「本当の10番か」の問いにV決める2発で一発回答。西武台FW市川遥人が備え始めたエースの風格
指揮官からの「本当の10番か」の課題に一発回答。決勝の舞台で2ゴールと結果を残し、チームを11年ぶりの優勝に導いた西武台FW市川遥人がエースとしての風格を漂わせ始めている。
まず一発目は前半29分。左SB安木颯汰にボールが入ると、ファーサイドに流れる動き。「クロス練習でもああいう形は何本か来ていた。安木くんはピンポイントでクロスを上げられるので、信じて待っていました」。安木から絶妙クロスが入ると、しっかり首を振ってネットを揺らした。
その後、チームは後半19分に同点とされたが、30度超えのピッチの中でこの日も終盤までボールを追うなど守備でも貢献。「自分が追うことで後ろの人が楽になったり、そこで自分が奪うことによってゴールに繋がったり、走ってチームを楽にさせるというのが自分の仕事。(関根雄太)コーチからも「ディフェンスで貢献するからお前はゴールが生まれるんだ」と言われていた」。
すると後半29分、再び勝ち越しゴールを奪ったのも市川だった。「相手のラインが高いと言うこともわかっていた」。中盤でMF吉野光がボールをカットし、安木が切り替え早くショートカウンターを発動させると同時にスタートを切ると、キーパーとの1対1を冷静に右足で決めた。
ゴール後は感情を爆発させるように大きく咆哮したが心はクールだった。「やっぱり自分はチームの中でも元気が持ち味。しっかり自分が喜ぶことでチームにその後も守備からしっかりとやろうという感じでやりました」と市川。終盤は相手のパワープレーを受けたが、市川のプレーに呼応するようにチームは最後まで身体を張ってこの1点を守り切り、関東タイトルを奪還した。
県予選では2つのハットトリックを含む7得点と大ブレイク。その際は17番をつけていたが、本大会では10番に。守屋保監督には「お前が本当の10番なのかどうか」と課題を出された。市川としても人生で初めての10番。嬉しさとともにその番号を背負う責任感も感じたという。
「10番はやっぱりサッカーのエース番号。人生で初めてだったので嬉しい気持ちがありました。その番号を背負うことでもっと引き締まったというか、西武台の10番の重みというのはすごく感じられたので、そこで自分が活躍しなきゃという想いで10番をつけさせてもらいました」。
迎えた今大会は1回戦の山梨学院戦で決勝弾となる先制点を記録。そして決勝の日体大柏戦でも2得点を奪ってしっかりと結果を残したFWに指揮官も「10番の活躍をしていた」と認めた。
今年に入ってからの成長曲線は目を見張るものがある。トップチームでプレーした1年目を経て、「あまりうまくいかず、1年間自分としても辛い時期だった」という昨年は選手権メンバー落ちと挫折も味わった。そういった中で細田優陽や大畑航也、遠藤優太郎といったFWたちに刺激を受けて「自分ももっと活躍しなきゃ」と奮起。彼らにはない「走れる」という特徴を発揮しながら、さらに得点を重ねて自信を深めることで、エースとしての風格も備え始めている。
今週末からはついにインターハイ予選での戦いがスタート。関東での活躍で県の並み居るディフェンダーたちが意識する存在となったが、「注意されながらも点を取れるような、強い存在になっていきたい」とそこを上回っていく構え。関東大会では予選、本大会を含めて10ゴールを決めた中で「インハイでそれを超すのは難しいかもしれないですけど、それに近づけるような数字をどんどん出していって、もっと納得できるようにしたい」と引き続きゴールの量産を誓った。
石黒登(取材・文)