右サイドバック転向の西武台DF原田蓮斗。「ヘディングも強くて、運動量も多くて、CBもできる」橋岡大樹のような選手を目指す

「この大会に臨む前にキーパーの中嶋望が腰を怪我してしまって今大会はベンチ外になっていた。中嶋は親友で怪我をしている中でも自主練とかにもいつも付き合ってくれて、やっぱり感謝もあるし、もうすぐ復帰するので関東の本戦に行かせてあげたいなと。そういう想いがプレーに繋がったと思います」。西武台の主将、右SBの原田蓮斗は友の想いも背負って決勝に臨んだ。

「このゲームは結構走る体力面のことが多かった」と前半から攻守で運動量を求められる試合に。それでも仲間の声に助けられ、自らもきつい時に声を出しながらアップダウンを続けた。

すると後半15分、ボランチからの対角のクロスに「ここだと思って入っていけた」とタイミング良く抜け出し。「(2回戦の)市立浦和戦でも同じシーンがあった。自分は決めきれなくて、それが悔しかった。今回もシュートを狙おうとしていたんですけど、仲間を信じて折り返しを選んだ」。冷静に頭でリターンすると、FW細田優陽が決めてこれが決勝点となった。西武台はその後1点を追加し2-0で勝利。「絶対に優勝すると話していた」友に最高のプレゼントとなった。

今年はセンターバックから右サイドバックにコンバート。1、2年と空中戦やカバーリングなど守備面で能力を発揮してきたが、「インターセプト後はそのまま上がっていくような感じだった」と、もともと攻撃的な姿勢は持っていたという。昨年はチーム事情もありその攻め上がりは自重する形が多かったが、今年は原田の“積極的な守備”という特長を生かすべく右サイドバックへ。「自分の持ち味である前への推進力は誰にも負けない自信がある」。今大会でもその推進力は発揮。準決勝の開始1分のゴールは原田が前線でボールを奪い、上げたクロスからの形だった。

また、「サイドバックをやり始めた時は上がりすぎて背後を取られることが多かった」という中で守備面でもバランスを取りながらプレー。「長谷川(智紀)が出た後のカバーだったり、逆サイドにある時の声かけだったり、カバーリングとかはセンターバックから生きているのかなと思います」というように危険なエリアを埋めながら、5試合無失点の守備でも貢献した。

それでもまだ「課題は多い」と原田。運動量やクロスに加えて課題に感じているというのがスローイン。CB時代はあまり投げる機会がなかった中で入れるタイミングなど難しさを感じているという。またその中で「絶対に武器になる。選手権までに練習しておきたい」とロングスローにも取り組み。親友・中嶋とともにメディシンボールなどを投げながら、冬までの完成を目指す。

理想とするサイドバック像は橋岡大樹。「ヘディングも強くて、運動量も多くて、CBもできる。ちょっとイメージしています」。1年の選手権予選からレギュラーを務める原田は「去年や一昨年も自分は経験しているし、その経験をチームに伝えて、絶対に今年はインターハイ、選手権で昌平を倒して優勝しないといけないと思っている。ここがスタートラインだと思って、天狗にならないように全員で声をかけあって、もっと前に進んでいきたいです」と語った。新ポジションで一皮も二皮も剥けながら、自らの経験も還元し、仲間たちとともにさらに先へ進んでいく。

石黒登(取材・文)