福島入りを掴み取った柴圭汰。「“柴”刈り機」「中盤の関所」。162cmボランチはいかにして現在のスタイルを手にしたのか

162 cmはチームでも最小クラス。だが、昌平高MF柴圭汰は一たびピッチに入れば名前をもじった「“柴”刈り機」「中盤の関所」とも表現されるボール奪取力で抜群の存在感を放つ選手だ。

昌平高では珍しい中体連の出身。ちなみに当時のスタイルは「ドリブルばかりしてましたね(笑)」。中盤でドリブルして起点を作る攻撃的なMFだった。高校は県外の強豪も興味を示した中で「練習会に何度か参加させてもらって魅力的なサッカーだった。ここに入ったらどんなサッカーができるんだろう、自分はこのチームでどんなサッカーができるんだろう」と昌平を選んだ。

しかしそこは県内屈指の強豪である昌平高校。県内外のクラブユース出身のいわゆる“エリート”たちもおり、ドリブルだけで通用するものではない。だからこそ、柴が磨いたのが「守備」の部分。もとよりドリブラー時代から現在も武器にする「読み」と「反応」の良さには長けており、本人が自分の良いところと語る「最後まで諦めないところ」とあいまって大きく成長していく。

ゲームの流れやパスコースを読み、空中戦でも落下点への入り方や飛ぶタイミングを工夫することで身長差を無効化。2年生の頃には強豪校が獲得に際し、足踏みをしたサイズも気にならない選手となっていた。

中盤でボールを刈って、刈って、刈りまくる姿についた異名が名前をもじった「“柴”(芝)刈り機」。ダブルボランチを組む小川優介(鹿島アントラーズ内定)とのコンビはボールを奪う能力というのは決してフィジカル的な要素だけでないことを教えてくれた。

そういった中で迎えた1月の選手権では“エースキラー”としてチームに貢献。初戦となった2回戦の興國戦では相手のU-17日本代表FW樺山諒乃介(横浜F・マリノス内定)を完封するなど8強入りに導く原動力に。同大会では優秀選手にも選ばれ、日本高校選抜入りも果たした。

また、コロナ明け最初の試合となったプリンスリーグ関東第1節・三菱養和戦では前半「中盤の関所」とばかりに背番号6の後ろにはボールは通させず、チームの連続アタックの起点となった。

今後はより高いプロの環境に身を置くこととなるが、昌平高に進んだときと同様に変化を恐れず、常にその環境に自分を再構築しながら「小さくても活躍できる」ことをピッチで証明する。

石黒登(取材・文)