劇的同点弾を呼び込んだ浦和JYのロングスローワー、MF高橋昂平「このチームでできたことに誇りを持って」高校年代での飛躍へ

「交代する時、監督からも思いっきりやってこいと言われていた。何回でもやる気持ちでコートに入りました」。後半33分に投入された浦和レッズジュニアユースのロングスローワー、MF高橋昂平はピッチサイドで入念に肩周りの筋肉を伸ばしながらそんなことを考えていたという

するとワンプレー目からスローで存在感。ゴール中央に優に届く飛距離に加え、驚きだったのが球質。「ビュンッ!」という効果音がふさわしいほど鋭い投擲に会場からは感嘆の声が漏れた。

必殺のロングスローはファナティコス時代にコーチから「お前飛ぶんじゃないか」と言われて投げるようになったのがきっかけ。浦和レッズJYに入ってからはなかなか投げる機会はなかったが、「3年生になって公式戦が増えてきてからゴール前に何回か放れる球が欲しいということで、自分の左足のキックとロングスローでチームに貢献できるかなと思って練習していました」。

「自分は筋力がある選手でも、柔軟性も特別あるわけではないんですけど、トレーナーさんが言うには身体のしなりで投げていると」。身体をムチや弓矢のようにしならせることでパワーを最大化。この投げ方は誰に教わったというわけでもなく、投げ続けることで掴めてきた形だという。

終了間際の劇的同点ゴールのシーンではとにかく「全力で」投げることを意識。「関東リーグ中はニアに走り込んでくる選手に合わせるように速い球を投げていたんですけど、もう最後の最後でちょっと遠目だったので全力で投げて、なんとしても点を決めるという気持ちでした」。

想いの乗ったボールはこの試合最大の飛距離とともにゴールエリア中央へ。敵味方入り交じった混戦となった中で最後は相手ディフェンスに当たってゴールに吸い込まれた。仲間たちが興奮を隠せない一方で高橋はピッチにへたり込み、直後祝福を浴びた。ポジションに戻る際にもさまざまな想いが押し寄せたのだろう。目頭を押さえるような仕草もあった。その後チームはPK戦の末に敗れたが、この全国ベスト4のピッチで自分のやるべき仕事をしっかりと成し遂げた。

残念ながらユース昇格は叶わず、高校年代ではアカデミーを離れるが、「この試合だけじゃなく、ベスト4まで来れたチームでできたことに誇りを持って、自分のプレーにも自信を持って高校でもサッカーをしていきたいと思います」。誇りと自信を胸に次のステージでの飛躍を目指す。

石黒登(取材・文)