高校女子サッカー埼玉県選手権大会 埼玉平成 vs 南稜
女子選手権予選決勝リーグ3日目。第2試合は南稜高校と埼玉平成高校が対戦した。試合は前半3分に埼玉平成が先制するも、南稜は2年生FW西田ゆうこのハットトリックの活躍もあり、4ー2で勝利。この結果、最終成績は3位南稜、4位に埼玉平成ということとなった。
決勝リーグ初勝利を目指す両校の一戦は早々にゲームが動いた。前半3分、南稜のプレスが一瞬甘くなったところを見逃さず、埼玉平成MF碇谷海景がペナルティーエリア外からミドルシュート。ボールはキーパーの頭上を越えてゴールに突き刺さり、埼玉平成が先制に成功した。
いきなりのビハインドを背負った南稜だが、「まだ3分。ボール回しも優位に立てていたので、落ち着いていこうと声をかけた」(MF中川真理子主将)。焦らずに自分たちのペースに戻していくと、前半12分に西田がフリーキックを直接蹴り込んで試合を振り出しに戻した。
その後もボールに対して人数をかけながら、グラウンダーのパスを繋いで相手を崩しにかかる南稜。前半23分には「ゴールが見えたら打つことを考えていた」という西田がカットインから、相手守備の逆をついて最後はゴール左隅に決めて逆転。その7分後にはMF高野未羽の右クロスを西田が競って後ろに流すと、「序盤は積極性が足りなかった。ゴールに向かう動きを意識した」左サイドハーフの1年生・佐藤捺美が冷静にキーパーとの1対1を沈めた。
しかし直後の前半32分、埼玉平成は後方からのロングボールにDF細田美菜稀が抜け出すと、ゴール前で倒されてこれがPKに。この機会を細田が右隅に決めて再び1点差に戻した。
南稜にとっては予期しない形での失点。1点リードで試合を折り返したが、「チームの士気的にも下がってしまったところもあった」と中川主将。ハーフタイムには「1点を守る気持ちではなく、1点を取って突き放すという気持ちで常に攻撃的なサッカーを展開しよう」(南稜・桒山秀家監督)と、同校らしい攻撃スタイルを後半も貫いていくことを確認しあった。
後半は運動量の低下や1点差のプレッシャーの中でプレー精度を欠いた場面もあったが、チーム3点目を奪った佐藤、後半途中出場の石田ひかるらが積極的に仕掛けていくと最後に決めたのはやはり頼れるエース。後半29分、ゴール前でボールを受けた西田はキーパーとの1対1を制してハットトリックを達成。これが決め手となり、4ー2で南稜が埼玉平成を下した。
ベスト4に残った4校のうち公立校は南稜1校のみ。「公立高校でも勝てるということを示したかった」と桒山監督。「先制点を取られた後、しっかりと取り返して、その後もなんとかきっちりゲームを作って勝ちきれたことは今後に向けて大きな収穫」と試合を振り返った。
チームはここ最近「決め切る」部分で課題を抱えていたというが、この日は9番の西田が3ゴール、1アシストとすべての得点に関わる活躍を見せた。指揮官は「決勝リーグ1、2試合目もこのプレーができたら……」と悔いも見せたが、それと同時に「これが続くとすれば、この一戦は選手にとって一皮剥けるきっかけになりうる」とエースの進化に期待を寄せる。
フリーキックにカットイン、ストライカーらしいエリア内でのプレーと得点パターンも多彩で、足元の技術も高いものを持っている。まだひとつひとつの精度や体力面で課題があるというものの、これを機に大きく羽ばたく可能性を秘める2年生FWは秋季大会でも注目だ。
トーナメントは10月28日に開幕。関東でも南稜らしい攻撃サッカーを変えるつもりはない。「強豪・東京勢らと四つに組んだ時にどこまでできるのか」(桒山監督)。主将の中川は「目標としてはやっぱり優勝。埼玉県予選は3位だったが、本関東にも出られる力があったというところを示したい」と力強く語った。勝って関東、そして全国に南稜の名前を響かせる。
石黒登(取材・文)
試合結果
埼玉平成 2-4 南稜
2(前半)3
0(後半)1