昌平ⅡがS1リーグ制覇! 自分たちと向き合い身につけた力強さ、後期は無敗で駆け抜ける

苦しいゲームも勝ち取れる、力強さと成長を示してセカンドチームが県制覇――。高円宮杯JFA U-18埼玉県S1リーグ(県1部)の最終節が4日に行われ、首位・昌平Ⅱは先制を許すも、2-1と市立浦和に逆転勝ち。この結果、勝ち点を「37」まで伸ばし、自力での優勝を飾った。

先制したのは市立浦和だった。立ち上がりから全体で連動してスライドしながら守備ではめ込み、MF八木下岬(3年)が推進力の高いドリブルで運び出し、そこからのチャンス創出を狙う。すると前半7分、八木下のクロスを10番のFW林隆希(3年)が右足ボレーで決めて先制した。

一方、前節・正智深谷との首位攻防戦を制し、首位に立った昌平Ⅱは引き分け以上でほぼ優勝を手にできる状況だったが、序盤は「自分たちがやりたいサッカーというところに走りすぎていたのかなと」と日野口廉コーチがいうように、タイトルがかかった一戦という緊張感からか、判断の部分や攻撃のバリエーションがやや単調になるなど、難しい立ち上がりとなってしまった。

それでも「全部が全部、自分たちが先制できるわけではないので、先制されても焦らず、落ち着いていけた」(田尻匡平主将)。中盤の5枚が連動してポジションを入れ替えながら、相手のスライドに対しても駆け引きを入れたりしながら徐々に押し込んでいく。すると40分、エリア左でボールを受けたFW平叶大(2年)が右足を振り抜き、前半のうちに追いつくことに成功した。

「交代選手もそうですけど、やっぱり後半に流れを持ってこられるというのは前期、後期を通して、セカンドも成長しているポイント」(日野口コーチ)。後半途中からは前節決勝点を挙げたFW伊藤風河(3年)、U-16日本代表候補MF鈴木宏幸(1年)、MF中野立望(3年)を投入。そして27分、伊藤のポストプレーから田尻匡がエリア内で仕掛けると相手のファールを誘いPKに。これをFW上野旭陽(3年)が冷静に沈め、逆転した。終盤もDF甲斐田陽大(3年)、中野、MF西嶋大翔(3年)が決定機を作るなど、2-1の逆転勝利で自力での優勝を飾った。

「こういう難しいゲームを勝ち取れるようになったのは前期から本当に強くなっている」(田尻)。

昌平Ⅱは前期、開幕3節を2勝1分と良い入りを見せたが、4節以降は武蔵越生、武南に連敗するなど8節まで勝ち星なし(3敗2分)。田尻も「あの時は本当に苦しかったですし、試合をやっていてもまとまっていないというか、自分たちの中でも得点の匂いがしなかった」と振り返る。

それでも夏場の成長がチームを変えた。昌平Ⅱを率いる日野口コーチは「いろんな選手を前期で試す中で夏休みの1か月半ぐらいの期間で、チーム中で僕たちの声を聞くだけじゃなくて、ちゃんとピッチ内で勝つためにどうしたらいいかと考える選手が生まれたかなと思います」と話す。

前期最後の市立浦和戦で勝利すると、後期は8戦無敗(7勝1分)で切り抜け、タイトル。田尻も「あの期間は本当に勝ちもなかったですけど、でもあの期間があったからこそ、自分たちに目を向けられて、弱点もわかったのかなと思います」とし「本当に夏場から自分たちの意識が、守備の強度だったり、攻撃の距離感とかそういうところも変わりましたし、全員がゴールに向かうというか、怖さを見せるっていうところができていたので、それが優勝に繋がったのかなと思います」というように、自分たちに目を向け続けた夏場の成長がターニングポイントとなった。

これでプリンス関東2部参入戦への出場権を獲得。17日から始まるトーナメントで2つ勝てば参入が決まる。指揮官は「本当に大切なのはそこ。入れ替え戦に向けて良い準備をする」とした。

「苦しい戦いになるかもしれないですけど、でもそこで引いていたりしたら自分たちらしくない。昌平のサッカーを参入戦でも体現して、思い切ってプレーしてプリンスにあげたい」と田尻。そして「自分たちの結果とかプレーがスタメン組を脅かすことで、チームの相乗効果に繋がってくると思いますし、自分たちの立ち位置っていうのは本当にチームにとっても大事だと思う。スタメンを食ってやるというか、そういうところを練習からどんどん出していきたい」と語った。

同日にプリンスリーグ関東1部を優勝し、プレミアリーグプレーオフに臨むトップチームとのW昇格がかかる参入戦で勝つことはもちろん、ひとりでも多くの選手を上に送り出すことがセカンドのひとつのテーマ。それぞれがそこに強い想いを持ちながら、プリンス参入を成し遂げる。

石黒登(取材・文)

試合結果

市立浦和 1-2 昌平Ⅱ
1(前半)1
0(後半)1