40周年を迎えた浦和東高 4度目のW杯出場に臨む川島永嗣も胸に刻む「浦東魂」を未来へ

40年の区切りを超えて、さらにまた先の10年へ――。選手権出場5回、インターハイ出場8回を数え、卒業生にはカタールW杯で自身4度目のW杯に臨む日本代表GK川島永嗣、DFンドカ・ボニフェイス、先日引退を発表したDF菊地光将など、多数のJリーグ選手がいる浦和東高が今年40周年を迎え10月30日、その記念式典が埼玉スタジアム2002を貸し切って行われた。

式典では川島もビデオ出演し「この度は浦和東高校創立40周年誠におめでとうございます。実は僕ももうすぐ40歳ということで、ここまで浦和東高校と縁があるとは思ってもいませんでした。確かな人間、教養を育み、自己の探究と実現ができるように、これからもたくさんの生徒さんの夢と共に素晴らしい歴史を築いていってくれることを願っています」とコメントを寄せた。

式典後は地元小中学生のPKによる始球式を挟み、浦和東と浦和南による招待試合が行われた。浦和東で1992年から24年間に渡り監督を勤め上げ、強豪校に育てた野崎正治監督の縁から実現したスペシャルマッチでは、埼玉県出身の中村太プロフェッショナルレフェリーが主審として笛を吹き、県高校サッカー中継でお馴染みの上野晃アナウンサーが前半の会場実況を務めた。

浦和東は主将のDF若原凜跳やFW石川幸稀、浦和南はFW立沢太郎やMF伊藤北斗といったレギュラー組の3年生たちが先発。後半はカードを切りながら、多くの選手がピッチに立った。

また、後半はバトン部、吹奏楽部、サッカー部員による鳴り物応援や声出し応援も解禁された。今年の代はコロナの影響を直に受け、3年間声出し応援などが受けられなかった代。中学の時にスタジアムで浦和東の大応援団を見て「応援すげえなと思って。もうむしろ応援したいっていう気持ちで入ってきて、そういう憧れだった」と話す若原は「この中でサッカーできてよかったですし、本当に楽しかった。もう雰囲気が全然違いますし、力がもう湧き出てくる感じがありました」と感慨深げに語った。なお、試合は両チーム譲らず、0-0のスコアレスドローに終わった。

式典を終え、平尾信之監督は「選手権で負けて、ここに連れていってあげられなかったなとか、そういう想いを感じながら、でもこの40周年にこうやって埼玉スタジアムで式典とサッカーの試合を一緒にやろうと言ってくれた学校関係者の理解もあってできたので、その辺りは本当に感謝しつつ、でもこの先また50周年に向けて、どういう学校を作っていかなきゃいけないのかなと、もういろんな想いを巡らせながら試合を見ていた」と、さまざまな想いがあったと明かす。

「その辺も含めて、今回野﨑先生を招待させていただいた。浦東の伝統とか、そういうのを絶やしちゃいけないというのを、もう1回ここでみんなで共有したかった。あのように横断幕が出て、吹奏楽があって、バトン部があって、サッカー部が一生懸命声を出して応援してというのがずっとここのところコロナでできなかった。だから40周年記念式典でああいうことをやって、もう1回学校がちょっとでも元気になればとか、子供たちがまとまるきっかけになればいいなと」。

浦和東としての伝統、それは「浦東(うらとん)魂」だ。「浦和東らしさ」とも表現される言葉で、「ゴール前や球際、ヘディング、勝負の際になってくる最後決める、決めさせない、ボール奪う、その辺の強さ、厳しさっていうのは、普段からこだわってやってきています」(若原)。

部室の壁には川島の書いた「浦東魂ここにあり」という言葉がいまも刻まれている。また、歴代のキャプテンもそれぞれの想いを残しており、若原は「自分たちは会ったりすることはあまりないんですけど、そういう偉大な先輩たちがここで過ごしてきたんだなというのを感じて、自分たちもそういう想いとか、意思を受け継いでいかなきゃいけないんだなというのは感じた」と話す。

現役時代に野崎監督の薫陶を受け、OBとして初めて指揮官となった平尾監督は「(この伝統を)また次のOBたちに繋いでいかなきゃいけないというところは、僕の一番の役目というか最低限の仕事だと思う。次に誰が来るかはわからないですけど、次にバトンタッチする浦和東のOBの先生に、ちゃんと浦東魂を引き継ぐっていうところはしっかりやりたいと思います」と語る。

その魂を浦和東に植え付けた野崎監督は「(浦和東には)20何年いて、本当にいろんな思い出がよみがえってきましたけど、でもこうやって継承するものがいて、大変嬉しいですし、非常にありがたい。南高の血を持っていったようなもので、血を分けた親子みたいなもの」とし、「公立高校が厳しい中で、やっぱり浦和って名前で皆さんも応援してくれる部分もいっぱいあると思うので、少しでも食いつけるように、両校で切磋琢磨しながら、公立高校を盛り上げたい」と話した。

川島ら先輩たちが繋いできた「浦東魂」を胸に、浦和東はまたこれから先の10年も戦い続ける。

石黒登(取材・文)