津久井離脱のアクシデントも…、守備陣奮闘の昌平が大津との激闘を制し2018年以来の4強! 準決勝は渇きを覚える攻撃陣に期待
アクシデントを乗り越え、4年ぶり3度目の4強へー。令和4年度全国高校総体(インターハイ)男子サッカー競技は28日に準々決勝を行い、埼玉県代表の昌平は熊本の大津に1-0で勝利し、2018年以来の4強進出を決めた。29日の準決勝では初の決勝をかけ、帝京(東京)と対戦する。
昌平にとってアクシデントが訪れたのは前半13分。左CKに飛び込んだDF津久井佳祐(3年)主将が右の足首を負傷。津久井は苦悶の表情を浮かべ立ち上がれず。そのまま緊急搬送された。
津久井は今大会、藤島崇之監督がベストプレーヤーに挙げていた選手。1回戦の生駒戦では初戦で固くなるチームを後ろから支え、自らもヘディングでゴールもマーク。星稜戦でも相手の10番とのマッチアップを常に制し続けるなど、精神面、プレー面ともチームに中心的存在だった。
そんな選手の早々の離脱。チームに衝撃が走ったのは想像に難しくない。MF篠田翼(3年)は「圭祐は本当に守備がすごくて、チームのみんなも絶対的な信頼を持っていた。みんな切り替えて、切り替えてと言っていたんですけど、正直みんなちょっと落ちていた部分もあった」という。
そういった展開だっただけに、クーリングブレイク直後の先制点はチームに勇気を与えるうえでもプラスに働いた。前半23分、MF土谷飛雅(2年)のFKを津久井から腕章を預かったMF佐藤海空斗(3年)が競りに行く。するとこのプレーが相手のオウンゴールを誘い先制した。
後半に入り、昌平はMF大谷湊斗(1年)を投入し、MF長準喜(2年)をボランチにスイッチ。前半はボールロストが多く、サポートが遅かったこともあって、なかなか攻撃の形を作れなかっただけにボールを持てる長を中盤底に入れて切り替えを図る。立ち上がりはその効果が現れるシーンもあったが、相手の圧力に徐々に引いてしまい、中盤が間延びした状態に。後半はセットプレーやアーリークロスから迫る大津のダイナミックなサッカーに押し込まれる形となった。
それでもこの日は守備陣が奮闘した。「相手の高さは間違いなく脅威だったので、そこの部分とその次の部分というところの大切さは彼が予測・反応も含めてしっかり対応出来たのが良かった」と指揮官が評したDF石川穂高(2年)が危険なエリアをしっかりとカバー。「身体は小さいが、サッカーセンスがある」DF佐怒賀大門(2年)も主軸CBの穴をきっちりと埋めた。
そして最後のところではGK上林真斗(3年)が立ちふさがった。相手の190cmオーバー選手たちに対し、「僕がやらなければいけないと思っていた」という守護神は187cmの体躯を生かし、強力アタッカーたちに対抗。後半15分には左からのアーリークロスを完璧な形で合わされたが、横っ飛びで掻き出すビッグセーブも見せた。藤島監督も「上林がいなかったらもっとやられている可能性があった」と守護神を讃えていた。後半はU-19日本代表候補のFW小林俊瑛(3年)を筆頭に実に9本のシュートを浴びたが、しっかりと守り切った昌平が激闘を制した。
これで針谷岳晃(現北九州)、松本泰志(現広島)を擁した2016年、原田虹輝(現長野)、当時1年生だった須藤直輝(現金沢)のいた2018年に記録したチームベストの4強に並びたてた。藤島監督は「やっぱり勝負にはこだわっていきたいですし、ステージが高くなった時にどういう経験をして、次にどういった気づきがあるかという部分を大切にしていきたいと思う」と話す。
その上で「今日は終わった後、ここに来て初めてしっかりと締めました。勝って繋がったことは良かったですけど、内容的な部分は多分彼らも満足をしている状況じゃないので、逆に言えばこの満足していない状況が次に繋がるかなと思います」とした。篠田は「今日は途中からボールをもらう回数も減ったし、持ち味が出せなかった。次の試合はもっと持ち味を出して、チームを勝たせられるようにしていきたい」と力を込めた。準決勝は渇きを覚える攻撃陣に期待したい。
石黒登(取材・文)
試合結果
大津 0-1 昌平
0(前半)1
0(後半)0