浦和南GK黒田海渡が最初で最後の大舞台で見せる抜群の「安定感」。ハイボールは無敗、終盤の決定機防ぎ、いまだ失点0を継続中
堅守の浦和南において、その安定感は欠かせない。まさに守護神というべきプレーを見せたGK黒田海渡(3年)は「練習でも安定感というのは常に意識して、「いつも通りで」ということを意識してやってきたので、その成果が出たかなと思います」と準々決勝のプレーを振り返った。
後半に入って対戦相手の立教新座は準々決勝の越谷西戦でもゴールに繋がるロングスローを投げたFW齋藤洋大(2年)がピッチへ。ゴールエリア中央付近にまで届く遠投に活路を見出す。
ここに立ちはだかったのが黒田だ。「アップで常にハイボールの練習はしていて、練習通りに出来たと思います」。次々と投げ入れられる相手の長距離砲に対し、キックの飛距離とともに高校3年間で伸びたというハイボール処理を披露。投げ込まれたボールはすべて黒田の両手に吸い込まれた。そのあまりにも安定したセーブに相手ベンチもGKとの勝負を避けたほどだった。
また、終盤には決定的なシュートストップ。立教新座のアタッカー、河下楽(1年)が左サイドでボールを持つと、「坪井(優太)くんが前に立っていたんですけど、ちょっと右重心になっていて、相手の26番(斎藤洋)のことが見えていなかったので、これはちょっとスルーパスが来るかなと」準備。その前の段階でもFWとの距離感を常に意識してポジションを取っていたという黒田は、中央のフリーエリアに通されたパスにも慌てず「自分の間合いを作りながら止められた。たまたまじゃなくて、自分の狙い通りだったと思います」とFWとの1対1を制した。
参考にしている選手にはノイアーやエデルソンなどの名前も挙がった中で「自分の中で一番“安定感”があって目指すべきキーパー像」として挙げたのはリヴァプールの守護神・アリソンだ。
この「安定感」というキーワードは黒田がGKをやる上で大事にしている言葉。「(野崎正治)監督からもキーパーは安定感が存在感だと。日頃から安定感というのは意識しています」という。その安定感に繋がると考えているのが普段の行動。「練習の前のストレッチとか、いろいろルーティンがあるんですけど、みんながストレッチを早めに切り上げる中で自分は長めに取っていたり、あとはグラウンドにもいつも挨拶をしたり、そういう日頃のいつもと同じ行動が安定感を生むのかなと思っています」と、日頃から崩さないルーティンが安定したセーブを生んでいる。
中学校年代は大宮アルディージャJYでプレー。ユースへの昇格は残念ながら叶わなかったが、3年前の決勝で昌平を下し17年ぶりに全国出場を飾ったのを見て名門サッカー部の門を叩いた。
1年時の選手権でメンバーに入ったが、2年時の新人戦で腰椎を故障。この年は選手権のメンバーに入ることは出来なかった。また3年生では大会前の肉離れなどもあり、関東予選、インターハイ予選を欠場。この選手権は黒田にとって高校サッカー生活最初で最後の大舞台でもある。
その大会で正守護神を務める黒田は「伝統ある浦和南のキーパーの一番手を任されるのはすごく誇らしいですし、ちゃんと責任を持ってプレーしないといけない」とその歴史をしっかりと背負ってプレーする構え。そして「やっぱり失点0でいま抑えてきているので、決勝も0で抑えたいなと思います」とした。抜群の安定感を誇る守護神が「0」で抑えて3年ぶりのVに導く。
石黒登(取材・文)