昌平・鎌田大夢 福島ユナイテッドFC加入内定会見全文レポート


27日、昌平高校にて来季よりJ3福島ユナイテッドFCに加入が内定した鎌田大夢選手の入団記者会見が行われた。第1弾となる今回は記者会見の全文をお届け。第2弾では会見が終わったばかりの鎌田選手に「プロ入り後の展望」「選手権への想い」など、より細かい話を訊いた。

昌平高校・城川雅士校長

この度、鎌田くんのJリーグ入りということで、本校の卒業生では松本(泰志/広島)くん、針谷(岳晃/磐田)くん、佐相(壱明/大宮)くん、原田(虹輝/川崎)くんに次いで5人目となります。このような檜舞台に本校の卒業生が活躍できる機会を与えていただきましたことに、まず感謝申し上げます。そしてここまで鎌田くんを育ててこられたご家族の方、また小学校の指導者、中学校年代の指導者、そしていまこの昌平高等学校でも彼の活躍、また活動を様々な方面からご支援いただいております近隣の方をはじめ多くの方々に本当に敬意を表すとともに、彼がそういった舞台で活躍できることを本当に嬉しく思っております。

普段の学校生活を見ている担任の先生の方に「鎌田くんは日常どんな子ですか?」といろいろ話を聞くと、第一声は「口数がすくない」と(笑)。今日記者会見ということで「大丈夫かな」と、そんなことも冗談まじりに言っておりましたけど、ただ口数は少ないんですけども芯がものすごくしっかりしていて、やるべきことはやると。勉強なんかの面でも遅くまで自主的に残ってしっかり勉強している時もあり、そういった意味では周りからの信頼も厚いということですので、きっとそういった言葉にはなかなか出さなくても、きっとプロの世界に入っても活躍できる、そういうような秘めたものというのを間違いなく持っていると、そういうふうに期待しています。

鎌田くんはこれから巣立っていき、我々としては本当にぜひ日本代表まで登り詰めてくれと、そんな想いで見て、応援しています。またこの場を借りてサッカー部をはじめ、本校を普段いろいろな形で応援をいただいている多くの方々に引き続き、ぜひ鎌田くんの応援もお願いするという言葉を最後に少し付け加えまして、私からの挨拶とさせていただきたいと思います。

福島ユナイテッドFC・竹鼻快GM

我々のクラブは震災の後からちょうど地域リーグ、そしてJFL、J3と上がってきたクラブではあるんですけども、残念ながら福島県にJ2の開催基準を満たすスタジアムがないというクラブです。いまいろいろなところでスタジアムを作ってという形になるんですけど、まだまだ福島県も復興半ばで、なかなかスタジアムをドーンというのもそうそう簡単なことじゃないという中で、じゃあどういうふうなクラブを作っていこうかと、上がれない中でどうやろうかというところで、ひとつ大きなミッションとして掲げているのが人材育成、要は「ステップアップクラブ」っていう言い方を我々はしています。福島で活躍をしてもらって、J2、J1、そして日本代表にステップアップしていく選手をクラブとして作ること、それがまたクラブの価値の向上になるということで、ちょっと特徴を持った形でやらせてもらっています。なので選手はどちらかというと新卒の、可能性のある子というのが中心で、その分、グラウンドや食事、あとは寮であるとか、育つ環境の方に少しずつ投資をしてきたというようなクラブです。

鎌田くんは若いですし、うちの環境を使ってもらってJ3からJ2、J1、また日本代表というところまで視野に入れて、福島から世界に飛び立つ選手になってもらえればなと思っています。

選手の評価というのは隣にいる牛島からお話をさせていただければと思うんですけど、我々の特徴のひとつで、牛島は正確にいうと福島ユナイテッドの人間ではなくて、湘南ベルマーレのスカウトです。我々は湘南ベルマーレと福島ユナイテッドでJリーグ同士で唯一提携を2013年からしていまして、2つのクラブでいろいろスケールメリットを持ってやっていこうということで、その中のひとつでチーム作りというところでスカウトに関してもベルマーレとユナイテッドで一緒に手分けをしてよりたくさんの選手を見て、優秀な選手を獲得していくというような形を取っています。牛島は我々の中でいくと湘南ベルマーレ、福島ユナイテッドスカウトグループのリーダーという形になるんですけど、そういったところから牛島の方が連れてきた選手ですので、選手の評価の件は牛島の方にバトンを渡したいと思います。

湘南ベルマーレ・牛島真諭強化担当兼スカウト

大夢に初めて会ったのは中3の時でした。まぁ無口で何を考えているんだろうと(苦笑)、いうのが率直な印象です。ただその時にプレーを見させていただいて、非常に攻撃のところでアイディアを持っていて、ゴールに向かうところだったり、ラストパスで変化をつけられて、チームをより勢いづけることができるようなプレーが非常に多く、中学校3年生ながら面白い選手だなというのが印象に残っております。

いまも線が細いんですけど、その時から高校3年間で身体もそうなんですけども、頭の方も含めて学校生活でしっかり鍛えてもらえればJリーグに行けるポテンシャルはあるなというのはずっと思っていて、いろいろ2年間はあったと聞いていますが、3年間追いかけさせていただいていました。

先ほど福島ユナイテッドの竹鼻GMからありましたように、我々は一緒にスカウト活動をしている中で、正直で言うとまだ湘南ベルマーレで活躍できる力はないですけども、福島ユナイテッドで試合にしっかり出て、活躍して、ステップアップできるポテンシャルはあるというところを感じているので、まずは福島ユナイテッドの方で試合に出ることの方が彼にとって成長に繋がるのではないかというところで、今回は福島ユナイテッドに紹介をしたという流れです。夏に練習参加して、松田監督をはじめ、非常に評価も高く、いろいろな選手を見ていく中でも大夢を獲得しようということが僕らのところで決まりまして、オファーを出させていただきました。

特徴でいうと先ほど話した通りなんですけれども、一番はゴールに結びつくプレーができる、アイディアを持って、その中で良い判断で、周りの選手がプレーしやすい環境を作れるというところが非常に彼の特徴だと思うので、福島の中でも攻撃のタスクを多く握って、プレーしていただければいいかなと思っております。

昌平高校・藤島崇之監督

いま牛島さんの方からいろいろと紹介をしていただいたので、また私もそれにプラスしたところでお話をさせていただければと思います。本当に見ての通り身体も細く、これからまた課題としてそういった強さというのはつけていけていかなければいけないというところはありますけども、ただ、いままではその局面で、単純に細さで負けていた部分が負けない状況にもなってきていますし、技術的な部分、戦術的な部分の理解度も高いです。技術の部分に関して言えばゲームの中で「しっかりと生きる技術」を持っているという状況です。ただ足元の技術がうまいだけではなくて、ゲームで実践できる技術の高さといいますか、試合の中でゴールを奪うための戦術的な部分でいうと、例えばスルーパスの精度の高さや「ここに出すの!?」というところが、彼のひとつの大きな特徴なのかなというふうに思っています。

2年間なかなかうまくいかなかったという状況も正直ありました。3年になって試合に関わる時間が来たなと思ったことろでちょっと怪我をして、慢性的な痛みなので、我々はコントロールする状況の中で「できるか?」って言えば「絶対にできます!」と。できると言いながら多分痛みは抱えているんだろうなというところで、こちらもコントロールしながらやってきましたけれども、いまはもうチームには絶対的に欠かせない存在になっています。もちろん選手権の予選優勝に大きく貢献してくれましたし、一昨日はプリンスリーグ関東の方の参入を決めました。

そんな中でゲームのコントロール、ゴールに向かう状況を含め、相手が嫌なところをつくプレーというところに関して言えば、相手の驚異になる状況もあったかなと思います。あとは本当にフィジカルもコンタクトで勝つというよりも、ボールを奪ううまさでボール奪取したりだとか、そういった状況では本当に良さがすごく出ていたかなというふうに思っております。

皆さんからお話が出ているように大人しいという状況で、私も本当にそれは感じているんですけども、メンタリティの部分でいうとお兄ちゃんの存在は多分大きいのかなと思います。お兄ちゃんの鎌田大地選手がいまフランクフルトの方で活躍していて、そのお兄ちゃんに負けないようにというところの気持ちの部分がプレーの部分でも出てきているところもありますし、またさらに頑張っていかなければいけないという強い意志がいまのこの成長にも繋がっているのかなというふうに思っております。

本当に伸び代は確実にあると思いますし、その伸び代を生かすも殺すも自分次第かなというところもあります。ただ本当にこの短期間での成長というのは著しいものがありますし、これから全国高校サッカー選手権大会が1月2日からまた始まりますが、そこでも彼のプレーが勝利をもたらしてくれると信じています。そのプレーひとつひとつのクオリティの部分に注目していただければ、良さという部分は見ていただけるかなと思っております。

我々ももちろんこういったプロ選手が出てきてくれればまた良い形で、下の後輩の世代も一生懸命頑張るという目標にもなってくると思います。本当にそういった意味でこれからの活躍に期待していますし、本人にもお兄ちゃんに追いつくという、大きな、明確な目標があると思いますので、ぜひ注目いただければと思います。

昌平高校・鎌田大夢選手

小さい頃からの夢であったプロサッカー選手になれて大変嬉しく思います。先ほども紹介があったように兄がドイツで頑張っているんですけど、その兄に追いつけるように福島では日々のトレーニングに全力で取り組んで、少しでも早く試合に出場して、チームに貢献できるように頑張っていきたいと思います。

質疑応答

―鎌田選手に。福島ユナイテッドFCの印象を教えてください
福島ユナイテッドFCは一度練習参加をしたんですけど、その時に自陣地でも、相手がプレッシャーをかけてきても丁寧に繋いで、相手に合わせてプレーをするっていうところがすごい印象的で、ボールをしっかり大事にして、繋いでゴールまで行くっていうところがすごく印象に残りました。自分もボールを大事にしながら、相手に奪われないようにサッカーをやっていくスタイルが好きで、(ここに来ることで)自分の成長に繋がると思いました。

―1、2年生の頃はなかなか出番を掴めずに苦しい想いをしたが、そういう時に自分の中で支えになったものだったり、どういうものが力になったか
一度Bチームのベンチ外まで落ちたことがあるんですけど、その時には本当に悔しくて、どうしようかなと思っていた時期もありました。親に話したりして、やっぱり大地もそういう時期があって、それを乗り越えたからこそいまがあるっていう話を聞いて、自分もいまここで耐えて、その壁を乗り越えればもっと成長できるかなと思って、腐らずに、もう一度打ち込み直して頑張っていこうと思いました。

―大学4年間を経てという選択肢もあった中で高卒プロの決意を固めた理由とタイミングは
最初は大学に行ってもいいのかなと思っていたんですけど、自分の将来的な目標が海外でプレーするっていうことが、ひとつの目標だったので、海外に行くには若くないと行けないですし、そのためにはなるべく早くプロの世界に飛び込んで、海外にチャレンジできる環境にいた方がいいと思ったので挑戦することにしました。時期的には夏休みの終わりくらいです。

―改めてお兄さんの存在について
大地はすごく身近な存在なんですけど、サッカーではだいぶ上の世界といいますか、だいぶ離れてしまったなとは思うんですけど、それがひとつの目標としてサッカーを頑張れているので、憧れでもありますし、いつか絶対に超えてやろうという存在なんだと思います。大地がいるから自分もあるのかなと思っています。

―入団内定が決まってお兄さんに報告したりは
直接は言ってないですけど、ラインで家族のグループがあって、「決まりました」っていうのは伝えたら「おめでとう」と一言だけ(笑)。もともと電話とかラインとかで話したりはしないんですけど、あったら話すくらいで。結構冷たいです(笑)。

―今後ステップアップしていくために自分にいま足りないもの
やっぱりフィジカルと、5m、10mの短い距離の速さが一番足りないのかなと思います。

―牛島スカウトに。高校3年間も常に追い続けていたという形だと思うが、その中で鎌田くんがこの3年間でレベルアップしたなと一番感じた部分は
印象的なものでいうと中学校3年生で見た印象と、いま見ている印象はそんなに変わっていなくて、中学校の頃からスルーパスのセンスだったり、質というのはある程度高いレベルにあったんですけれども、やっぱり昌平に来て一番変わったのがボールに関わる回数だったり、相手がより嫌なことを選択できるようになったなというところが一番成長したんじゃないかなと思います。まだそういった部分はあるんですけど、中学校の時はボールが来たら仕事をしますよというタイプだった。昌平のサッカーにマッチしたというのもあって、よりボールに関わって、攻撃を司るプレーが多くなったのかなというところですね。あとはぶつかり合いが少ないようなボールコントロールだったり、受け方だったり、そういうのは多少なりとも工夫していると思うので、そのあたりはやっぱり昌平に来てステップアップしたかなというふうに思っています。

鎌田大夢(かまだ ひろむ)プロフィール
生年月日:2001.6.23
身長:170cm
体重:58kg
所属:(小)キッズFC→(中)JFAアカデミー福島→(高)昌平高校
ポジション:MF
主な実績:R1 高円宮杯 JFA U-18 サッカーリーグ 2019 埼玉 優勝
R1 全国高校サッカー選手権大会埼玉県予選 優勝 ※大会優秀選手選出