく箸にも棒にもかからなかった」という中で「たった10分」の出場機会を生かし、レギュラーに。東海大を経て、全日空や横浜フリューゲルス、アビスパ福岡で活躍した。「その時のタイミングとかもあるんですけど、やっぱり努力したことが、いざという時に出せたら、それは本当に一番自信になるし、一番栄養になると思います」と話す。
初の8強進出をかけた10日の3回戦はプリンス関東2部所属の強豪・西武台との戦い。岩井監督にとって西武台・守屋保監督は帝京の先輩で、現役時代には教育実習で教わった縁もある。
「相手は格上だし、とにかく自分たちのできるものを出し切るしかない。ああいうチームと真剣勝負の場でやったことはまだないので、最初は多分相手の速さとか、うまさに圧倒されると思う。だからこそ、最初の10分」と立ち上がりをキーポイントに挙げる。そして「本当に強いチームとやって、どこまでできるか。どういうところが足りないとか、まだ練習が甘いとか、選手たちに一番感じてほしい」と未体験の強敵を相手にして、選手たちの成長に繋がる気づきに期待した。
石黒登(取材・文)
試合結果
松山 1-3 川口市立
0(前半)1
1(後半)0
0(延前)1
1(延後)1