「自分が成長できるところ」=鹿島入りを決めた須藤直輝。高校サッカーを代表する存在として、最後の選手権で有終の美を狙う

今年の高卒の目玉のひとりとなっていた昌平MF須藤直輝が鹿島アントラーズ入りを決めた。

以前チームを選ぶ際の判断材料として「やっぱり自分がやりたいサッカーをしているチームと、自分が入ってサッカー選手として成長できるところというのをうまく選びたいなと思っています。自分が生きるサッカーというのはやっぱりポゼッションサッカーだと思うので、その中で個を発揮できるチームを選びたい」と話していたが、それが鹿島だったということだろう。鹿島では今季MF荒木遼太郎(東福岡)やMF松村優太(静岡学園)、FW染野唯月(尚志)と高体連卒の「個」を持ったルーキーたちが活躍しているというのもひとつポイントとなったはずだ。

世代屈指のドリブラーは1年次から10番を背負い、2018年のインターハイでは昌平として2度目となる全国3位に大きく貢献。昨年は2年生ながら副キャプテン、またゲームキャプテンとしてチームをまとめ、今年1月の選手権で昌平を初めてのベスト8入りに導く原動力となった。

迎えた今季は日本高校選抜の合宿でシーズンイン。2年連続の選出ということもあり、合宿中は笑顔も見えるなど心の余裕がうかがえた。「高校サッカーを代表する存在として」という言葉を意図的に使うようになったのもこの頃からだろうか。もちろんそれは驕るなどではなく、自らにもプレッシャーをかけながら、その言葉の責任を背負っていく覚悟をした上でのことだ。

新人戦では名実ともにキャプテンとしてチームを牽引。優勝に導いた。今年はプロ入りをかけた最後の1年ということもあり、「どんな状況に置かれてもできる選手、自ずとプロになれる、なるというのが目標なので、そこを見据えてやっていけたらと思っています」とも話していた。

そんな中、今年は新型コロナウイルスの影響でインターハイが中止に。須藤としても思い入れが強かった大会だったこともあり、かなり落ち込んだということだが、サッカーを含め様々な競技で頑張っている同世代の学生たちの声が支えとなり、「自分もここでなよなよしていられない」と気持ちを切り替え。昌平高校のキャプテンとして、そして高校サッカーを代表する選手として、時には仲間の相談に乗りながら、アドバイスを送りながら、時には仲間を誹謗中傷から守りながら、チームを牽引する姿に藤島崇之監督も「須藤が雰囲気を作ってくれる」と信頼を寄せている。

サッカーを楽しむまさに「サッカー小僧」としての顔も須藤の魅力のひとつだが、昌平高校での3年間を経て、青年は精神的にも大きく成長し、大人のフットボーラー、大人の男になった。そんな須藤はこれからも「自らが一番成長できるところ」=プロの世界で成長していくことだろう。

そしてその前にひとつやり残したことがある。それは子供の頃に父と足しげく通い、高校サッカーを選ぶきっかけとなった選手権での日本一。それを掴み取ってからプロの世界に羽ばたく。

石黒登(取材・文)