今季2冠目の武南が見せた「順応性」 昌平、西武台に対抗するために見えてきた今季の形

プレミアリーグの昌平、プリンスリーグの西武台に対抗するために、今季の武南の形が見えてきた。令和5年度関東高校サッカー大会県予選は4月30日、浦和駒場スタジアムで決勝戦を行い、武南は初優勝を狙った埼玉平成を延長戦の末に3-1で下し、4年ぶり18回目の優勝を飾った。

ともにボール技術に定評のある両チームのゲームは試合開始からハイテンポなものとなった。その中で埼玉平成は早々にポスト強襲のシュートを放った10番MF大久保夢牙(3年)が運び出しながらカウンターなども交えて攻撃を展開。すると前半34分、ゴール前の混戦をチームトップスコアラーの左WG佐藤快琉(2年)が滑り込んで今大会4ゴール目を決めて先制した。

武南は押し込んで進めていたが、「右で持たされている感はすごくあった」と内野慎一郎監督がいうように、相手の意図的な守備によって右からの展開が多くなり、ストロングである左SHの10番松原史季(3年)を使う回数は相対的に少なかった。限定された守備の中で抜こうとするものの抜ききれず、バックパスという形が増え、なかなか攻撃で好循環を生めていなかった。

武南はHT明けからキープ力のあるFW文元一稀(3年)、左SBに俊足の飯野健太(3年)を投入。すると3分、文元のアシストからCFから左SHにポジションを移した戸上和貴(3年)が決めて同点に追いつく。20分からは飯野を一列前に上げた。その中でエースの松原が輝き。「前半からドリブルに今日はちょっとキレがあるなっていうのもあって、今日の自分は少し行けるなっていう気持ちがあった」とキレのあるドリブルで切り込み、何度もチャンスを作った。

80分で決着はつかず、勝負は延長戦へ。勝ち越し弾が生まれたのは延長後半2分だ。武南はゴール前の混戦を「自分が決めて優勝したいと思っていた。(得点シーンは)もうゴールしか見えていなかった」という文元が左足を振り抜いて貴重な逆転ゴール。さらにその2分後には松原の浮きスルーパスに快速を誇るFW大豆生田光(3年)が抜け出してゲットし、勝負を決めた。

内野監督は選手たちの順応性を評価する。「最初から最後まで圧倒したゲームもあるけど、圧倒できなかったゲームや全然何もハマらなかったゲームというのはどこのチームにもあると思う。その高低差をなくしたい。このチームにはこうやって必然的に淘汰されていくようなサッカーを、こうやってきたらこうやるよという、順応力というのは絶対に必要だと思う。それはこの子たちがすごくゲームの中で解決できるようなことっていうのは長けているのかなと思います」。

「自分たちがゲームを進めていく中で何が足りなくて、何が必要で、それでどうやってゲームを進めていくか」。練習の中でもドリブル、ディフェンスと分けず、ひとつのトレーニングの中に攻撃も守備も交えた形で行い、その中で判断力や応用力を養っている。また、この試合では5人と交代枠をフルで使い、そのたびにポジションチェンジを繰り返しながら相手の機能不全を誘発した中でチームとしては最後まで破綻せず、逆にパワーアップし中盤以降の逆転劇に繋げた。

「これがやっぱりいま上でいる、昌平さんとか、西武台さんとか、そういうところにどれだけできるかっていうのは、このサッカーでチャレンジしたいなとは。その中でもちろん負けることもあると思うんですけど、考えながらチャレンジしていきたいなと思っています」(内野監督)

選手の順応力を生かしたサッカーで昌平や西武台を下し、久々の全国を目指すために。関東大会は良い経験の場となる。主将のGK前島拓実(3年)は「自分たちがどれくらいやれるか試したいところでもありますし、それがインハイ、選手権に繋がっていくと思う。まずは関東でどんな相手にもしっかり武南のサッカーをして、いろいろな人に良い報告ができたら」と力を込めた。

石黒登(取材・文)

試合結果

武南 3-1 埼玉平成
0(前半)1
1(後半)0
0(延前)0
2(延後)0