「まずは1勝」浦和西が30年ぶりのインターハイ全国大会に挑む。
1957年の全国高校選手権で優勝、翌年の同大会でも3位入賞を果たし、国体でも優勝経験を持つ古豪・浦和西高校が先月のインターハイ予選で30年ぶりに全国への扉をこじ開けた。28日から開幕する、はばたけ世界へ南東北総体2017に出場する。
今年は相手の裏に起点を作る「トーナメント仕様」のサッカーで結果を残した。ターニングポイントとなったのは新人戦・南部支部予選3回戦の対浦和学院高校戦。のちにFC東京の強化指定を受けるFW田中和樹など好タレントを揃える相手を延長戦の末2ー1で下した。
「浦学に勝てたのはすごく大きかった。自信にもなったし、あそこで延長戦できちんと勝てて、トーナメントはこれでいいんだと、そこで生徒たちも腹を括ったというか。それはすごい感じました」と浦和西・市原雄心監督。準決勝では埼玉栄高校、決勝では同地区のライバル・浦和東高校を下して支部優勝を果たすと、県大会でもベスト8に進出を果たした。
続く関東大会県予選では準決勝で優勝した昌平高校に敗れたもののベスト4。そして先月行われた全国高校総体・埼玉予選では新人戦の準々決勝で当たった西武台高校にリベンジする形で昭和62年の北海道総体以来の全国出場を決めた(準優勝)。「10年以内に全国に出よう!」と最初に話したという市原監督が母校に赴任してから今年がちょうど10年目だった。
前述の通り基本はロングボールで相手の裏を取るスタイルだが、もともとはつなぐサッカーを志向してスタートしたチームであり「高い位置を取ればつなげる力はある」(市原監督)。それを発揮したのが総体予選決勝の対昌平戦の先制点のシーン。前線と中盤の数枚が距離を近くしながらゴール前に侵入すると最後は完全に崩し切って早々の得点につなげた。
前線で起点となるのはこの冬までボランチだったというFW遠藤寛紀。足元のテクニックのほかボールを収める技術も高く、浦和西のキープレーヤーのひとりだ。遠藤とともに前線で収まりどころとなるFW高橋岬生、小柄だが技術の高いMF加藤淳志を絡めて、どれだけフロントコートでリズムよくパスをつなげる時間を作れるかが攻撃の生命線になりそうだ。
1回戦の相手・東北学院高校(宮城)は浦和レッズで長らく活躍し、現在はジュニアチームの監督を務める土橋正樹氏の母校。土橋氏が3年時の1990年宮城インターハイではベスト4に入った実績を持つ。注目はベガルタ仙台Jrユース出身で、昨年はクラブユース東西対抗戦メニコン杯にも出場した佐藤大河。もともとはFWだったが左サイドバックという新たなフィールドでもその攻撃性能を発揮し、1年生ながらレギュラーポジションをつかんでいる。
ちなみに今年は延長戦、PK戦にまでもつれ込めば負け知らず。188cmの野口智弘を筆頭に180cm台の選手たちを並べたディフェンスライン、総体予選準決勝の西武台高校戦で好守を連発したGK斎藤大伽が0に抑えることができれば俄然勝利の可能性は高まる。
当日は地元の東北学院が大応援団を引き連れてくることが予想されるが、総体予選決勝のことを思い起こせば声援という意味でも見劣りはしないはず。「埼玉のために。浦和のために。そして公立の代表として」。県立の雄は「まずは1勝」を目指して戦いの地に立つ。
(取材・文)石黒登