11年ぶりの選手権、初戦の相手は三重に決定。西武台原田主将は「感謝」を持って大会に臨む/組み合わせ発表記者会見全文レポート

全国高校サッカー選手権大会の組み合わせ抽選会が15日に行われ、埼玉県代表の西武台高校(11年ぶり4回目)は1回戦で三重高校(三重県代表)と対戦することが決定。同日の合同記者会見には守屋保監督、原田蓮斗主将が出席し、意気込みなどを語った。以下は一問一答。

―三重の印象があれば。また入った山について
守屋保監督:まだ正直インターハイの試合模様ですとか、対戦もちょっと1回もしたことがないので、帰ってからしっかりともう一度動画を見て、お答え出来たらと思っております。

山を見た時に、このAブロックの山、もしくはBブロックの山、関東のチームがシードになっている方がやりやすいというか、試合の経験もあるので、そういった面ではやりがいがあるなと。逆に今回は正直青森山田さんが高校サッカーの中でちょっと抜けている。何か起こせるとしたら正直なところ、Aブロックで混戦になってくれればいいなと思って見ていました。

リハーサルの時に7番を引いて、本番でもまた同じところを引いたので面白いなと(笑)。どこが来るのかなと楽しみに待っていた瞬間に三重が来た。インターハイのベスト16でもあるチームで、私のイメージの中からすると四日市中央工業ですとか海星高校というのが知っている範囲で、三重高校の情報がまったくないというのが現状です。

―群馬県代表や関東大会で戦った山梨学院、東福岡、大津と強豪も入っているが
守屋:前橋育英、もしくは桐生第一が入って来たところは、ちょっと厳しいなというのは正直なところはあります。ただ知らない相手でもないので、楽しみにしているというか、対戦出来るように1戦目をしっかりと乗り越えていきたいといまは考えているところです。

原田蓮斗主将:対戦相手を見て、大津だったり東福岡だったり、強豪校がたくさんいるというところなんですけど、相手というよりは自分たちがやるかやらないかで変わってくると思うし、まずは三重をしっかりチャレンジャーの気持ちで戦って、ひとつひとつ勝ち上がっていけばまた優勝も見えてくると思う。一個一個しっかりと戦っていきたいです。

―優勝から一夜明けて
守屋:まずは高校の指導者になって、100回大会という区切りのところまで指導者としてサッカーに携われたらいいなというふうには思っておりました。そういう流れの中で100回という大会が見え始めて来て、11年出ていなかったところから景色が遠くも感じていました。でもこのいまの3年生が入学する時、この子たちに「一緒に100回大会を目指そう」という言葉がけは日ごろから毎日のようにしていた。試合があれば100回大会を目指すためにこういうのが必要だ、100回大会のためには毎日の練習が大切だと、1日が大切だというところから本当に一緒にやっていく中で徐々に「これは取れるんじゃないかな」というのを感じたのは彼らが関東大会を優勝したあたりから。けが人も多く出たんですけど、全部揃えれば埼玉を取れるんじゃないかなという自信みたいなものは自分の中に湧き出して来たというのは正直ありました。

原田:正直いまはあまり実感はわかないんですけど、支えてもらった家族だったり、守屋先生だったり、スタッフ一同に恩返しが出来たかなと思う。ですけど、まだまだここがスタートラインだと思うし、ここからがさらなる恩返しというか、そういう場だと思うので、まだまだ全国大会で頑張っていきたいと思います。

―11年ぶりの優勝を決めての周囲の反応は
守屋:実際に2年間コロナの影響で遠征も他県のチームと試合が出来ていない、そんな中でいろいろなところでお世話になった方々から、帰って携帯を開いてみたらショートメールだけで50件以上入っていて、それを返すのに昨日は疲れたというのが実感です(笑)。それだけ「おめでとう」と言っていただけて、本当に幸せだなという実感と、徐々に本当に選手権に出るんだなという意気込みと、いろいろな面で「ありがとう」をどうやって表現するべきなのかなという気持ちにさせていただきました。

東福岡、帝京大五を率いた九州の平(清孝)先生ですとか、国士館大学の大澤(英雄)先生ですとか、各大学の先生からもメールをいただいた。あとは卒業生でJリーガーになっている河合(竜二)ですとか、島田(裕介)ですとか、そんな子たちから「先生やっとですね」「長かったですね」と。そんなに長かったかな(笑)と思いながらメールを昨日返していました。

(そういった中で)いままでは「俺がやってやるぞ」という返信だったんです。でも今回は「時間があったら後輩たちの練習を身に来い」と、「お前らに手伝ってほしい」というメールが結構多くしました。大学に行ってプレーしている、いま現役でやっている、Jでスカウトをやっていたりですとか、広報活動をやっていたりする卒業生に、「時間が空いた時に全国に出る後輩たちの指導をしに来てもらえたら嬉しい」というようなメールは返しました。それがちょっといままでとは違うというところです。

原田:やっぱり自分たちだけじゃここまで来られなかったと思うし、自分も結構メールとか来たんですけど、改めて支えられているなという感じはしました。先輩だったり、中学の頃の友達だったり、あとはクラブチームの監督だったり、少年団の監督、みんながメールをしてくれて支えられているなと改めて実感しました。

西武台の先輩では伊佐山縁心くんとか岡崎大志郎くん、2個上だとは蓮沼京裕さんとか西岡健二くんに、まず「おめでとう」というのと「ご飯行くぞ」(笑)と。

―残り1か月半はどのようにチームを仕上げて大会に臨むか
守屋:やっと選手が練習出来る状態に揃ったというのが正直なところ。ここから新たにもう一度みんなでチームを作っていきたい、この1か月に切り替えたいなと思っております。レギュラーのいまのポジションも完全ではなく、また新たに揃った中でベストな状態というのをシステムに関しても、組み合わせに関しても、もう一度じっくりと、しっかりと、子供たちとスタッフと話し合いながら、全国の場にふさわしいチームに仕上げていきたいと思っています。

原田:やっぱり関東大会に優勝した後、インターハイ予選が始まった時に、優勝した流れで行ってしまったり、怖さを知らずに臨んでしまって、ああいう結果になってしまった。この埼玉県予選を優勝したというのをスタートラインにして、全員でもっといままで以上にやっていかないと全国大会というのは厳しい戦いだと思うので、自分をはじめ、全員で気を引き締めて残りの1か月ちょっとを頑張っていきたいと思います。

(その中で)リーグ戦もプリンスリーグ昇格がかかっていますし、(昇格戦に進めば)全国大会に向けての良い意味で試せる場になると思う。コロナ禍でほかの県とかと練習試合などが出来ない中で大事な試合になると思うので、1試合1試合しっかり大事にしていきたいです。

守屋:この後のリーグ戦も連戦ですし、プリンスの参入戦に参加出来ればそこも連戦になる。ですからその体力ですとか、精神的なタフさ。特に体力より、やはりモチベーションをどうやって作っていくかというところの方が今回は大事なのかなと思っています。身体の部分より精神的なタフさを彼らに身に着けてもらいたいなと。その辺をしっかりと対応出来るようにちょっと伝えていきたいと思っています。

今日もここに来る時に原田に「お疲れさん」と言ったら、こうやって聞かれるのに慣れていないので試合が終わった後から疲れちゃってと。家に帰ったら立っていられなくて寝ましたと(笑)。そういう試合以上のプレッシャーというのがやっぱりかかってくると思いますし、それがうちの子たちは経験としてないもので、そういうところも成長のひとつ。それがすごい私としても高校サッカーの良いところかなと思っていて、取り上げてもらえる良さ、大人から質問されて答えるそのひとつひとつの言葉も友達同士と話をしているわけではなく考えて話をしていると思うので、多分疲れると思うんですね。そういうのもこれからはもっともっと成長させていきたいし、日常の中でひとりひとりに会話をさせたり、ミーティングもひとりで仕切ってやらせるとか、そういうのもみんなでやっていけたらなと思っています。

練習だけではなく、いろいろな面で人間として成長してもらう。それが出来てくると高校サッカーってやっぱり勝つなというのが正直感じます。そこが成長してこないといくら走らせても、いくらボールをたくさん蹴らせて練習しても、なかなか勝てないというのがやっぱりある。うまいチームだとかテクニックのあるチームが勝つというわけじゃない。

(選手権は)埼玉県が会場でずっと準決勝、決勝をやっていますので、我々はそれを横目で出場出来ない時は見ていて、そうするとやっぱり優勝してくるチームというのはインタビューでも、高校生がこんな立派な会話が出来るようになってくるんだ、受け答えが出来るようになってくるんだと。やっぱり勝つチームというのはスタンドに入ってくる姿から違っているので、そういったところも教えていきたいというところが一番大事なのかと思います。だらしないのは1回戦で負けていきますし、やっぱりそれが弱さだと思いますし、歩く姿勢ひとつで彼らが変わってくれたらなというところが高校サッカーの良いところじゃないかなと思います。

―今年のチームのストロングポイントは
守屋:ストロングポイントとしては今年、個々の能力というものに関しては、ある程度のレベルにあるなと自分でも感じております。そこのところを逃げずに今年は勝負させた。パワフルなチームに対してパワフルで負けるなと、技術のあるチームに対して技術で負けるなというところを逃げずに練習していこうというような取り組みでずっと来ています。

埼玉県代表になった中でいろいろなチームと対戦させていただいて、一番技術のある昌平と対戦出来なかったことが非常に今年の1年間の中で残念なところではあったんですけど、そういったところはやっぱり出来る限りそれに近づけていけるようなサッカーをしたいし、逆に成徳深谷ですとか浦和南みたいなパワフルで対人プレーで絶対に譲らないというチームに対しても勝負を挑んでいったつもりであります。

「西武台は蹴られるチームに弱いね」といままで言われて来たんですけど、そこを本当に逃げずにやろうというところで、華麗なサッカーをやりたいというものがあったんですけど、子供たちともいろいろ話をして、サッカーで何が必要なのかということを考えて、自分たちで判断をしようというところで、繋ぐところは繋ぐ、蹴るところは蹴る、スピードアップするところはスピードアップする、ゆっくりやるところはゆっくりやる、ロングスローで相手が来たらロングスローで返してやる、というように本当に「戦う」というところで「真剣勝負」だと予選の時から話をしていました。

竹刀を持って防具をつけて、じゃあ真剣勝負になるかと彼らに言いました。防具があるから安心するよね、ルールがあるから安心するよねと。何も防具もなくて、本当に裸で木刀を持って勝負した時にお前らどれだけ真剣になると。その真剣さが必要だと。そこから成長があると。何かに守られていると自分たちで思ったら成長はないというような話も彼らに伝えてきました。そういう大会のスタートというところで、もう一度真剣勝負が出来る準備を整えていきたいと思っています。

正直なところその真剣勝負で弱かったというのが西武台のいままでの弱さだと思います。そこをよく彼らは克服してくれた。うまいことをやって、良いサッカーをやりたいというところの部分が良さでもあったんですけど、実際に嫌なところの部分で真剣勝負が甘かったというのがここ2年の結果で、準決勝で負ける、彼らが1年の時は決勝で負けるという結果だったと思います。

―11年前のベスト8、フクアリの戦いの記憶について
守屋:あの時はPKで負けて、やっぱり正直なところ、決めよう、決めようという心が強かった。勝負事なのである程度どこを狙うというところで、天然芝で練習はやってないのでやっぱり正直なところ高校生がPKで上を狙うというのは難しいんですよ。やっぱりそれがいうことを聞かなかったと。踏み込み足を5cmでも前に持って行って、低いボールをしっかり蹴り込む度胸が出ず、どうしても置きに行ってしまったと。やっぱり真剣勝負の中での甘さというのは感じました。そこからずっとそれを感じながら、もうひとつ何かといった時の気持ちの強さというんですかね。技術を生かすのにも、その強さがない限りブレてしまったりというのもあると思う。またそういった場面までに彼らが勝ち残っていけば、その時のことを伝えたり、彼らにそこまで戦えるような環境作りはしていきたいと思っています。

本当にあの子たち(第89回世代)もウォーミングアップから日本一になろうという言葉をよくかけていて、やっぱりそういったものというのはチームのひとつの方向性としては必要なんだなというのはあります。あの子たちがやっぱりいままで自分が見た中でもウォーミングアップが一番早くて、一番気合いが入っていた。やっぱりいま見ているとウォーミングアップひとつの姿勢をとっても青森山田が日本一ですよね。高校生というのはひとつにまとまってみんなが同じ方向に行くとどれだけ伸びるのかなという楽しみもあると思いますので、そういったところももう一度それを超えられるように頑張らせたいと思います。

―選手権への意気込み
守屋:本当に一戦一戦全力で戦える準備をしていきたい。その先にひとつひとつが国立という場所が見えるところまでたどり着けるように、何しろ全力で、みんなで考えながら戦いをどういうふうにしていくのか、自分たちの良さがなんなのか、自分たちにないものはなんなのか、すべて探ってひとつにしていきたいと思っています。

原田:これから先の戦いは西武台の代表だけではなく、埼玉の代表として戦うので、埼玉代表として恥じないプレーだったりをしていきたい。まずは初戦なんですけど、西武台の歴史を塗り替えるためにベスト4という壁を破って、行けるところまでいきたいです。

―全国の人に西武台のここを見てほしいというのは
原田:チームワークだったりとか、全員攻撃・全員守備だったり、ショートパスとロングパスをうまく使い分けながら攻撃するというところを見てほしいです。

石黒登(取材・文)