勝利を引き込む2点目を奪った金井裕世。前半は展開を左右する配置転換でファインプレーも
埼玉栄の10番MF金井裕世はこれまでの試合と同様に決勝でも後半からトップへ入ると、そのファーストプレーから果敢にゴールに迫る場面を作っていた。3回戦の上尾東戦でハットトリックを取っていたものの、準々決勝、準決勝ではゴールはなく、「得点が取りたかった」という。
すると後半39分、味方のクリアボールを左中間で受けた金井は力強いドリブルで前進。そのままエリア内に切り込むと「中に入っていったときに(加藤)佳大くんがいたんですけど、やっぱり自分が決めたかった」とFWらしいエゴを発揮。角度はなかったが、「キーパーの股が開いていた」と冷静に状況を見極めて右足で股抜きの強いシュートを突き刺し、試合を決定づけた。
またもうひとつの“ファインプレー”となったのが前半のポジションチェンジ。ボランチでスタートした中で相手のキープレーヤーの侵攻を食い止めるためにピッチ内の選手たちで話し合って金井が左サイドに入りマンマークに。これにはピッチサイドの滝井友和監督も驚いたようだ。
「練習で滝井先生によく中でしゃべれと言われるので、そこで中でしゃべるコミュ力とか養われていった」と金井。結果的にこれが試合の展開を左右する好判断に。MF浅倉孜音とチェレンジ&カバーを繰り返しながら相手の中への侵入を許さなかったことがその後の展開に繋がった。
「連戦を通してみんなやれることも多くなったし、前とかもしっかりできるようになったのが嬉しかった。自分は守備が苦手なんですけど、決勝戦も守備を頑張ってできたなと思います」。
1、2年生を含めて18人と人数の少ない中で、複数のポジションを兼任できる金井はピッチの中で戦い方を変えることができる選手だが、さらにプレーの幅を広げる新人戦となったようだ。
石黒登(取材・文)